■ 第6節J2の第6節。2勝3敗で13位の町田ゼルビアが、3勝1敗1分けで4位の東京ヴェルディと対戦した。ゼルビアのホームの町田市と、東京Vが拠点にしている稲城市は隣の街で、このカードは「東京クラシック」と命名されて、切磋琢磨していくことになった。
ホームの町田は「4-2-2-2」。GK相澤。DF三鬼、太田、津田、藤田。MF下田、柳崎、庄司、鈴木。FW勝又、平本。東京Vのユースで育ったFW平本がスタメン出場。2トップを組むFW勝又とFW平本はともに2ゴールを挙げている。元アルゼンチン代表のオズワルド・アルディレス監督は2003年から2005年まで東京Vの監督を務めた。U-23日本代表候補のDF薗田、元日本代表のMF戸田は欠場となった。
対するアウェーの東京Vは「4-2-2-2」。GK柴崎。DF高橋、土屋、深津、和田。MF梶川、小林祐、小池、西。FW飯尾、阿部。C大阪からレンタル移籍のFW杉本健がさっそくベンチ入り。2012年3月28日から2012年7月17日までの短期レンタルとなる。元日本代表のFW巻が怪我で長期離脱中のため、その穴を埋める活躍が期待されている。FWジョジマールはベンチスタートとなった。
■ ヴェルディが勝利試合の前半はホームの町田のペースとなる。専修大出身でルーキーのMF庄司を中心としたポゼッションサッカーで、試合を優位に進めていく。一方の東京Vは、機動力のある選手を前に並べて、運動量でかき回そうとするが、FW阿部やFW飯尾のところまでボールが渡らずにシュートシーンを作れない。前半に東京Vが放ったシュートは、わずか2本だけで、町田が優勢で前半を終了する。
後半開始から東京Vは、FW飯尾に代えてFW杉本健を投入。FW杉本健とFW阿部の2トップに変更すると、後半1分にさっそく効果を発揮する。DF土屋がヘディングで前方に送ったボールにFW杉本健が絡んで、裏のスペースにボールが流れると、FW阿部がダイレクトで右足を振り抜いて、鮮やかにネットを揺らしてアウェーの東京Vが先制する。エースのFW阿部は今シーズン3ゴール目となった。
しかし、後半20分にホームの町田が同点に追いつく。DF太田がインターセプトからドリブルで前に運んで、MF北井にスルーパスを送ると、MF北井が右足でミドルシュートを決めて試合をイーブンに戻す。後半3分に投入されたMF北井はワンテンポ早いタイミングでシュートを放ったので、GK柴崎は反応できなかった。MF北井は今シーズン2ゴール目となった。
追いつかれた東京Vは、後半22分にボランチのMF梶川に代えてFWジョジマールを投入。攻撃的な交代を行って圧力をかけると、後半32分に左サイドのコーナーキックからFW杉本健がヘディングシュートを決めて2対1と勝ち越しに成功する。FW杉本健は東京Vでのデビュー戦でゴールを記録した。その後、東京Vは、何度も決定機を迎えたが決められず。追加点こそ挙げられなかったが、東京Vが2対1で勝利して、初開催の東京クラシックを制した。
■ FW杉本が決勝ゴール東京Vは後半開始から登場したFW杉本健が流れを変えた。前半は、川勝監督が「眠っていた。」と表現した通り、ホームの町田に試合を支配されて、ほとんどチャンスを作れなかった。東京Vというと、ボールをポゼッションしてテンポよくパスを回してチャンスを作っていくチームだが、前半45分は、町田の方にそういうサッカーをされて、ストレスのたまる前半となった。
川勝監督も、前半途中にFW飯尾とMF西のポジションを変えるなど策を打ったが、試合のリズムを変えることはできず、後半開始から、チームに加入したばかりのFW杉本健をピッチに送り出したが、抜群のキープ力と高さを駆使して、停滞していたムードを一気に変えてしまった。勝ち越しのヘディングシュートの見事さは言うまでもないが、FW阿部の先制ゴールもFW杉本健が相手DFと競ってつぶれたところから始まっていて、ゴールシーンの後も、FWジョジマールが再三の決定機に決められなかったのでアシストは記録できなかったが、パスでも、2度・3度と決定機を演出した。
