■ 準々決勝の2試合目FIFAクラブW杯の準々決勝の2試合目。開催国代表として参加しているJリーグ王者の柏レイソルが、北中米代表のモンテレイと対戦した。柏は12月8日(木)に行われたオープニングゲームで、オセアニア代表のオークランドシティを「2対0」で下して、準々決勝に進んできた。この試合に勝利したチームは、準決勝で南米代表のサントスと対戦することが決まっている。
中2日での試合となる柏は「4-2-2-2」。GK菅野。DF酒井、増嶋、近藤、橋本。MF栗澤、大谷、レアンドロ・ドミンゲス、ジョルジ・ワグネル。FW田中順、工藤。オークランドシティ戦で負傷交代したDF酒井も大事には至らなかった模様で、右SBでスタメン出場。ボランチはMF茨田が外れてMF栗澤がスタメン出場。2トップのFW田中順とFW工藤はともに初戦でゴールを決めている。
一方のモンテレイは「4-3-3」。GKオロスコ。DFオソリオ、チャベス、バサンタ、ミエル。MF L・ペレス、サバラ、カルドーソ。FWサンターナ、デルガド、スアソ。チリ代表のエースストライカーであるFWスアソが要警戒の選手といえる。
■ レイソルがPK戦を制する試合の序盤はモンテレイのペースとなる。柏の右SBのDF酒井の裏のスペースを突いてきて、モンテレイは左サイドからチャンスを作っていく。一方の柏は、MFレアンドロ・ドミンゲスが激しいマークにあって、自由にプレーすることができずに、いい形を作れない。それでも、前半終了間際には、オーバーラップしたDF酒井のクロスからファーサイドのFW田中順がフリーでヘディングシュートを放つが、サイドネット直撃でゴールならず。前半は「0対0」で終了する。
前半は劣勢となった柏だったが、後半8分に先制ゴールを奪う。MFレアンドロ・ドミンゲスが前を向いてドリブルで仕掛けて、こぼれたボールをFW田中順がフォローして右サイドからクロスを入れると、ゴール前に入っていたMFレアンドロ・ドミンゲスがボレーで合わせて先制ゴールを奪う。しかし、モンテレイも後半13分に素早い攻撃から右サイドを崩すと、FWデルガドのクロスをFWスアソが合わせて同点に追いつく。試合は「1対1」のままで進んで、後半終了間際に、柏のMFレアンドロ・ドミンゲスが個人技から相手DFをかわして決定機を迎えるが、シュートはヒットせず。1対1のままで、15分ハーフの延長戦に突入する。
延長戦は柏のペースとなる。モンテレイのプレッシャーが緩んできて、柏のボール支配率が上がってくる。しかし、2点目のゴールは奪えずPK戦に突入するが、そこで活躍したのが柏のGK菅野で、最初のキッカーをファインセーブで止めて流れを飛び込むと、最後はFW林が左足で豪快に決めて柏が「4対3」で勝利。12月14日(水)に決勝進出をかけて、南米王者のサントスと対戦することになった。
■ アジアの2チームが4強入りPK戦を制した柏は、2007年の浦和、2008年のG大阪に次いで、日本のクラブとしては3チーム目となる「ベスト4」を決めた。準々決勝の1試合目は、カタールのアルサッド(アジア代表)がエスぺランス(アフリカ代表)を2対1で下しているので、「ベスト4」にアジアのチームが2チームも入ることになった。
2005年にスタートしたクラブW杯は、今大会で7回目となるが、南米と欧州が圧倒的に有利な状況は変わっておらず、過去の6大会で、欧州代表と南米代表以外のチームが決勝に進んだのは、2010年大会のマゼンベ(アフリカ代表)だけなので、他の地域との差はまだまだ大きいと言わざる得ないが、レギュレーションも欧州代表と南米代表が有利になっていて、バルセロナやサントスは、2試合に勝利しただけで大会優勝となる。
柏が優勝するには、4試合に勝利する必要があるので大きな差があるが、こういう不公平感をなくしていくには、アジア、アフリカ、北中米の代表の活躍は不可欠である。アルサッドの対戦相手がバルセロナで、柏の対戦相手がサントスなので、両チームとも非常に厳しい相手が待っているが、健闘を期待したところである。
■ モンテレイのサッカー近年、日本でも「海外サッカー」の人気が高まっているが、「海外」といっても、それはイコール「欧州サッカー」となるので、それ以外の地域の情報というと、南米を除いてほとんど入ってこないのが現状である。したがって、北中米やアフリカなどに、どんなクラブチームがあって、どのくらいの強さなのかについて、把握することのは難しく、『モンテレイ』と聞いても、カペロマンくんをイメージするくらいしかできなかったが、実際に柏が対戦しているところを観ると、力関係も含めてイメージも膨らんでくる。
しばしば、「メキシコのサッカー」と「日本のサッカー」は似ていると言われるが、確かに、モンテレイのサッカーと柏のサッカーは似た系統で、両チームのサッカーがうまく噛み合ったので、この試合も熱戦とになった。体格に関してもそれほど大きな差は見られず、柏もセットプレーでチャンスを作ることができていたので、柏が上回っているところもたくさんあった。ただ、テクニックについてはモンテレイはかなり水準で、球際の強さもJリーグとは一味違っていた。
