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2014年6月 2日 (月)

帝国衰退の時代における精神神経病政治

Jan Oberg
2014年5月23日

合理的政治の時代は、もしかつて存在したとすれば、去ってしまったのだ。

”現実的政策”は、キャッチフレーズの売り込みと、プロパガンダと、ほとんど不条理演劇並の弁舌を弄する指導者達の混合物と化している。現実とのつながりは益々乏しくなりつつある

衰退状況にある現実から目をそむけた時に、こういうことが起きる。

全ての帝国は没落する。アメリカ帝国は衰退しつつある。巨視的な歴史学者達は(イギリスのアーノルド・トインビーの12巻本 1934-61を参照) 帝国が没落する際には、様々な理由があることを語っている。

• 軍国主義と絶え間ない戦争
• 過剰拡大 ? 自分が管理できる以上に支配をしようとすること
• 他者から見た、正統性の喪失
• 構造的経済危機
• 道徳的退廃
• 知的、技術的革新の喪失、そして
• 単純に時間と共に他の大国が力を得て、新しい創造的な方法で事を進めるようになる。

1945年以後、アメリカは様々な力の面で、強力だと見なされてきた。軍事、経済、政治、正統性、文化、革新。現在アメリカは、軍事面でのみ、明らかなナンバーワンだ。他の指標全てが没落してしまうと、軍は大変な重荷となり、衰退を加速するだけになる。

アメリカは没落しつつあるが現実から目を背けている。同盟国や同調者の大半もそうだ。

アメリカの外交政策決定者は、いまだ全く問題はなく、自分達の利害と世界観に合わせて世界を率い、形作れると考えているように見える。基本的に布教者のままでいるのだ。

そうした見方を構成している幾つかの要素は下記の通りだ。

ナンバーワンであること  教師

1945年以来、アメリカは、世界の序列制度で、ナンバーワンだ。あらゆる制度において、全てのナンバーワンは決して学ぼうとしないという問題がある。彼等は教え、説教するのだ。序列上、もし37番であれば、他の36人から学ぶことができる。彼等はどうやって私より上位にあがれたのだろう、どうすれば私は向上できるだろう?

思い上がり

余りに長期間、独自な立場のおかげで、余りに容易に思い通りにしてきてしまった。他の連中が、恐怖心から、あるいは、愛情から服従するので、これは悪習になってしまった。いつか、恐怖心も愛情も消えてしまう。あらゆる分野の権力のバランスが均衡している間、これは機能する。アメリカ以外の国々は、アメリカに魅了され、アメリカの価値観と政策の大半が、正当で、革新的で、自分達にとっても良いと考えていたのだ。

持てば持つほど更に欲しくなる。より大量の兵器や、より多くの世界中の基地や、より多くの資産支配、例えば、石油を常に持たずにはなられなくなる。大きくなればなるほど、失うものも多くなり、同時に不安を感じるようになる。そこで、安心感を抱く為に、もっと欲しくなる。中毒だ。

もし敵の数が十分でなれば、自分の武力政策を常に正当化し続ける為に、敵を作り出して、世界の道徳的権威、良い警官役でい続けられるようにするのだ。

投射

”欧米、ロシアに、キエフの選挙を混乱させぬよう警告”これが、最近の典型的な見出しだ。もし他人が、自らが絶えず行っていることをすると、懲罰されるぞと、他の人々には言うのだ。

投射とは、自分の邪悪な側面を無意識に他人になすりつけ、それで自らは清らかになったので、その”邪悪”な敵を懲罰できると信じ込むことだ。

これはもちろん、自分自身がキエフに大規模に介入し、事実上のクーデターを引き起こしたという、文書による十分な裏づけのある事実を否定することを基盤に成立している。

もし自分のすること全てのことにこれが適用されると、これは病的なものとなる。“現実的政策”や、他の人々との共通する現実感の終わりを告げることとなる。 もはや同じ世界の住人ではなくなるのだ。

自閉症

世界で実際に起きることを取り入れることが、ゆっくり、しかし確実に困難になる。あなたの羅針盤は故障してしまう。首脳部には、益々そうした思考方法に異義を申し立てるのでなく、’集団的浅慮’という価値観を肯定する太鼓持ちだけが集まる様になる。

