■ 開幕10試合で1勝7敗2分けと低調三浦文丈監督を招聘したアルビレックス新潟は10試合を終えた時点で1勝7敗2分けで勝ち点「5」。17位と降格圏に位置する。開幕から6試合勝ちなしの後、7節の甲府戦(A)で2対0の勝利。ようやく今シーズン初勝利を手にしたが、初勝利は浮上のきっかけにはならなかった。8節から3連敗。2004年に初めてJ1昇格を果たしてからずっと「J1の座」をキープしてきたが、クラブ史上初となるJ2降格の危機を迎えている。
新潟は昨シーズンも8勝20敗6分けで勝ち点「30」という低調な成績だった。『勝ち点「30」でのJ1残留』は2005年に18チーム制になってからは史上最低の勝ち点だった。「残留に必要な勝ち点は38」と言われていることを考えると『奇跡的な残留』と言えた。同じ失敗を繰り返したくなかったが今シーズンも極めて厳しいスタートになった。10試合でわずか勝ち点「5」なのでここから挽回しなければいけない。
新潟は過去に何度も残留争いに巻き込まれているが、その都度、J1に生き残ってきた。「追い込まれた時の勝負強さ」は特筆すべきものがあるが、例年との大きな違いは『J2からの昇格組(札幌・清水・C大阪)がいいスタートを切っている点』である。特にプレーオフからJ1に昇格したC大阪が好調。「プレーオフからの昇格組は翌年のJ1で18位になってJ2に降格する。」という流れだったが上位を目指せる力がある。
■ 誤算続きなのはサンフレッチェ広島&大宮アルディージャ新潟は10試合を終えた時点で7得点/19失点となる。失点数は9節が終了した時点では仙台と大宮に次ぐリーグワースト3位となる。『得点が少なくて失点が多いので17位という順位も致し方なし。』と言えるが、どの試合も内容的には決して悪くない。三浦監督がやりたいサッカーは多くの試合である程度のレベルで実現できていると思うが、なかなか勝ち点につながらない。得失点差は早くも「-12」にまで膨れ上がった。
「監督がやりたいサッカーがある程度のレベルで実現できている。」という点は新潟の今後を考えたときに悲観的にならざる得ない1つの理由になる。例えば今シーズンは広島と大宮も下位に低迷している。昨シーズンは大宮が5位で、広島は6位だった。開幕前は当然のことながらどちらも上位候補に挙げられていたので「予期せぬ大低迷」と言えるが広島と大宮の2チームに関しては誤算がたくさんあり過ぎた。
広島の場合はMF柏やMFミキッチなど怪我人が多く発生している点は大きな誤算で、プレシーズンの段階では猛威をふるっていたMFフェリペ・シウバがJリーグの開幕と同時に勢いがパタッと止まってしまったのも大きな誤算だった。さらには加入2年目で飛躍のシーズンになることが予想されていたMFアンデルソン・ロペスが怪我で出遅れたこともあって力を出し切れていないのも森保監督にとっては大きな誤算だった。
一方の大宮は攻撃的なポジションの選手が軒並み低調。補強の目玉だったので清水から加入したFW大前に批判の声が集中しているがFWムルジャやFWネイツ・ペチュニクも全く力を出せておらず、FW江坂やMF瀬川祐やMF長谷川アーリアジャスールもポテンシャルを考えると物足りない。「まあまあ頑張っている。」と言えるのは中盤から前目のポジションの選手ではMF岩上とMF清水慎くらい。攻撃陣は全滅に近い。
■ ハイリスクでローリターンな役回り結局、広島と大宮の2チームは何もかもが裏目に出ているがそれでもこういう流れがずっと続くとは考えにくい。もともと力のある選手が多いので何かしらのきっかけをつかむことが出来れば一気に浮上する可能性はある。「残留ラインの少し上」に位置する仙台や甲府や札幌や清水あたりにとっては広島と大宮が下位に低迷しているのはかなり不気味に感じると思うが、新潟に関しては「誤算続きの序盤戦」とは言えない。
むしろ、高卒ルーキーのMF原輝綺の活躍や新外国人のFWホニの活躍など喜ばしいサプライズがいくつかある中での1勝7敗2分けという成績である。主力級の選手に怪我人が出ているわけでもないので「○○が戦列に復帰したら・・・。」、「××がチームにフィットしたら・・・。」などといった何かを期待しにくい。『こういう流れになったら新潟は浮上していくだろう。』というイメージは現時点では湧いてこない。
J1のリーグ戦の約1/3の日程が消化した10試合を終えた時点でこの成績となると「三浦監督の解任論」が出てきても不思議はないが決断のタイミングは難しい。もちろん、監督交代というのは最高のショック療法になるので監督を解任すると5試合程度はプラスの効果が生まれることは過去の例からもはっきりと証明されるが、今、このタイミングで実績のある監督にオファーを出して承諾してもらえる可能性はかなり低い。
客観的に見ても今の新潟の監督を引き受けるのは相当な覚悟と勇気が必要である。「今の」と表現したが、「ここ数年の」と表現するのがより適切だろう。『戦力的には残留争いに巻き込まれる可能性が高いが残留争いを制して何とかJ1に踏みとどまったとしてもほとんど評価されない。むしろ、残留争いに巻き込まれたことを批判されるし、当然、途中解任される可能性もそれなりにある。』という大変な役回りである。
この点は昨オフに何人かの監督候補の名前が出た後で必ずしも評価が高くなかった三浦監督に決まったことからも想像できる。優秀な監督を連れてくることが出来ないとフロントがやり玉にあがるが実際にはフロントが出来ることというのは限られる。現状では「一発逆転を狙うしかない状況に置かれている評価の低い指導者」をつかまされる可能性が高い。クラブが置かれている状況はかなり深刻と言える。
関連エントリー
2013/03/10 【新潟×広島】 2度目のビッグスワンの旅 (上) (生観戦記)
2013/03/13 【新潟×広島】 2度目のビッグスワンの旅 (下) (生観戦記)
2013/03/14 セルジオ越後氏の「天国と地獄」を読んで
2013/03/14 ビッグスワンの旅 (3月8日-3月9日)
2013/03/15 アルウィンと松本市のホスピタリティ
2016/07/23 【Jリーグ】 かっこいい選手が多いチームはどこだ?
2016/12/13 【J1】 アルビレックス新潟の足を引っ張っているのはフロントか?サポーターか?
2016/12/14 【J1】 18クラブの中で監督選びに成功したクラブはどこか?監督選びに失敗したクラブはどこか? (2016年版)
- 関連記事
-