■ 浦和への移籍が確実ジェフ千葉のMF阿部勇樹選手の浦和レッズへの移籍が決定的となった。阿部に対しては、FC東京や名古屋グランパスエイトも獲得に乗り出していたが、人気・資金力・環境面の全てで上回る、浦和への移籍を決断したようだ。
日本代表で中心選手としてプレーする阿部の加入で、浦和の戦力は格段にアップする。本職はボランチだがCBやリベロでもハイレベルなプレーを見せるし、場合によっては右サイドバックで起用することも可能。すでに飽和状態だった浦和の選手層は、さらに分厚くなった。
■ 阿部の魅力阿部の魅力は、ユーティリティー性だけではない。若いころはFKのスペシャリストといわれたが、今はセットプレーのキッカーとしてよりも、中であわせるターゲットとして力を発揮している。ときにはCBでプレーしていたにもかかわらず、2年連続で2桁のゴールを挙げるセンスは脅威としかいいようがない。
ただ、個人的に一番魅力を感じる部分は、チームが苦しい状況でも力を発揮することができる強い精神力である。若いころは、消極的なプレーも多くナイーブな感じも受けたが、もはや、そんな部分は微塵も見られない。昨シーズンも、崩壊寸前の千葉のDFを幾度となく立て直した。ボールを持ったときに華やかなプレーを見せるわけではないが、スタジアムで見るときに、ボールのないところでも、動きを追いかけておきたい選手のひとりである。
移籍金は4億円といわれるが、25歳という若さ、日本代表選手であること、過去の実績が十分であること、タレント的に不足している守備的なポジションの選手であることを考慮すると、その価値は十分にあるだろう。
■ 阿部とバレーのケース浦和レッズは、ACL制覇に向けて素晴らしい補強となった。ルールにのっとって移籍交渉を行ったのだから、浦和レッズを批判することは筋違いである。これは、甲府のバレーを獲得したガンバ大阪についても当てはまる言葉である。
とはいっても、Jリーグ的に考えると、阿部やバレーの移籍が良かったのかどうなのかは意見が分かれるところだろう。阿部が千葉の一員として浦和と対戦し、バレーが甲府の一員としてG大阪と対戦するほうが、試合に対する興味は増すだろう。また、チームのシンボル的な選手が抜けてしまうことは、千葉や甲府にとっては死活問題である。
■ 貧富の差の拡大もともと上位チームと下位チームの戦力差が少ないといわれてきたJリーグだが、ここ3・4年は、下位クラブ(資金力のないクラブ)の有力選手が、上位クラブ(資金力のあるクラブ)に移籍するケースが増えてきた。
時間が経つにつれて、貧富の差が拡大することは自然な傾向だが、毎年のように中心選手が移籍する状況は、サポーターにとってはつらい出来事に違いはないし、リーグ制覇の可能性を持つチームが限られてくると、Jリーグ自体に対する興味がそがれることにつながりかねない。どうすればいいのか、その答えは見つからないが、難しい時代に入っていることに違いない。
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