主知主義は、売り込みの手腕に置き換えられ、自分のプロパガンダを、あたかも真実であるかのように信じ始める。マスコミも学界もいうなりで、本当に独立した批判的な疑問も分析も排除される。軍隊-産業-マスコミ-学界複合体、軍産マス学複合体が力を得る。

精神的麻痺

この概念は、著名な精神医学者ロバート・ジェイ・リフトンが作った言葉だ。酷く苦しむ人々を繰り返し長い間見ていると、それによって心が動かされることがどんどん少なくなって行く。はじめて見る広島映画には心が深く動かされる。何十も見ると、心は動かされなくなる。

自分が行う残虐行為に対しても、これは当てはまる。自分が働く悪事を最小化し、他の連中の方がもっと酷い罪をおかしていると主張するようになる。だから例えば、イラク国民に対して行った大量虐殺の評価は不要だ。(”そう、サダムを排除するには必要なコストだった…”)

共感の欠如

自分自身の立場が余りのどん底に沈み込んだがゆえに、 判断が、もはや、あらゆる疑問の中で最も重要なある種の分析に基づかなくなる。つまり、我々が今やろうと決めたことに対して、他の人々は一体どのように感じ、対応するだろうか?

そうではなく、相手はこう対応すべきだと自分が思っている通りに、相手が対応するだろうと次第に信じ込むようになる。もし他の人々がそうしない場合には、相手は確実に悪人だと感じ、益々相手を脅す様になるのだ。

例外主義

基本前提は、自分は他の連中より、優れている、あるいはより文明的であるということだ。これにより、一般の法律や規範を越えて活動することが可能になる。もちろん、それは自分が高貴だからだ。: 自分は ”白人の重荷”を負っており、民主主義と自由を推進しているのだ。

イスラエルとアメリカは例外主義者の国家だ。両国は  ”国際社会”と呼ばれることの多い、公益の為に先導するべく、”選ばれた”国だという考え方を共有している。しかし、現実には、公益の為なるものは、ひたすら自らの権益だ。

例外主義は、自分の政策に対する、そうした人々の魂、そうした人々の独自性を、実際に攻撃しているのだ、という心理的に傷ついた主張による、あらゆる批判をも意味する。かくして、自分がすることを盲目的に支持しない人々の誰にでも”反米”や ”反ユダヤ主義”といった様な言葉が投げつけられることとなる。

この根本的な脆弱さが強みとして解釈される。時間とともに自閉症を助長して、民主的な議論を不可能にしてしまう。

自己中心主義者による善悪判断

連中は、世界を二つに分割するようになる。善か悪か、仲間か敵か、そして、自分が振るう暴力は、悪の暴力を止めるために必要と思われる良い暴力なのだ。そこで、自分が何をしようと、自分は善人で、相手は悪人なのだ。

これが機能しないことは決してなく、機能しないことなどありえず、それゆえ、何に対しても詫びる必要は無く、何も学ぶ必要もなくなる。”我々は学ばず、我々は教える”そして”我々は善き人々だ”。

更に多くの要素はあろうが、ここでは上記の8要素で十分だ。

これを理解しようとしないのは一体誰だろう?

もちろん、オバマ大統領やNATO指導者達を含めたエリート連中自身だ。アメリカやヨーロッパの大学で、何を学んだにせよ、何十年間にもわたってアメリカ政策を支持するのに人生を捧げてきた連中もそうだ。

二重基準だとだけ言って政策を批判する人々は、この文明的危機の深刻さや、この全体がどれほど手に負えない状況なのかを、完全に見過ごしているのだ。

最後に、国家中心的、軍、物質的、地政学的な関心と、アメリカ教科書だけから学んだ伝統的手法しか知らない政治学者達やマスコミ連中が、こうしたことのどれかを理解するなどと決して期待してはならない。

現実から目を背けることの究極的な危険性

上に述べた精神神経病政治の8つの指標が、核兵器、無人機と、人類史上、他に比べようもない戦争機構と組み合わされば、極めて危険な混合物となる。

欧米が、世界の他の国々に対し、比較的弱体化する中、我々は更に何を経験しなければならないのかと、私は恐れている。

ローマ帝国、オスマン帝国、大英帝国、そしてソ連帝国と、あらゆる帝国は没落する。アメリカ帝国は、核兵器を基盤にした帝国の没落としては二つ目だ。欧米に、ゴルバチョフの様な政治家が、はたしているだろうか、それとも我々は、精神神経病政治による現実否定によって、崩壊する運命にあるのだろうか?

