■ サハラカップクラブユースの日本一を決める「Jユースサハラカップ2007」は、今大会で15回目を数える。大会の冠名になっている「サハラ」って何???と調べると、タイガー魔法瓶株式会社の製品であるステンレスボトル(水筒の一種?)を意味するらしい。
J1とJ2のクラブユース(全31チーム)が7つのグループに分かれて予選リーグを行い、各グループの上位2チームと日本クラブユース連盟代表の4チームを加えた計18チームで決勝トーナメントを行い、優勝を争うシステムである。
日本クラブユース連盟代表として今大会に出場しているのは、「愛知フットボールクラブユース」、「エストレラ姫路FC U-18」、「千葉サッカークラブ U-18」、「FCみやぎバルセロナユース」の4チームである。
ユースチームというと、Jクラブの下部組織であるユースチームが連想されるが、それだけではない。「愛知フットボールクラブユース」は、MF中西哲生(元名古屋)、FW矢野隼人(元V川崎)、DF斉藤大輔(千葉)らを輩出しており、「FCみやぎバルセロナユース」は、MF西山貴永(横浜FC)、MF青山隼(名古屋)、MF香川真司(C大阪)を輩出している。
ちなみに、C大阪のMF香川は高校2年生の段階でプロ契約を結んでいるが、高校卒業前の選手がプロチームと契約を結ぶのは、Jクラブのユース所属選手がトップチームに昇格した場合を除くと史上初のケースである。なお、香川には、C大阪以外にFC東京からもオファーがあったようだが、地元(=関西)でプレーしたいという意向でそのオファーを断っている。
http://www.kobe-fa.gr.jp/kouhoushi/pdf/no20_2-3.pdf■ 過去のファイナルリスト大会パンフレットを見ながら過去の大会を振り返ってみると、第1回大会(1994年)は、MF財前宣之(山形)、FW薮田光教(横浜FC)、DF菅原智(東京V)を擁するヴェルディ川崎が初代王者に輝いている。第4回大会(1996年)には、MF稲本潤一(フランクフルト)、MF新井場徹(鹿島)、MF橋本英郎(G大阪)が登場。G大阪が初めてファイナルに進出しているが、ヴェルディ川崎に1対2で敗れて準優勝に終っている。
第5回大会には、DF市川大祐(清水)、GK野沢洋輔(新潟)、DF池田昇平(千葉)、MF太田圭輔(柏)といったタレントをそろえた清水エスパルスが、MF森崎浩二(広島)、MF森崎和幸(広島)、MF駒野友一(広島)のサンフレッチェ広島を3対0で下して、優勝を飾っている。第6回大会は、MF野沢拓也(鹿島)、DF根本裕一(大分)が所属した鹿島アントラーズが、MF阿部勇樹(浦和)、FW佐藤寿人(広島)、GK高木貴弘(札幌)のジェフ市原を下している。
第9回大会(2001年)のファイナルには、FC東京が登場。MF梶山陽平(FC東京)、DF尾亦弘友希(湘南→C大阪)、FC馬場優太(FC東京)、FW李忠成(柏)といった攻撃的な選手をそろえたが、京都サンガの前に1対3で敗れている。第10回大会(2002年)から第12回大会(2004年)にかけては、サンフレッチェ広島が3年連続でファイナルに進出している。FW前田俊介(大分)、MF柏木陽介(広島)、MF西山貴永(横浜FC)、FW平繁龍一(広島)、DF槙野智章(広島)、DF森脇良太(愛媛FC)といった選手を輩出している。
■ ユニバー記念陸上競技場その準決勝の第1試合は、ガンバ大阪と柏レイソルの対戦カード。会場は、神戸のユニバー記念陸上競技場。ヴィッセル神戸の準ホームグラウンドであるが、近代的なホームズスタジアムの完成に伴って、やや影が薄くなってきている。
神戸の中心である三宮からは、電車で20分あまり。オリックスバファローズの本拠地であるスカイマークのすぐ隣に位置する、6万人収容の巨大スタジアムである。
G大阪は、いわずと知れたユース年代の名門。過去に、DF宮本、MF稲本、FW大黒といった海外組を輩出していて、4度、ファイナルに進出している。対する柏は、過去にファイナル進出の経験はない。
■ 圧倒するレイソル試合は開始から柏が圧倒する。最終ラインから細かくパスをつないでG大阪のDFを寄せてから、キャプテンのMF山中真を基点にミドルパスでサイドチェンジを行って局面を打開するスタイルを執拗に続けて、攻守ともに主導権を握る。
G大阪は、キープレーヤーであるMF安田晃大を出場停止で欠いた影響なのか、奪ったボールをつなぐことすらままならなかった。右の攻撃的MF池亮磨の位置からはやや打開できそうな雰囲気はあったが、柏のDFを崩すまでには至らず、決定機を作れない。
柏は、左サイドバックのDF輪湖直樹が高い位置をキープする左肩上がりの<4-3-3>。フェニッシュにかかる部分では、右ウイングのFW酒井宏樹と左のDF輪湖直樹のドリブルで打開を図る。しかしながら、前半終了間際の決定機をFW酒井が決めきれないなど、押し気味に進めながら得点は奪えずに、0対0で前半を終了した。
