■ ハリルJAPANの初陣つい先日、日本代表の新しい監督に就任したハリルホジッチ監督の初陣となるチュニジア戦が大分銀行ドームで行われた。まだブラジルW杯から1年も経過していないが、2018年のロシアW杯の予選はすでにスタートしている。アジア1次予選は3月12日と3月17日に行われており、日本など主要国が登場する2次予選は6月に始まるので、ハリルホジッチ監督に与えられた準備期間は2か月強。切羽詰った状況と言える。
日本は「4-2-3-1」。GK権田。DF酒井宏、吉田、槙野、藤春。MF長谷部、山口蛍、永井謙、清武弘、武藤嘉。FW川又。ザックジャパンならびにアギーレジャパンの攻撃の中心だったMF本田圭とMF香川とFW岡崎慎の3人はベンチスタートで、怪我を抱えているシャルケのDF内田篤もベンチスタートとなった。G大阪の左SBのDF藤春と名古屋のストライカーのFW川又が国際Aマッチのデビュー戦となった。
GK川島、GK西川、GK東口、DF内田篤、DF太田宏、DF森重、DF昌子、DF酒井高、DF水本、MF柴崎岳、MF青山敏、MF今野、MF香川、MF本田圭、FW岡崎慎、FW乾、FW大迫、FW宇佐美の18名がベンチスタートで、DF長友とFW小林悠とFW興梠の3人は怪我のため代表参加を辞退している。また、名古屋のFW川又は当初は31人の枠には入っていなかったが、川崎FのFW小林悠の代役で選出された。
■ 2対0で日本がチュニジアに勝利試合の立ち上がりはチュニジアが主導権を握る。日本は右サイドにMF永井謙、左サイドにMF武藤嘉を置いて、スピードのある両サイドから攻めようとするが、なかなかうまくいかない。序盤は守備に追われる展開になったが、前半20分に左サイドのCKを獲得すると、トップ下でスタメン出場したMF清武弘のボールをAマッチのデビュー戦となったFW川又がヘディングでゴールを狙うが、惜しくもバー直撃で先制ならず。
0対0で迎えた後半15分に日本はベンチスタートだったMF本田圭とMF香川を同時に投入。トップ下にMF香川、右サイドにMF本田圭を置く布陣に変更すると、後半33分に中央でボールを受けたMF香川が相手のマークを引き付けてから左サイドのMF本田圭に展開。MF香川のパスはややずれてしまったが、難しい体勢から上げたMF本田圭のクロスをファーサイドのFW岡崎慎が頭で決めて日本が先制に成功する。
さらに後半38分にもFW岡崎慎が中央で起点を作って左サイドを走ったMF香川にパスを送ると、MF香川はディフェンダーとキーパーの間に嫌らしいグラウンダーのクロスを入れる。キーパーが何とか対応したが、こぼれ球をMF本田圭が押し込んで2対0とリードを広げる。さらに後半44分にはMF香川の絶妙のスルーパスからMF宇佐美にビッグチャンスが訪れたが、右ポスト直撃で3点目とはならず。
MF宇佐美は代表デビューをゴールで飾ることはできなかったが、後半途中に投入されたFW岡崎慎とMF本田圭とMF香川とMF宇佐美の4人が躍動して2対0で勝利してハリルJAPANは白星発進となった。FW川又やDF藤春などスタメン起用された選手たちの出来もまずまず良かったと思うが、結局、1点目も、2点目も、FW岡崎慎とMF本田圭とMF香川の3人の連携から生まれており、彼らが意地を見せたと言える。
■ 驚きのスタメン11人の顔ぶれ大きな注目を集めたハリルホジッチ監督の初陣は見どころの多い試合になった。まず驚かされたのはスタメンの顔ぶれである。ザックジャパンならびにアギーレジャパンの中心だったFW岡崎慎とMF本田圭とMF香川とDF内田篤とGK川島はベンチスタートで、アギーレ体制で出番が多かったDF森重とMF柴崎岳とMF乾もベンチスタートで、初代表となる左SBのDF藤春などをスタメンで起用してきた。
親善試合とは言っても、初戦というのはどの監督も「特に勝ちたい。」と思うものである。代表監督に就任して初戦を白星で飾ることができると、その後の仕事がかなりスムーズに進むようになる。ハリルホジッチ監督も手堅く旧来のメンバーをスタメンに並べてくるか思われたが、旧来のメンバーのほとんどがベンチスタートとなった。アジアカップ2015の主軸だった選手はDF吉田とMF長谷部の2人だけだった。
このスタメンにはかなり驚かされたが、よくよく考えてみるとベスト4に入った2012年のロンドン五輪代表のメンバーが多い。カウントするとGK権田とDF酒井宏とDF吉田とMF山口蛍とMF永井謙とMF清武弘の6人が関塚ジャパンの主力としてベスト4入りに大きく貢献した選手たちなので、初陣は「ロンドン組」がベースになった。(※ いなかったのはDF徳永、DF鈴木大、MF扇原、MF大津祐、MF東あたり。)
「たまたま抜擢した選手にロンドン組が多かった。」というよりはある程度は意図的にハリルホジッチ監督がこういうメンバーを選んだと思うが、合理的と言えば合理的である。「スピード」がハリルJAPANのキーワードの1つと言われているが、ロンドン五輪の本大会で見せた関塚ジャパンが見せたサッカーは本当に縦に速いサッカーだったので、ハリルホジッチ監督が目指すサッカーと似た部分があるのかもしれない。