記事原文のurl:blog.transnational.org/2014/05/tff-pressinfo-psycho-politics-in-the-age-of-imperial-decline/

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昨日の夕方、たまたま大本営広報部洗脳報道をみかけ、あわててTBSに切り換えた。国営放送、毎時冒頭は必ず政府洗脳広報。見るに耐えない。

昨日のTBS、京都でのXバンド・レーダー設置問題を追った素晴らしい報道。国営放送は、触れない話題。東欧や、ウクライナに、ロシア包囲用レーダー基地やら、ミサイル基地を設置するのと同じことを、日本ではほとんど摩擦なく展開できる。

沖縄の新基地、核のゴミ再処理場、核融合炉の建設・稼働と同じ根っこ。民放でどうして、こういう良い企画が成立するのだろう。誰が献金したか不明でも、確実に特定の番組に献金できるような仕組みはできないものだろうか?有料でも是非見たい報道だ。

数日前、東北への無人機配備が大本営広報で報道された。巨大な飛行機。北朝鮮のチャチなカメラ搭載ラジコンおもちゃと違う。無人機の大きさに、同じ技術が、9/11突入航空機操縦に使われただろうと、勝手に納得した。

やっと『資本主義の終焉と歴史の危機』をよみ終えた。資本主義の行き詰まりを歴史的に見る説。なかなかの説得力。「はじめに」から抜き書きさせていただこう。

資本主義は、「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまりフロンティアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進してゆくシステムだ。

それが、「地理的・物理空間」からも、「電子・金融空間」からも利潤をあげることができなくなっている。

さらにもっと重要な点は、中間層が資本主義を支持する理由がなくなってきている。自分を貧困層に落としてしまうかもしれない資本主義を維持しようというシンセンティブがもはや生じない。

こうした現実を直視するならば、資本主義が遠くない将来に終わりを迎えることは必然的な出来事のはずだ。

だから「中心」の宗主国資本は、「周辺」日本を完全にとりこんで、利潤率を高め、資本の自己増殖を推進してゆくしかなくなり、TPPを推進しているのだろう。環太平洋などとインチキ形容詞や、国の数を揃えて誤魔化しても、経済規模からいって実質日米自由貿易協定。

TPP、全く不平等な、日米安保、地位協定の経済乗っ取り版にすぎない。

宗主国の巨大農業企業は、GMOという技術で、自殺する種子を作って、大儲けをしようとしている。

宗主国のそれ以外の産業、つまり、金融、生保、医療、農業、教育等々は、70年かけて、見事に「自殺する属国民」開発に成功したということのようだ。

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コメント


日本はアメリカの属国、つまり家来国家である! アメりカの洗脳広告代理店、電通による、テレビ、新聞、週刊誌、ラジオ等の、マスコミを使った偏向報道による、見事な国民洗脳によって、思考が停止状態にある日本人は、自分自身の脳、すなわち思考そのものを点検せよ! さらにネット洗脳システムのツイッターやフェイスブックの利用、まとめサイトには注意が必要である。 我々はハッ、と気付いて、常に注意深く、用心して、警戒し、疑いながら生きれば、騙されることはない。 すべてを疑うべきなのだ!

