■ ドラフト会議を行うメリットというと・・・。プロ野球のドラフト会議は10月20日(木)に「グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール」で開催される。「今年は近年にないほどの豊作の年」と言われており、全部で100名ほどの選手が12球団から指名されてプロの世界に飛び込むことになる。「ドラフト外」での選手獲得が認められなくなってからは外国人選手を除くと全てのプロ野球はドラフト会議で指名をされてからプロ野球の世界に飛び込むことになる。
必ず通らなければいけない道になっているが、力があれば高校在学中や大学在学中はもちろんのこと、中学生でもJリーグの試合に出場することができるサッカー界とは事情が大きく異なる。サッカー界は学生を含めたアマチュアとプロの境界線は相当に曖昧であるが、プロ野球の場合は明確な線引きがされている。どんなに凄い選手であってもドラフト会議で指名を受けないと公式戦に出場することはできない。
この部分が野球界とサッカー界で大きく異なるが、ドラフト会議を行うメリットとしては「戦力が均衡しやすい点」や「契約金の高騰を防ぐことが出来る点」が挙げられる。さらに「この段階での選手に対する評価が指名順位や競合チーム数によってはっきりと示される点」や「ドラフト会議が近づくに連れて注目選手の情報がメディアで盛んに報じられるので有望選手の名前や顔が浸透しやすい点」などが挙げられる。
■ プロ野球とは対照的にJリーグは自由競争Jリーグの場合は完全な自由競争となるが、自前のユースチームを持つことが義務付けられているので新たにトップチームに加入する選手の半分ほどはユース出身者となる。Jリーグの歴史を振り返ってみても、例えば、FW久保裕やDF岩波やMF南野のような高校時代から大きな注目を集めていたスター選手が高校卒業時にブランド力や資金力を持った他の有力クラブに引き抜かれたことは一度もない。
もちろん、高校年代を横浜FMユースで過ごしたDF谷口博(鳥栖)やMF鈴木雄(山形)やMF汰木(山形)のように「横浜FMのトップチームには昇格できなかったが他のJリーグのクラブからオファーを貰って(横浜FMのトップチームではなくて)他のチームでプロになる。」という例は珍しくないが、立場的に上のクラブが高校を卒業するタイミングで有望株を(立場的に下のクラブから)強奪することは今の時点では考えにくい。
結局、サッカー界は「自由競争」とは言いながら自由に何でもできるわけではない。Jリーグにドラフト会議がない理由、もっと言うと、ドラフト会議を実施しようとしても難しい理由として「下部組織の存在」を挙げることが出来るが、プロ野球と同じようにJリーグでドラフト会議を実施した場合、どういう選手に人気が集中するのか?どういう選手が上位指名されるのか?を想像するのはなかなか面白いことである。
■ 目玉クラスと言えるのは以下の4人対象は今の高校3年生と今の大学4年生になるが、「今年のドラフト会議の目玉候補」と言えるのはMF堂安(G大阪)とFW岩崎(京都橘高)とDF冨安(福岡)の3人だろう。3人とも現在進行中のU-19アジア選手権のメンバーに選ばれているが、将来性を高く評価されている選手たちである。MF堂安とDF冨安に関しては高校3年生でありながらすでにユースでの活動は卒業しており、トップチームとプロ契約を交わしている。
さらに忘れてはいけないのはリオ五輪代表のDF室屋(FC東京)である。大学3年生の時点でプロ入りを決断してすでにFC東京とプロ契約を結んで主力として活躍しているが学年的には大学4年生と同じである。U-23アジア選手権で活躍して評価が急騰したこともあって大会直後にプロ入りを決断したが、あのまま大学生活を続けていたら「今年度の新卒選手の目玉の1人」として進路先が大いに注目されただろう。
仮にプロ野球のドラフト会議の一巡目の選択のときと同じように「各クラブが一斉に一番欲しい選手を発表する。」という方式であったならば、この4人に指名が集中するだろう。当然のことながら、「どの選手を1位指名するのか?」に関してはクラブの事情が大きく関係してくる。例えば最終ラインの高齢化が進んでいて将来性の高いCBを必要とするクラブであったならば迷うことなくDF冨安を指名するだろう。
■ その次にランクされる選手というと・・・。この4人が目玉クラスと言えるが、目玉クラスに指名が殺到しそうなときはその隙を突いて「次にランクされる選手」を確保しようとするケースもプロ野球のドラフト会議では頻繁に見られる。『一本釣り』と言われるが、その候補と言えるのは高校3年生ではGK廣末(青森山田高)やGK波多野(FC東京U-18)やDFタビナス・ジェファーソン(桐光学園高)やMF渡辺皓(東京Vユース)やDF舩木翔(C大阪U-18)あたりになる。
GK廣末はU-19日本代表の2番手キーパー。FC東京入りが内定している。GK波多野は196センチの超・大型キーパーでスケール感は抜群である。DFタビナス・ジェファーソンは父親がガーナ人で母親がフィリピン人となる182センチの大型の左SB。多くの有力クラブが獲得に乗り出したが最終的には川崎Fに加入することが発表されている。今後、日本国籍を取得して年代別代表に絡んでくる可能性がある。
MF渡辺皓はリオ五輪のときにトレーニングパートナーに選出された。攻守両面でチームに貢献できるボランチでここに来て東京Vのトップチームでスタメンで起用される機会が増えている。DF舩木翔はU-19日本代表のレギュラーの左SBで左足のキックに定評がある。左SBでありながらプレミアリーグのWESTで13試合に出場して9ゴールを記録。得点ランキングで2位タイと普通ではあり得ない事態になっている。
■ その他のドラ1級の選手というと・・・。一方、大学生については「今年度はやや不作」と言える。名前の売れている選手は少ないが、キーパーのGK前川(関西大)は将来を嘱望されているキーパーである。創生期の広島で活躍した元日本代表キーパーの前川和也氏の息子となるが190センチの長身でありながらフットワークが軽くて動きは俊敏。どっしりした古典的なキーパーだった父と比べると息子は足元の技術も高くて現代的なキーパーと言える。
仮にプロ野球と全く同じ12球団でドラフト会議を行うとしたら、GK廣末やGK波多野やDFタビナス・ジェファーソンやMF渡辺皓やDF舩木翔やGK前川あたりも『ドラ1級』と言える。チーム事情やクラブの未来を考えて一本釣りを狙うクラブが出てきても不思議はない。彼らに続くのが『外れ1位級 or ドラ2級』。MF齊藤未(湘南)、DF杉岡(市立船橋高)、MF原輝綺(市立船橋高)、FW田川(鳥栖U-18)あたりが相当する。
ここに来てJ1での出場機会が増えているMF齊藤未は攻守両面でアグレッシブにプレーできるのが魅力。湘南入りが内定したDF杉岡は左利きのCBでキックの精度が高い。将来的にはDF丸山やDFアンドレ・バイアが務めてきた3バックの中央で守備の要として活躍する選手になるのではないか。同じ市立船橋高のMF原輝綺はU-19日本代表でユーティリティー性が武器。CFのFW田川は「ポスト・豊田陽平」の期待がかかる。
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