■ 第41節J2の第41節。19勝15敗6分けで勝ち点「63」の東京ヴェルディと、20勝13敗7分けで勝ち点「67」の横浜FCが味の素スタジアムで対戦した。J2の昇格争いは、2位の京都が勝ち点「70」、3位の湘南が勝ち点「69」、4位の大分と5位の横浜FCが勝ち点「67」、6位の千葉が勝ち点「66」、7位の東京Vが勝ち点「63」となっている。
2位になると自動昇格で、3位から6位になるとプレーオフに進むことができるが、13:00キックオフの試合で、40節を終了した時点ではプレーオフ進出の可能性をわずかに残していた8位の山形と9位の栃木SCが敗れたため、昇格争いは、試合開始の時点で7位の東京Vまでに絞られた。
ホームの東京Vは「4-2-2-2」。GK土肥。DF森、土屋、深津、高橋。MF柴崎、和田、西、梶川。FW中島、阿部。39節の栃木SC戦でハットトリックを決めたFW中島は6試合で4ゴールを挙げている。エースのFW阿部は38試合に出場して18ゴールを挙げている。MF中後、MF飯尾、FW木島らがベンチスタートとなった。
対するアウェーの横浜FCは「4-2-2-2」。GKシュナイダー潤之介。DF井手口、ペ・スンジン、堀之内、阿部。MF高地、寺田、武岡、野崎。FWカイオ、大久保。2トップの一角のFWカイオは23試合で9ゴールを挙げている。45歳のFW三浦知はフットサルの日本代表としてW杯に参加しているので欠場となった。
■ 1対0で横浜FCが勝利!!!試合はアウェーの横浜FCが優勢となる。東京Vも前半20分にFW中島が相手のクリアミスから決定機を迎えるが、東京Vのチャンスはこのシーンくらいで、逆に、横浜FCは、FW大久保、FWカイオ、MF野崎が、一度ずつ、決定機を迎える。前半は0対0だったが、アウェーの横浜FCが試合の主導権を握った状態で折り返す。
後半開始から横浜FCはFW大久保に代えて元日本代表でドリブラーのFW永井を投入。ベテランのFW永井はなかなかチャンスに絡めなかったが、前半と同様に、横浜FCが惜しいシーンをいくつか作って、東京Vのゴールを脅かす。一方の東京Vは、同じ時間にキックオフとなった6位の千葉が「2対0でリードしている。」という途中経過が入っていたので、「引き分けでもダメ」という状況だったが、ペースが上がらない。
先制ゴールが生まれたのは後半33分で、横浜FCが右サイドでフリーキックを得ると、MF高地の蹴ったボールを途中出場のFW田原が合わせて、横浜FCがリードを奪う。FW田原は今シーズン7ゴール目となった。結局、試合は1対0で横浜FCが勝利して「5位」をキープし、東京Vはプレーオフ進出の可能性が消滅した。
■ FW田原が決勝点大詰めを迎えたJ2は、41節の試合で、2位の京都、3位の湘南、4位の大分、5位の横浜FC、6位の千葉が揃って勝ち点「3」を獲得したので、7位以下のチームのプレーオフ進出の可能性が完全に消滅した。数節前までは、12位あたりのチームまでプレーオフ進出のチャンスがあって、最後までもつれるかと思ったが、プレーオフ争いは、最終節を待たずに顔ぶれは決まった。
アウェーの東京V戦ということで、難しい試合になることが予想されたが、序盤から横浜FCのペースとなった。セットプレーを中心に何度もチャンスがあったので、もっと楽な展開にすることもできたが、シュートが枠に飛ばずに苦労したが、途中出場のFW田原が勝負強さを発揮して、大きな先制ゴールを奪った。後半開始からFW大久保にFW永井を投入した采配はあまり成功しなかったが、もう1枚、FW田原というカードを持っていた層の厚さが大一番を制する要因となった。
点が欲しいときにパワープレーを仕掛けることが果たして有効なのか、否かについては、いろいろな意見があると思われる。特に、高さが不足している日本代表が、ビハインドのときにロングボール中心で攻撃することを、他国の人は、「効果的ではないのでは?」、「なぜ、そういうことをするのか?」と否定的に感じるというが、Jリーグでは、拮抗した展開のとき、高さのある選手が試合を決めるケースが多い。