                「精神的麻痺」の事     - ロバ-ト.ジェイ.リフトン -

  Jan.Oberg氏は,「精神神経病政治の8つの指標が、核兵器、無人機と、人類史上、他に比べようもない戦争機構と組み合わされば、極めて危険な混合物となる」として『現実から目を背けることの究極的な危険性』を指摘されている(2014年6月 2日 (月) 『帝国衰退の時代における精神神経病政治』)。その8つの指標のうち,小生が注目したのは,R.J.Lifton氏が造語した「精神的麻痺」である。
  (引用開始) この概念は、著名な精神医学者ロバート・ジェイ・リフトンが作った言葉だ。酷く苦しむ人々を繰り返し長い間見ていると、それによって心が動かされることがどんどん少なくなって行く。はじめて見る広島映画には心が深く動かされる。何十も見ると、心は動かされなくなる。

  自分が行う残虐行為に対しても、これは当てはまる。自分が働く悪事を最小化し、他の連中の方がもっと酷い罪をおかしていると主張するようになる。だから例えば、イラク国民に対して行った大量虐殺の評価は不要だ。(”そう、サダムを排除するには必要なコストだった…”)    (引用終わり)

  前段で広島映画をガザ・パレスチナ地区におけるイスラエルの残虐行為と読み替えることができる。現世享楽主義で今日まで生きながらえた小生にとって,第三次中東戦争以来,パレスチナ人の悲劇とイスラエル軍の残虐行為は,耳新しいものではない。まさにリフトン氏の「精神的麻痺」に陥っているのが小生であることを告白せざるを得ない。ウクライナ紛争,オデッサ虐殺事件と比べて「心動かされ」ない。

  後段の「自分が行う虐殺行為に対して」もイスラエル兵士の多くは,心動かされなくなったのかも知れない。以前は自分たちの軍事行動が行き過ぎたと感じ,イスラエル政府を訴えた兵士・将校たちがいた。しかし,トンネルを完全破壊するのは,ハマスの息の根を止めるための「必要なコスト」なのであろう。

  今,フランスやオーストラリアではイスラエル非難のデモ行進がイスラエル大使館を取り囲んでいる。ハマスがイスラエルの子ども三人を殺したというニュ-ズは胡散臭いと思うが,イスラエル政府を訴える兵士が居なくなった代わりに,イスラエルは国際世論のイスラエル非難の高まりを予期して矛先を収めるようにそろばんをはじいているのかも知れない。しかしその国際世論の中に,新しい世代の声があることは無視できない。例えば,小説を紹介してくれた女子学生は「ムスリム諸国での悲惨な事件には心を痛める」とメ-ルを送ってきた。また別の学生は「ラマダンが始まるといつでもイスラエルは軍事行動を起こす」と知らせてきてくれた。

  「精神的麻痺」に陥っていない若人の声は力強い。それはこの国ばかりでなく,憲法を無視して,解釈改憲を強行する政権に対するデモに高校生たちが,働き盛りの大人より,共鳴してくれるという日本国をも含む。ムスリムであれ,キリスト教であれ,仏教徒であれ,若い人がデモに共感し,あるいはデモに参加する国々の未来は,決して暗くない。
   ラマダンが終わり,明日新年を迎えるムスリム諸国。若い人たちに期待したい。
  

追記: R.J.Lifton氏は加藤周一と共に『日本人の死生観 上・下(岩波書店)』を書いた。如何にし て自分の死を迎えるのか。リフトンと加藤との見解には大きな差があった。しかし人は生まれ落ちたときから死への準備を始める生き物なのかも知れない。
追記2: もちろんユダヤ教徒の若い人にも期待したい。地には平和を。帝国には衰退を。
  
  

強欲拝金権力者を病名で把握することは本質的にばかげている。よってもちろん「自閉症」の項目も意味不明だが、「自閉症」は今では自閉症スペクトラムとよばれているように症状も多彩で境界も曖昧である。先天性の脳機能障害が原因と言われている。他者とのかかわりを一切持たないという意味合いで「自閉症」という病名を使いたいのかもしれないが、そう書きたければそう書けばいいだけのこと。

戦争をやらずして戦争と似たような効果を出した国がありますよね。

・生産人口、若年人口の減少
・国内生産設備の自主的な破壊
・人間不信、社会不信の醸成
・自滅、暴走、破壊に自ら走る

精神や社会構造をいじることで戦争と同等の効果を出すことが
可能であることを証明してしまいましたね。
実に効率的でお見事ですよね。弾を撃たずにここまで見事な戦争
状態を演出できるというのは。

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