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【清水×広島】サッカー少年たちの最高のお手本と言える佐藤寿人 | | |　

■　J1の第30節

J1の第30節。9勝16敗4分けで勝ち点「31」の清水エスパルス(15位)と、11勝9敗9分けで勝ち点「42」のサンフレッチェ広島(9位)がIAIスタジアム日本平で対戦した。J1の残留争いに巻き込まれている清水は29節の新潟戦(H)で勝ち点「3」を獲得して15位に浮上したが、16位の甲府との差は「1」のみで、17位のC大阪との差は「2」のみ。強敵の広島が相手とは言っても、ホームで勝ちたい試合である。

ホームの清水は「4-2-3-1」。GK櫛引。DF河井、ヤコヴィッチ、平岡、吉田豊。MF本田拓、藤田息、大前、六平、石毛。FWノヴァコヴィッチ。ここ数試合は「4-1-4-1」のような布陣で結果を出していたが、広島対策の意味合いもあって「4-2-3-1」を採用した。大卒2年目のMF藤田息は今シーズン初スタメンとなった。エースのFWノヴァコヴィッチはリーグ7位タイとなる11ゴールを挙げている。

対するアウェーの広島は「3-4-2-1」。GK林卓。DF塩谷、千葉、水本。MF青山敏、柴崎晃、柏、山岸、石原直、野津田。FW佐藤寿。キーマンのMF高萩が出場停止で、五輪代表のMF野津田が10節の鳥栖戦(A)以来のスタメンとなった。ここまでは15試合に出場して2ゴールを挙げている。2試合連続ゴール中のFW佐藤寿は25試合に出場して9ゴールを挙げている。11年連続二桁ゴールにリーチがかかっている。

■　アウェーの広島が3対1で勝利

試合は前半28分に広島が先制する。日本代表のDF塩谷の精度の高いサイドチェンジのボールを左サイドに流れたFW佐藤寿がダイレクトでゴール前に落とすと、飛び込んできたMF石原直が決めて先制に成功する。さらに前半38分にも高い位置でボールを奪ったFW佐藤寿のパスを受けたMF山岸のクロスからMF石原直が決めて2点目を奪う。MF石原直は今シーズン10ゴール目となった。

勢いに乗る広島は後半20分にも右サイドでボールを受けた右WBのMF柏がカットインして左足でシュートを放つ。このシュートはキーパーのGK櫛引が防いだが、跳ね返ったボールが体ごとゴール前に飛び込んでいたFW佐藤寿の体に当たってゴールイン。今シーズン10ゴール目となったFW佐藤寿は前人未到の11年連続二桁ゴール達成で、J1通算では144ゴール目となった。

3点ビハインドの清水は後半35分に途中出場のMF高木俊が左足で豪快なミドルシュートを決めて1点を返すが、反撃はこの1点のみ。3対1でアウェーの広島が勝利した。広島は8位に浮上して、ACL圏内となる3位の鹿島との差が「6」となった。リーグ3連覇の可能性は消滅したが、3年連続となるACL出場権獲得のチャンスは残っている。一方の清水は痛恨の敗戦で16位と降格圏に転落した。

■　裏目に出ることが多い大榎監督の采配

J1の残留争いは大混戦で、30節を終えた段階で甲府は勝ち点「33」で13位で、同勝ち点「33」の仙台が14位、勝ち点「31」の大宮が15位、同勝ち点「31」の清水が16位で、勝ち点「30」のC大阪が17位となっており、勝ち点「3」差の中に5チームがひしめている。17位のC大阪がもっとも下に位置にするが、得失点差は5チームの中では一番いい数字なので、勝ち点で並ぶことができると上の順位となる。

毎年、Jリーグは混戦になっているが、ここまで残留争いが混戦状態になったケースはここ数年はなかった。「奇跡の残留」と呼ばれた千葉が最終節で劇的な形でJ1残留を決めた2008年以来の混戦具合と言えるが、当然、残り試合も少なくなってきて、降格圏で試合を迎えるチームはプレッシャーがかかって来る。29節で新潟に勝利して残留圏に浮上した清水だったが、わずか1節で降格ゾーンに転落となった。

この日は完敗だった。ここ最近の清水の出来は悪くはないが、広島の状態も上がってきている。MF青山敏やDF塩谷の精度の高いミドルパスに振り回されるシーンが多くて、1点目と3点目はまさしく効果的なサイドチェンジがゴールにつながった。広島は2シャドーが攻撃の中心になって来るので、清水は23歳のMF藤田息をスタメンで起用してWボランチを採用したが、成功したとは言い難い。

