■ 韓国戦東アジアカップの3戦目。初戦の中国戦は3対3の引き分けで、2戦目のオーストラリア戦は3対2で勝利して、1勝1分けで勝ち点「4」。首位に立っているザックジャパンが開催国の韓国と対戦した。韓国は2試合ともスコアレスドローで勝ち点「2」で、3試合を終えた中国は1勝2分けで、オーストラリアは2敗1分けなので、勝つと東アジアカップの初優勝が決定する。引き分けの場合はスコア次第で中国にも優勝のチャンスが出てくる。
日本は「4-2-3-1」。GK西川。DF駒野、栗原、森重、槙野。MF山口螢、青山敏、工藤、高萩、原口。FW柿谷。オーストラリア戦から中2日となるが、スタメンは初戦の中国戦と全く同じで、オーストラリア戦で活躍したFW豊田、MF齋藤学、FW大迫らはベンチスタートとなった。23人が召集されているが、唯一、仙台のGK林だけがスタメンのチャンスを得ることができなかった。
■ ロスタイムに劇的ゴール試合の立ち上がりは韓国ペースとなる。長身のFWキム・ドンソプにロングボールを当ててきて、こぼれ球を確実に拾って攻め込んでくる。しかし、前半25分にMF青山敏の縦パスからFW柿谷が裏に抜け出すと、キーパーの動きをよく見ながら落ち着いて決めて日本が先制する。FW柿谷は初戦の中国戦に続いて2試合連続ゴールで、デビュー戦から2試合連続弾というのは、史上4人目という快挙達成となった。
しかしながら、前半33分にワンツーを受けてフリーになったMFユン・イルロクが右足でミドルシュートを放つと、これがネット隅に鮮やかに決まって1対1の同点に追い付く。前半の日本はボールのおさまりどころが無くて、ほとんどシュートチャンスを作ることができなかったが、DF栗原やDF森重を中心とした守備陣が踏ん張って、やや劣勢の展開ではあったが、1対1のスコアで折り返す。
後半になると、ようやくパスが回り始めて、トップ下のMF高萩がいい形でボールを受けるシーンが出てくるが、決定機にはつなげられず。韓国も前半に飛ばし過ぎた影響なのか、動きが落ちてきて、ゴール前のシーンを作れなくなる。1対1のままで終わると、日本と中国が「勝ち点」や「得失点差」や「総得点」が全て同じになって、イエローカードの枚数の勝負になるところだったが、後半46分に劇的な決勝ゴールが生まれる。
GK西川が左サイドのDF駒野にパントキックで素晴らしいパスを送って、DF駒野のパスからMF原口が左サイドを抜け出すと、MF原口のシュートはキーパーに防がれるが、こぼれ球をFW柿谷が左足で流し込んで土壇場で勝ち越しに成功する。その後、韓国がセットプレーから大チャンスを作るが、ゴール寸前で途中出場のFW豊田がスーパークリアを見せて韓国の同点ゴールを阻止する。
結局、C大阪のFW柿谷が2ゴールを挙げる活躍を見せた日本がアウェーで韓国に勝利。2勝1分けとなって見事に東アジアカップを制覇した。結局、1勝2分けの中国が2位で、1敗2分けの韓国が3位で、2敗1分けのオーストラリアが4位となった。また、得点王には3ゴールを挙げた日本代表のFW柿谷が輝いて、大会MVPには中盤の底で献身的なプレーを見せたMF山口螢が選出された。
■ 起点となったGK西川国内組中心で戦ったザックジャパンがアウェーで韓国を下した。韓国も欧州組は不在で、国内組の中心のメンバー構成だったが、GKチョン・ソンリョン、DFキム・チャンス、DFキム・ヨングォンなどは、W杯予選でスタメンで起用されることが多かった選手なので、守備的なポジションはフルに近いメンバーだったが、FW柿谷が後半46分に決勝ゴールを決めて2対1で競り勝った。
決勝ゴールのシーンは、最初のGK西川のフィードが素晴らしかった。GK西川にとっては当たり前のプレーであり、Jリーグの試合でもよく見られるプレーであるが、ハーフウェーラインを少し過ぎたところにいたDF駒野の足に寸分の狂いの無いレベルでロングパスを送って、パスを受けたDF駒野が中継役となって、MF原口のドリブル突破ならびにFW柿谷の決勝ゴールが生まれた。
GK西川は最後のCKでキャッチングをミスして、FW豊田のクリアに助けられるシーンがあったが、そのシーンを除くと、ハイボールの処理も安定していた。日本も決定機はほとんどなかったが、韓国の方も決定的なシュートはほとんどなかったので、GK西川が相手のシュートをセーブする場面というのは全くと言っていいほど、無かったと思うが、相手のラフなクロスを積極的にキャッチしに行って、攻撃を終わらせることが多かった。
コンフェデではGK川島が3試合ともゴールを守って9失点を喫した。もちろん、9失点というのは、彼だけの責任ではないが、その前のブルガリア戦もキャッチミスからゴールを許すなど、やや精彩を欠いている。今大会でGK西川が遜色ない働きを見せたことは、収穫の1つである。カウンター気味に攻める機会が多くなると予想される本大会では、GK西川の正確無比なフィードが生きてくることも考えられる。
