■ 微妙なシーン3月16日(土)と17日(日)に行われたJ1の第3節は、レフェリーの判定が話題の中心となる試合がいくつかあった。まず、長居スタジアムで行われたセレッソ大阪とFC東京の試合では、アウェーのFC東京の方に不利と思われるジャッジがいくつか発生して、試合後にFC東京の選手たちが主審や副審に詰め寄るシーンがあった。結局、GK権田にイエローカードが提示されたが、後味の良くない試合となった。
また、エディオンスタジアムで行われたサンフレッチェ広島と鹿島アントラーズの試合は、前半33分の鹿島のFWダヴィのゴールと後半26分の広島のDF塩谷のゴールがオフサイドの判定で取り消されるというシーンがあった。鹿島のFWダヴィのゴールが取り消しになったシーンも微妙だったと思うが、特に、DF塩谷のゴールが取り消しになった判定が話題を集めている。
後半26分に広島がCKを獲得して相手のクリアボールを拾ったDF塩谷がグラウンダーのシュートを左隅に放ってネットを揺らしたが、ゴール前にいたDF千葉がオフサイドを取られてゴールは認められなかった。この試合は、扇谷レフェリーが試合を裁いていたが、最初は、「ゴールを認めた。」という風な感じになったが、副審との話し合いの末、オフサイドを適用して、間接フリーキックから試合が再開した。
この場面では、DF千葉がオフサイドポジションにいたかどうかと、プレーに関与しているかどうか、という2点が焦点となる。前者については、鹿島のFWダヴィが後ろの方に残っているので、「明らかにオフサイドポジションだった。」とも言い切れないが、映像を見る限りでは、DF千葉はオフサイドポジションにいた可能性の方が高いと言える。
よって、プレーに関与したのか、否かが焦点となるが、判断は難しい。広島のサポーターは、「関与していない。」と主張するだろうし、鹿島のサポーターは、「関与している。」と主張すると思うが、逆の立場であれば、その反対のことを言うと思うので、どちらの主張にも、それなりの根拠はあるが、「絶対にそうだ。」とは言い切れず、扇谷レフェリーは難しいシーンに直面することになった。
■ 関与があったのか?どうなのか?このシーンもCKの流れだったが、セットプレー崩れで、ゴール前に選手が密集しているときに遠目からシュートを放って、「何人かの選手の間をすり抜けてグラウンダーのシュートが決まる。」というシーンは、しばしば見られる。もちろん、オフサイドポジションに選手がいなければ問題は無いが、攻撃側の選手がオフサイドポジションに残っているケースは多々ある。
当然、関与しているかどうかがポイントになるが、個人的な印象では、日本でも、海外でも、少々の関与であれば、オフサイドは取らずにゴールを認めるケースが多いと感じる。ただ、もちろん、しっかりとオフサイドを取るケースもある。「関与」という言葉は曖昧で、個人の主観に大きく左右されるので、関与しているかどうかの判断というのは、レフェリーにとって、一番、難しいものではないかと思う。
この試合はライブで観ていて、シュートが決まった瞬間は、「オフサイドで取り消しになる。」と思ったが、リプレーを見ると、DF千葉の動きによって、GK曽ヶ端が影響を受けたとは感じられなかった。DF塩谷のシュートは左隅のいいコースに飛んでいて、DF千葉がゴール前にいても、いなくても、どちらにせよ、「GK曽ヶ端はセーブできなかった。」という考え方もできる。
したがって、ゴールを認めたとしても、認めなかったとしても、どちらの場合でも、間違いではないと思うが、シュートが決まったすぐ後に、GK曽ヶ端がレフェリーにアピールをしたのは、良かったと思う。GK曽ヶ端の咄嗟のアピールによって、「関与した」というイメージを少なからずレフェリーの頭に刷り込むことができたので、GK曽ヶ端のファインプレーだったとも言える。
■ 「どちらとも取れる」サッカーに限った話ではなくて、どのスポーツでも同じだと思うが、「どちらとも取れる」というレフェリー泣かせのシーンは、それなりの頻度で発生する。こういう時は、レフェリーの判断を素直に受け入れるしかないと思うが、不利益を被ったチームがレフェリーを一方的に責めて、「誤審ではないか?」と騒ぎ立てることもある。これは、フェアではないと感じる。
今回の試合では、そういうことはなかったが、「どちらとも取れる判定」と「誤審」をごちゃ混ぜにするのも、好ましいことではない。レフェリーの質の問題にすり替えようとする人もいるが、これもフェアとは言えないし、もっと言うと、問題の本質を捉えることができておらず、「サッカーをよく分かっていない人」と言われても、仕方がない。
いずれにしても、扇谷レフェリーは、難しい局面に出くわして、アンラッキーな一日となったが、ノーゴールという判定が下された後、広島の選手が執拗に抗議することなく、冷静にプレーを続けたことは、好感が持てる。1点を争う展開でヒートアップしてもおかしくない場面だったが、取り乱すことはなかった。広島はクリーンなチームとして知られているが、広島というチームに対する好感度が少しアップした。
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