クラブW杯には、まだまだ、改善すべき点がたくさんあると思うが、「いろいろなサッカーを観ることができるようになった。」という点は大きなプラスであり、他の地域の強豪クラブのサッカーを観ることで、日本あるいはアジアのクラブチームの優れているところも、改めて確認することもできる。今後、ますます発展していくことを期待したい。
■ 大黒柱が先制ゴール柏は、MFレアンドロ・ドミンゲスは別格のプレーを見せた。初戦のオークランド戦は、コンディションが悪かったのか、彼らしいプレーがほとんどできなかったが、この試合は「さすが」というプレーを連発した。序盤こそ、相手のハードマークに苦しんでイライラが募っていたが、前半の途中から気持ちを切り替えて、リズムを取り戻した。
圧巻だったのは、先制ゴールのシーンで、クロスボールを優しいボールではなかったので、大きく枠を外す可能性の高いシュートだったが、うまくかぶせてネットを揺らした。その後も、ドリブルで突破したり、ミドルパスでチャンスを作ったりと、一人だけ、異次元のプレーを続けた。決して派手でトリッキーなプレーを連発するわけではないが、基本に忠実で、技術もしっかりしているので、多くのチャンスに絡むことができる。相手をブロックするのも上手で、日本人のアタッカーのいいお手本となる選手である。
準決勝はブラジルのサントスとの試合となるが、MFレアンドロ・ドミンゲスにとっては、母国の名門クラブとの対戦となるのでモチベーションも高くなると思われるが、これだけ活躍されると、引き抜きに合わないかが、心配になってくる。ベテランのような風格をもつので誤解されがちであるが、1983年8月生まれなので28歳とまだ若くて、欧州のクラブから獲得の申し出があってもおかしくない。彼ならば、どこのクラブでも中心的な存在となってプレーできると思うので、欧州の主要リーグでプレーしているところを観てみたい気もするが、抜けるとなると、柏にとっても、日本サッカーにとっても、かなりの損失になるので、避けたいところである。
■ いぶし銀のMF大谷MFレアンドロ・ドミンゲス以外では、ボランチのMF大谷が120分を通して目立っていた。この試合は、MF栗澤とダブルボランチを組んだが、中盤の低い位置でルーズボールを拾いまくって「セカンドチャンス」につなげた。また、相手ボールをのときも、抜かれると大ピンチになりそうなところでも、体を張って確実にストップさせて、ピンチを防いだ。
今シーズンの柏が躍進した理由として、「ダブルボランチの貢献度」の高さを挙げる人は多いが、本当に、MF大谷とMF栗澤のボランチは安定している。MF茨田が入ると、ちょっと雰囲気は変わってくるが、基本的には、柏のボランチはバランスを取ることが仕事で、ゴール前に顔を出すシーンはほとんどないが、ボランチが安定しているので、それ以外のポジションの選手は安心して攻撃に参加することができる。MF大谷を見ていると「ボランチ」というよりは、「守備的MF」という古い言葉で表現したくなるが、こういうタイプの選手は少なくなっているので、大きな舞台で輝いているところを見ると嬉しくなるし、同タイプの選手の励みにもなるだろう。
攻撃陣では、2トップの動きの良さも目立った。MF工藤はゴールには絡めなかったが、前半から運動量が豊富で、いいところに顔を出して攻撃のリズムを作っていた。一方、アシストを記録したFW田中順は、モンテレイの選手にも当たり負けすることなく、前線で起点になっていた。今夏に日本代表にも召集されているが、ザッケローニ監督にもポジティブな印象を与えたのではないだろうか。
■ 次はサントス戦これで、次はサントスとの対戦となる。サントスは、先日、来日したばかりで、時差等の問題があるが、柏は過密日程で体力的なハンディがある。「個の力」では、歯が立たないと思われるが、この試合で見せたような粘り強い戦いが出来れば、バルセロナを相手にするよりは、勝つチャンスはあるだろう。サントスの選手の体が温まってエンジンがかかるまでに試合の流れをつかんで、サントスを慌てさせたいところである。
豊田スタジアムでの試合となるので、観客の入りは芳しくないが、テレビ視聴率等は上がってきており、Jリーグのクラブでも、これだけできるのだということを、日本や世界の人に伝えることができている。これは、非常に大きなことで、「柏レイソル」という名前も多方面にアピールできているので、この勢いで、準決勝もいい試合を見せてくれることを期待したい。ノーチャンスではないと思う。
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