■ 奮闘した守備陣GK西川だけでなく、守備陣はよく頑張った。前半はMFコ・ヨハンというスピードのある選手に掻き回されるシーンもあったが、対峙することが多かったDF槙野も最後のところは自由にやらせなかった。怪我の影響があったのか、どうなのか、詳しい事情は分からないが、後半7分にDF槙野に代えてDF徳永を投入すると、サイドでやられるシーンがなくなって、韓国は攻め手がなくなった。
もちろん、日本がボールのおさまりどころが見つからなくて、奪ったボールをすぐにミスで失ったり、大きくクリアするだけになるシーンが多かったので、基本的には、韓国が試合を優位に進めていたが、ただ、韓国も決定機はほとんどなかった。後方からのロングボールに対しても、DF栗原とDF森重のCBコンビがしっかりと跳ね返していたので、中国戦やオーストラリア戦と比べると、不安定さは感じられなかった。
初戦の中国戦は2点リードを守り切ることができなくて3失点を喫したので、DF駒野、DF栗原、DF森重、DF槙野の4人にとっては、代表に生き残ることができるかどうかの大事な試合であり、無様なパフォーマンスを見せたら、見限られる可能性もあったが、集中力を発揮した。日本がボールを保持して攻め込むことはできなかったが、最終ラインは落ち着いていたので、「危ない。」と感じるシーンは少なかった。
■ 2ゴールを挙げたFW柿谷一方、攻撃に関しては、ボールを落ち着かせる選手がいなかった。後半になると、左サイドのMF原口のところでボールが持てるようになったので、前半と比べると流れは良くなったが、クリアボールをマイボールにすることができなかったので、波状攻撃を受けることになった。オーストラリア戦は、FW豊田とFW大迫の2人のところでおさまるシーンが多かったが、FW柿谷とMF高萩のところでおさまるシーンを少なかった。
したがって、守備的なポジションの選手に負担のかかる展開となったが、最後のところで、FW柿谷が大仕事をした。ゴールシーン以外ではなかなかボールに触れなかったので、フォワードにとっては、イライラする展開だったと思うが、冷静に左足で流し込んだ。先制ゴールのシーンもそうであるが、チームが困っているときにゴールできる選手は貴重である。
もちろん、「1トップのFW柿谷」の課題は少なくない。ハイボールに対しては、トップ下のMF高萩が競りに行くケースが多かったが、MF高萩に負担がかかっている。また、守備に回った時も、FW柿谷とMF高萩のところで十分にプレッシャーをかけられないシーンも多かった。「それ以外のプレー」に関しては、十分な働きができたとは言えないが、そうは言っても、2試合で3ゴールという結果は文句なしである。
■ 生まれながらのスター結局、1点目も、2点目も、カウンターから生まれているが、FW柿谷のような選手が前にいると、素早い攻撃が可能になる。ザックジャパンはセットプレーの守備が課題となっていて、例えば、FW前田に代わってFW柿谷を1トップで起用すると、さらに高さが無くなってしまうが、一方で、相手のセットプレーからのカウンターでチャンスを作る可能性は高くなるので、メリットもある。
もちろん、今回は海外組や国内の常連組が参加しておらず、「当確ランプ」が付くわけではない。「これからの競争に参加できる権利を得た。」というレベルだと思うが、『困ったときに何かしてくれそうな選手』というのは、価値がある。今大会のFW柿谷はメディアの注目を一身に集めて、やりがいとともに、大きなプレッシャーがあったと思うが、全てを跳ね除けて結果を残したことは、見事というしかない。
(自分の責任も大きかったが、)FW柿谷はいろいろな苦労をしてきた。メディアのプレッシャーにつぶされそうになった時期もあったが、2009年に徳島ヴォルティスに移籍して、いい監督といい仲間に巡り合って、再び、脚光を浴びるような選手となった。ドラマチックなサッカー人生を送っていて、人を惹きつける魅力を持った選手で、普通の選手ではないことを、一般の人にも、強く印象付ける大会となった。
日本代表の試合では、誰がゴールを決めても、(MF本田圭でも、MF香川でも、MF岡崎でも、FW前田でも、)価値は同じである。その喜びも等しく同じはずであるが、FW柿谷に関しては、苦労してきた姿をよく知っている分、プラスアルファの嬉しさがある。度重なる遅刻が原因で徳島に放出されたときは、こういう日がやってくるとは、想像することはできなかった。
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