FW杉本健は、プラチナ世代を代表するフォワードとして、将来を嘱望されている大型ストライカーであるが、これ以上ないデビュー戦となった。FW杉本健は、高さもあって、体の幅もあって、足元の技術も備わっているので、1トップの選手としては、これ以上ないほどの素材なので、東京Vでいい経験を積んでほしいところだが、ポテンシャルの高さを見せつけて、初戦でチームメイトやサポーターの信頼を得ることができた。この試合に関しては、出来過ぎのところもあるので、その反動は心配されるが、新天地でいいスタートを切ったといえる。
■ ロンドン五輪を目指すFW杉本健は、C大阪のユース出身で、昨シーズンの終盤は、1トップでスタメン起用されることも多くて、クルピ前監督も期待をかけていたが、オフに実績のあるストライカーのFWケンペスを獲得したので、今シーズンは、出番に恵まれていなかった。C大阪は1トップを採用していて、序列としては、FWケンペス、FW播戸、FW杉本健、FW永井龍という感じになっているので、C大阪に残っていても出番はあったと思うが、「ロンドン五輪出場」という大きな目標もあるので、今回、思い切った決断をして、レンタル移籍という道を選んだ。
18歳、19歳、20歳あたりの選手の出場機会をどう増やしていくかは、日本でも課題となっているが、こういう移籍は、今後、増えていくと思われるし、また、増やしていく必要がある。日本でも、戦力として計算できない選手をレンタルで出すケースは増えてきたが、FW杉本健の場合、C大阪で立派な戦力になっているので、そういうケースとは違っている。
高さがあって、途中出場でも有効なカードとなるので、今後、「FW杉本健がいれば・・・。」という試合が何試合か出てくるだろう。仮に、FWケンペスが怪我をしたら、FW播戸とFW永井龍しかいなくなるので、C大阪にとってもリスクを伴う決断である。しかしながら、将来のことを考えると、この時期に出場機会を得ることは重要で、いい決断だったように思う。
■ ポゼッションで上回ったゼルビア一方の町田は、前半は完全に試合の主導権を握って、東京Vのお株を奪うパスサッカーを見せたが、攻めきれなかった。先制できていれば、全く違った試合展開になっていたと思うが、後半開始早々にゴールを奪われると、その後は、途中出場のFW杉本健の高さと強さに全く対抗できなかった。怪我人も出ていて、最終ラインを入れ替えてきたので、前半から不安定なところはあったが、後半は不安定さを突かれてしまった。
これで、2勝4敗となったが、1年目としては悪くない成績である。興味深いのは、ボールを大切に扱うサッカーをしている点で、効率重視のサッカーを見せるチームが多くなった中で、異色の存在となっている。パスサッカーの中心になっているのは、ルーキーのMF庄司で、彼が試合をコントロールしてパスを回しているが、前半は、ポゼッション力でも東京Vを上回った。
ただ、フィニッシュにはつなげられなかった。町田にはFW平本とFW勝又という突破力ではJ2屈指のフォワードがいるので、彼らがいい形でボールを持つことができれば、チャンスを作ることができるが、彼らを生かすためのパス回しはできておらず、前線で孤立するシーンも目立つ。手っ取り早く勝ち点を稼ごうとするならば、引き気味でショートカウンターを仕掛けた方が、2トップの突破力も生きてくるので、効率的だと思うが、アルディレス監督はそういうサッカーは目指しておらず、中盤できちんとパスをつないで、チーム全体で崩そうとしている。
したがって、かなりレベルの高いことを選手に求めているが、もっとパスサッカーが成熟してくれば、FW平本とFW勝又の突破力が生きるシーンを、自分たちでクリエートできるようになるだろう。それには、ルーキーのMF庄司の成長が不可欠だが、チームとして成熟してきて、完成形に近づいてきたら、面白いサッカーになるのではないか。J2の1年目からJFLに降格となる可能性もあるので、大変なシーズンだが、思い切ってチャレンジして、リーグをかき回してほしいところである。
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