後半に入るとG大阪も眠りから覚めていい形を作るようになるが、後半13分に柏が右FW酒井がDFラインの裏に飛び出して決定的なチャンスを作ると、FW酒井の折り返しをMF山崎正登が押し込んで柏が先制する。
リードを許したG大阪は、消極的なプレーが目立った左MF三ノ宮健介に代えてMF神門拓弥を投入。MF神門のドリブルからリズムをつかみ始めると、後半19分に右サイドからのクロスボールが柏DFのオウンゴールを誘って1対1の同点に追いつく。
これで優位に立ったかと思われたG大阪だったが、後半34分にMF輪湖直樹がGKと1対1となってから冷静に決めて柏が勝ち越しに成功すると、さらに後半38分にも、波状攻撃からMF畑田真輝のミドルシュートが決まって3対1と突き放す。
G大阪は、FWブルーノ・カスタニェイラらを投入しパワープレーを試みるが、柏のGK岡田翔太の好セーブもあって、そのまま3対1で勝利。柏がチーム史上初めて、決勝戦への進出を決めた。
■ 柏の順当勝ち試合を振り返ってみると、柏の順当勝ちといえるだろう。G大阪はトップチームを思い起こさせるようなスロースターター振りを発揮。後半は高い技術を生かしたアイディア溢れる攻撃を見せるようになったが、不用意な形で失点を重ねていった。
柏は、前半の圧倒していた時間帯に先制ゴールを奪うことができず、いやな流れになるかと思われたが、冷静に試合を進めた。後半の途中以降は、G大阪の個人技術の高さに翻弄される場面も増えたが、最終ラインが何とか持ちこたえて、攻撃陣も3得点を奪った。立ち上がりの入り方が見事で、集中力の高さも際立った。
柏は、G大阪に比べるとタレント力では劣るが、組織力ではG大阪を凌駕した。ユース年代なので、勝利がすべてではないが、勝ち進む経験が選手たちの成長を促すだろう。チーム内におけるバイプレーヤーの量と質が、この日のスコアに表れたように感じられた。
■ レイソルで気になった選手この試合を見て、柏レイソルで気になった選手は、MF山中真とFW酒井宏樹。
中盤の下がり目でプレーしたMF山中は、正確なキックで中盤を組み立てて、攻撃のときの緩から急の変化を演出した。正確なミドルパスと前線へのくさびのパスが見事で、ほとんどの攻撃は彼を経由した。
もうひとりのFW酒井は右ウイング気味のポジションでプレー。サイドプレーヤーながら、183cm70kgという抜群の体格を生かして、サイドの攻防で主導権を握った。技術的には向上の余地はあるが、ダイナミックさは、ジェフ千葉の日本代表MF山岸智を思い起こさせた。FW酒井はすでに来シーズンのトップチームへの昇格が内定している。
■ ガンバで気になった選手G大阪の方では、やはりFW大塚翔平。スーパー中学生のMF宇佐美貴史と司令塔役のMF安田晃大という攻撃のタレント2人を欠く中で、前半の出来は平凡だったがで、後半に入ると、さすがに世代別代表のレギュラープレーヤーである、ということを印象付けた。
2006年のアジアユースや2007年のU-17世界大会のときのイメージは、1トップ気味のポジションで前線に張り付いて基点になるようなプレーが多かったが、この試合では、もっと自由に動いて、チャンスメークも行った。当たり前のことだが、代表でのプレーはプレッシャーも大きく、なかなか楽にはプレーすることは出来なくて苦戦も強いられたが、国内の大会であれば、ある程度は、落ち着いて良さ発揮することが出来る。
城福ジャパンにおける印象は、オールラウンドなプレーヤーではあるがやや特出した武器に欠ける選手だという印象をもったが、この試合を見る限り、特別な才能を持った選手であることを感じた。特に、先制点を奪われたあとに、グレードを上げたプレーを見せたことは、この選手をポジティブに感じた要因である。
■ さびしいサポート体制さて、試合は白熱した好ゲームとなったが、観衆は雨ということもあって、わずかに518人だけ。G大阪のサポーターも、柏レイソルのサポーターも集まって試合を盛り上げたが、日本一を決める大会で、しかも準決勝というステージであることを考えると、非常にさびしい数字である。
今月末から行われる高校サッカー選手権は、日本テレビのバックアップの元、大々的に報道がなされて、準決勝ともなると、国立競技場には1万人を超える観衆が集まるだろうが、この格差は、何とかしたいものであるし、何とかしなければならない。
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中西哲生中西 哲生(なかにし てつお、1969年9月8日-)は、愛知県名古屋市出身のサッカー選手、サッカー解説者、スポーツジャーナリストである。現役時代のポジションはディフェンダー (サッカー)|ディフェンダー、ミッドフィルダー。引退後は芸能事務所の三桂所属。また?...
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