■ 2013年のJリーグの得点王2013年は33試合に出場して26ゴールを記録。自身初となるJリーグの得点王に輝くなど、充実したシーズンを送った川崎FのFW大久保は今シーズンも12節を終了した時点で11試合で6ゴールとJ1の得点ランキングの4位タイに付けている。川崎FはACLもGLを突破したので、リーグ戦とACLを並行して戦うハードな日程となっているが、開幕からいい状態をキープしていると言える。
5月12日(月)に日本代表メンバーが発表されるが、2010年の南アフリカW杯でも活躍したベテランのFW大久保が23人枠に入ってくるのか?という点が大きな注目ポイントになっている。2012年2月に行われた国内組主体のアイスランドとの親善試合でザックジャパンに召集されているが、プレーしたのは、この1回だけ。選出されたら、約2年3ヶ月ぶりの代表復帰となる。
言うまでもないことであるが、昨シーズンと今シーズンのここまでの活躍を考えると、日本代表に入ってきてもおかしくない選手である。2012年に神戸がJ2に降格して、2013年から川崎Fでプレーしているが、川崎Fで風間監督に出会って、「エネルギーに満ち溢れていた若い頃のFW大久保が甦った。」と言えるほど、若々しくて、エネルギッシュなプレーを見せている。
■ ネックになる年齢的な問題ここ1年半に限定すると、FW豊田、FW柿谷、FW大迫、FW工藤壮らと比較して優るとも劣らない活躍を見せているが、ここまでFW大久保を召集してこなかったザッケローニ監督の考え方も理解できる。いくつかの理由が考えられるが、一番の理由は年齢である。FW大久保は1982年6月9日生まれなので大会直前に32歳になるが、サッカーの世界ではベテランと言える年齢である。
同ポジションのFW柿谷は1990年1月3日生まれで、FW大迫は1990年5月18日生まれなので、ともにブラジルW杯は24歳で迎えることになる。サッカーの世界は4年に1度のW杯を基準にして「4年周期」で動いているので、ちょうど「ふた回り」の違いがある。これは無視できない差である。(※ FW豊田は1985年4月11日生まれなので29歳となる。)
ザッケローニ監督の契約は「ブラジルW杯まで」なので、大会終了後、日本代表監督を退くのは確実と言える。したがって、4年後のロシアW杯のことは考えなくてもいい立場である。ドライに契約期間中のことだけを考えるタイプの指導者もいると思うが、ザッケローニ監督は4年後あるいは8年後のことも考えており、次の代表監督が困らないように若い選手を優先して起用してきた。
もちろん、MF遠藤など代わりが見つからなかった選手は例外であるが、同じくらいの期待値や実績の選手が複数いたときは、ほとんどのケースで年齢の若い選手を優先して起用してきた。これは当初からブレずにやってきたことで、ザッケローニ監督のポリシーと言える。当たり前の話であるが、30代の選手が多いチームを引き継ぐようなことになると、後任監督は大変である。
■ プレースタイルの問題もう1つの理由はプレースタイルである。川崎FはJリーグの中ではかなり独特なサッカーをしている。もちろん、裏に飛び出して、スルーパスを受けてゴールというシーンもあるが、FW大久保が前線にいて、ボールを受けるときは、ちょっとだけ動いて、パスコースを作って、足元でボールを受けるケースが多い。「無駄に動かない。」というのが、川崎Fの考え方の基本である。
昨今は「動きながらボールを受ける。」というのが主流で、ザックジャパンもそういう感じのサッカーになっているので、ザックジャパンのやり方と川崎Fのやり方は全く違っている。当然、川崎Fはこのやり方で成功しているので、全く問題は無いが、ザックジャパンの中に入ったとき、FW大久保がすぐにアジャストできるのか?というと、何とも言えないところである。
結局、無駄な動きが減って、効率的に動くことができるようになったことが、FW大久保が神戸時代と大きく変わった点であるが、これまで日本代表の1トップで起用されてきたFW前田やFW大迫とは全く違ったタイプの1トップで、FW柿谷とも違っている。FW大久保が代表のやり方に合わせるのか、周りがFW大久保のやり方に合わせるのか。すり合わせの作業は必要になってくる。
チームというのは非常にデリケートなので、それなりに上手くいっているFW大迫の1トップやFW柿谷の1トップとは別に、FW大久保の1トップという別オプションを練り上げていく作業はリスクが伴う。ザックジャパンに限った話ではないが、1トップにどういう選手を起用するかでスタイルは大きく変わるので、単純に「Jリーグで点を獲っているから代表でも起用すべき。」とはならない。
■ 無いとは言えない性格的な問題それ以外では、1トップの選手にはある程度の高さが必要なので、170センチという高さの問題もあると思うが、性格的な問題も全く無いとは言えない。もちろん、C大阪やマジョルカでプレーしていた若い頃と比べるとはるかに落ち着いてきたが、仮にFW大迫あるいはFW柿谷のサブに回るとなったとき、何も文句を言わずにベンチに座っていることができるかどうか。
当然、大丈夫だと思うが、DeNAのノリさんの例を出すまでもなく、生まれながらの性格というのは、なかなか変わらないものである。情熱的な部分がプラスに作用することも考えられるが、監督である以上、マイナスのことも考えなければならない。MF中村憲であったり、FW工藤壮であったり、MF齋藤学であったり、MF南野よりは、上手くいかなかったとき、不平分子になる可能性は高い。
このあたりが考えられる「ザックが召集することに億劫になる理由」であるが、そうは言っても、ゴールに向かう意欲であったり、「何が何でも自分で決めてやる。」という意思の強さは、他の日本人フォワードには無いものがある。また、FW大久保の待望論が浮上してからかなり時間が経っており、もし、サプライズで選出されたとしたら、彼に対する期待度はマックスになるだろう。
「多くの人が観たい。」と思っている選手を選出するのも、1つのやり方である。そうすることで、代表チームに対する国民の期待感は高まって、代表チームがより多くのサポートを受けることができる。当然、いくつかのマイナス要素はあるが、プラスに働くと考えられる要素もいくつかある。果たして、ザッケローニ監督はFW大久保をサプライズで召集するのだろうか・・・。
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