■ 出来が良かったFW川又・MF山口蛍・DF槙野後半途中に選手を何人か入れ替えてから2ゴールが生まれたが、スタメンに抜擢された選手の出来はまずまずだった。立ち上がりこそなかなかリズムを作れなかったが、前半20分のコーナーキックからFW川又のヘディングシュートがバーを直撃したシーンあたりから流れがやや日本のほうに傾いて、その後はトップ下のMF清武弘を中心としたパスワークからいくつかチャンスを作った。
極端に出来の悪かった選手はいなかったが、スタメン組の中で「他の選手と比べて良かった。」と感じたのはFW川又、MF山口蛍、DF槙野あたりである。まずFW川又は1トップの位置でプレーしたが、チャンスシーンにも顔を出しており、ポストプレーも悪くなかった。前半にMF永井謙のスルーパスを受けて決定機になりかけたシーンがあったが、あの場面で見せたしなやかなは大きな魅力である。
怪我で昨シーズンの終盤を棒に振ったMF山口蛍はブラジルW杯以来の代表戦だったが、出来としてはかなり良かった。ミドルパスが正確で、鋭い楔のパスを入れるシーンも多かった。最大のウリである運動量も豊富で、ハリルホジッチ監督が縦に速いサッカーを続けるのであれば中盤の軸になってもおかしくない。すでにJリーグの試合で怪我の影響が全く無いことは証明していたが、代表のピッチでもそのことを証明した。
個人的にはDF槙野をCBのスタメンで起用したことに一番驚いたが、DF槙野の出来もなかなか良かった。DF槙野の持っている積極性をハリルホジッチ監督は買ったと思うが、臆することなくプレーした。プロサッカー人生の大部分をかなり特殊なサッカーをするペトロヴィッチ監督の下でプレーしてきたので、なかなか代表における使いどころが見つからなかったが、初戦でいいアピールができたと言える。
■ 古い井戸たちが見せた意地ハリルホジッチ監督が大幅にスタメンを入れ替えてきたこと、そして、抜擢された経験の浅い選手たちがまずまずのパフォーマンスを見せたこともトピックスと言えるが、この試合の胆と言えるのは、何と言ってもスタメンから外れた旧来の選手が意地を見せたことである。0対0のままで時計が進んだが、後半途中にピッチに送り出されたFW岡崎慎とMF本田圭とMF香川の3人の連携から2つのファインゴールが生まれた。
当然、ハリルホジッチ監督は日本人選手のことをまだ十分には知らないと思う。「現時点の評価や実力でスタメン11人を選んだ。」というよりは、「絶対的な選手やスタメン安泰の選手は誰もいない。」というメッセージを伝えたいという気持ちと国際経験の浅い選手にチャンスを与えたいという気持ちの2つの理由からこういうスタメンになったと思うが、スタメンから外れた選手たちが2つのゴールを生み出した。
2006年のドイツW杯の直後に日本代表の監督に就任したオシム監督は「古い井戸」という言葉を用いた。『古い井戸があります。そこには水が少し残っています。それなのに、古い井戸を完全に捨てて新しい井戸を掘りますか?』とコメントして大きな話題になった。FW岡崎慎とMF本田圭とMF香川の3人はオシム監督の言葉を借りると「古い井戸」になるが、この試合では格の違いを見せたと言える。
代わりに先発で起用されたFW川又とMF清武弘とMF永井謙の3人がまずまずのプレーを見せたことはこの3人も見ており、燃えるものがあったと思うが、この3人の連携から生まれた2つのゴールにはゾクゾクした。彼らが攻撃の中心となったブラジルW杯ならびにアジアカップ2015で日本代表は期待されたような結果を出せなかったので「不要論」も出始めていたが、懐疑的な声を吹っ飛ばすような活躍だった。
■ 上々のデビューを飾った宇佐美貴史国際Aマッチ出場のデビュー戦となったMF宇佐美も存在感を発揮した。後半44分にMF香川のスルーパスを受けてフリーでシュートを放った場面は惜しくも右ポストに直撃して「デビュー戦での初ゴール」は逃したが、FW岡崎慎とMF本田圭とMF香川との関係性は非常に良かった。岡崎・本田・香川・宇佐美という新たなカルテットに大いなる可能性を感じた人は多かったのではないかと思う。
後半27分にFW岡崎慎とMF宇佐美が同時にピッチに投入されたので、まずポジションが注目された。MF宇佐美を真ん中に置いて、FW岡崎慎をサイドに回すことも十分に考えられたが、FW岡崎慎がCFに入って、MF宇佐美は左サイドハーフに入った。チュニジアは後半の途中から足が止まってほとんど攻撃の形を作れていなかったので、その点は考慮する必要はあるが、守備に回ったときも問題はなかった。
MF宇佐美の一発目のテストはどう考えても「合格」なので、今度はスタメンで起用されたときにどのくらいのパフォーマンスが出来るか?に注目したい。MF宇佐美が才能豊かな選手であることは間違いないが、同ポジションにはMF武藤嘉がいて、MF乾がいて、MF永井謙もこのポジションでプレーできるし、MF香川やFW岡崎慎が回る可能性もある。左サイドハーフ(あるいは左ウイング)は本当に激戦区である。
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