今シーズンの途中に監督に就任した大榎監督は積極的に若手選手を起用している。MF石毛などは抜擢に応えていると言えるが、思い切った若手起用が裏目に出るケースが多くなっている。結果が出ていない状況で、若手選手が抜擢に応えてくれるとチームの雰囲気は良くなると思うが、空振りに終わることが多い。プロの監督としての経験が浅い大榎監督にとってはタフな状況に追い込まれている。

清水は31節は川崎F(A)、32節は名古屋(H)、33節は柏(A)、34節は甲府(H)と対戦するが、当然、最後の甲府戦(H)がヤマとなる。ホームで絶対に勝ち点「3」を獲得しなければならない試合と言えるが、甲府は手堅いチームである。「最初から引き分けを狙ってきて、実際にそのとおりに勝ち点「1」をもぎ取ることができるチーム」なので、その前の3試合でどこまで勝ち点を積み上げることができるか。

■　ミドルパスの精度の高さが光るDF塩谷司

一方の広島は非常にいいサッカーを見せた。プレッシャーのかかる状況下で戦っている清水の余裕のないところを突いてチャンスを作った。先のとおり、この日はMF青山敏やDF塩谷らの精度の高いサイドチェンジのボールが効果的でダイナミックなサッカーを見せた。特に1点目のゴールはこれまでに築き上げてきたコンビネーションとダイナミックさが合わさったファインゴールだった。

1点目のゴールの起点になったのは日本代表のDF塩谷だったが、ここ最近は右足のミドルパスの精度の高さが目立っている。水戸時代からフィード力に定評のあった選手で、楔のパスを出したり、スルーパスを出すシーンは多かったが、ここ最近は距離の長いキックも自信を持って蹴ることができるようになっている。精度が高くて、なおかつ、質もいいので、また1つ、大きな武器を身に付けようとしている。

2ゴールを挙げたMF石原直の活躍も光ったが、何と言ってもこの試合はFW佐藤寿である。1点目のゴールをアシストして、2点目も粘り強いFW佐藤寿の守備がきっかけになっており、3点目はストライカーらしい嗅覚をフルに発揮したゴールだった。結局、3つのゴール全てに絡む大活躍を見せた。ゴール前以外での貢献度も非常に高くて、文句なしのMOMと言えるだろう。

■　小・中学生の最高のお手本

ゴールシーンは彼にしかできないような形からのゴールだった。右WBのMF柏がカットインして左足でシュートを放ったが、最初はスライディングをしてゴール前で合わせようとした。結局、シュートはキーパーの方向に飛んだため、直接合わせることはできなかったが、GK櫛引がはじいたところにちょうどFW佐藤寿がいて、スライディングの体勢だったFW佐藤寿のお腹付近に当たってゴールインとなった。

もちろん、偶発的なところもあった。キーパーがはじいたボールに反応したというよりは、「ちょうどそこにいた。」という感じだったが、あの位置にいることに価値がある。そして、最後は完全にフリーの状態になっていたので、最初はオフサイドかと思ったが、全くオフサイドではなかった。「11年連続二桁ゴール」という前人未到の記録を作ったが、FW佐藤寿の真骨頂と言えるような見事なゴールだった。

32歳とベテランの域に入ってスピードやキレなどは落ちてきているが、プレーが洗練されてきて、動きの質などは上がってきているように思う。FW佐藤寿は人気者なので、ずっと彼の動きを目で追いながらエディオンスタジアムで試合を観戦している小学生や中学生のサッカー少年は多いと思うが、最高のお手本である。彼ちは「どうやったら点を獲ることができるのか？」を無意識のうちに学習できている。

Jリーグが誕生して20年余り。リオ五輪代表チームは1993年1月1日以降に生まれた選手が対象となるので、ちょうど彼らが生まれた頃にJリーグがスタートしたことになる。この世代からようやく「Jリーグが身近にあるのが当たり前」と言える環境で育った世代となるが、いい選手のプレーを身近でたくさん見ながら育った少年たちのレベルが高くなるのは当たり前である。そして、こういうことを何世代も重ねていった結果として、いずれは日本も「サッカー大国」と言われるよう国になっていくのではないかと思う。

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