このシーンでは、MF高地のボールも精度が高くて、FW田原の高さとバネが最大限に生きる空間にボールを蹴ることができたのが大きかったが、FW田原も期待に応えて、豪快にヘディングで合わせた。最初はクロスバーに直撃したが、跳ね返ったボールが東京VのGK土肥に当たってゴール方向に転がって、運は横浜FCに味方した。
■ 交代策はヒットせず・・・一方の東京Vは、7位以下が確定して、4年連続でJ1昇格に失敗して、2013年もJ2で戦うことが決まった。「千葉がリードしている。」という途中経過が入っており、負けはもちろんのこと、引き分けでも、7位以下が確定する状況だったので、もう少し早いタイミングで動いても良かったと思うが、最初の交代が後半20分で、次の交代が後半28分ということで、高橋監督の動きは鈍かった。
優勢だった横浜FCの山口監督が後半開始からFW永井を投入して勝負に出た積極的な姿勢とは対照的だったが、FW田原、FW永井、MF内田、MF中里といろいろなタイプの選手がベンチに控えていた横浜FCとは違って、東京Vの方は、攻撃的なカードというと、MF飯尾、MF前田、FW木島と1.5列目や2列目で生きる選手しか用意できなかった。
後半20分に投入されたMF飯尾は精力的に動いてチャンスを作っていたので、パフォーマンスは悪くはなかったが、途中交代となったFW中島とMF梶川の2人は、相手の脅威になるような働きを見せていたので、「なぜ、下げてしまったのか?」と感じる交代であり、手持ちのカードが豊富ではなかったことを考慮しても、高橋監督の交代策はさえなかった。
結局、最終的には、横浜FCのFW田原が大仕事をしたが、東京Vには、ゴール前で高さを発揮できる選手はいなかった。東京Vのサッカーはショートパスとドリブルを多用するサッカーではあるが、ゴール前で勝負できる選手がいないと、攻撃にバリエーションが出てこない。夏の移籍市場でロンドン五輪代表のFW杉本が退団したのは仕方がないが、代役になるはずだったFW巻、FWジミー・フランサ、FWアレックスらが、怪我もあって戦力にならなかったのは、痛かった。
■ J1昇格の可能性は消滅これで東京VはJ1昇格の可能性がなくなった。もちろん、プレーオフに進んだとしても、昇格できる可能性は1/4程度なので、自動昇格となる2位以内にならないと苦しいのは明らかであるが、J2では上位クラスの戦力を考えると、「6位以内にも入れなかった。」というのは、大きな誤算であり、批判されても仕方がない。
痛恨だったのは、川勝監督が交代となったことである。急な交代だったので、同情の余地はあるが、高橋監督になってからは、9試合で2勝3敗4分けという成績で、勝ち点「10」しか奪えていない。ライバルチームも、勝ち点を取りこぼすケースが目立ったので、プレーオフ争いには残っていたが、ラストの9試合でこの成績では、生き残るのは難しい。
東京Vは2009年にクラブ経営が危機的な状況に陥ったが、何とか持ちこたえると、2010年と2011年は川勝監督がベテランと若手をうまくミックスさせて、2010年も2011年も5位という順位でシーズンを終えた。ともにスタートダッシュに失敗して、J1昇格に届かなかったが、限られた資金の中で、まずまずの結果を残したことは評価されるべきであり、川勝監督の功績は大きかった。
J1昇格を逃して、高橋監督の去就がどうなるのか、分からないが、今の東京Vを引っ張っていくには、指導者にもエネルギーが必要であり、そういう意味では、川勝監督は適任者に思えたので、来シーズン以降、どうなるのか、不安は大きい。FW阿部、DF高橋など、有望な選手も多いので、厳しいオフになりそうである。
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