■ ロンドン五輪予選ロンドン五輪のアジア最終予選の2試合目。初戦でU-22マレーシア代表に「2対0」で勝利したU-22日本代表は、アウェーでU-22バーレーン代表と対戦した。グループCは、日本、シリア、バーレーン、マレーシアの4チームで構成されており、初戦は、日本とシリアがホームで勝利し、勝ち点「3」を獲得している。
日本は「4-2-3-1」。GK権田。DF酒井宏、鈴木、濱田、比嘉。MF山本康、扇原、東、山田直、大津。FW大迫。W杯予選のタジキスタン戦、北朝鮮戦のメンバーに招集されたMF清武、MF原口はメンバー外で、キャプテンのMF山村も怪我のため欠場。磐田のMF山崎も怪我でベンチ外となったので、ボルシアMGのMF大津がスタメンに抜擢された。名古屋のFW永井、新潟のDF酒井高はベンチスタートとなった。
■ 連勝スタート試合の立ち上がりはバーレーンのペースとなって、日本は劣勢となる。芝の問題もあってボールが回らず、なかなかリズムをつかめなかった日本だったが、前半15分あたりを過ぎると、ようやくパスも回りはじめて、チャンスを作るようになる。バーレーンは「4-1-4-1」の布陣で、MF山本康とMF扇原のところにはプレッシャーがかかっていたが、ボランチのところでボールを失わず、縦にボールを入れることができればチャンスにつながりそうな雰囲気があったので、打開策も見えてきて、日本も攻撃の形を作り始める。
前線は、FW大迫を頂点にして、MF山田直、MF大津、MF東が絡んでくる形で、ほとんど初の組み合わせにしてはコンビネーションもまずまずで、サイド攻撃を行って、コーナーキックを得るシーンが増えていく。しかし、何度もあったコーナーキックを生かせずに、「0対0」で折り返すのかと思われたが、前半終了間際に先制ゴールが生まれる。右サイドのCKを獲得すると、MF扇原が左足でファーに蹴ったボールをMF大津が押し込んで先制。前半は「1対0」と日本がリードして折り返す。
後半の立ち上がりは、またしても、バーレーンが前掛かりとなって、攻め込まれるシーンが続く。流れが悪くなりかけた日本は、後半7分という早い段階で、MF山本康に代えてMF山口蛍を投入。ボランチを入れ替えて修正を図る。ファールも増えてきて、後半はリズムを失いかけていた日本だったが、後半22分に追加点のゴールを挙げる。
左サイドでボールを受けたMF扇原がゴール前にクロスを入れると、MF東とMF山田直が絡んで、MF山田直がシュートを放つ。これはGKがはじくが、こぼれたボールをMF東が押し込んで大きな2点目を挙げる。その後、バーレーンにラフプレーが増えてきて、後半35分にMFアブドアヘリがMF山田直に対するラフプレーで退場。バーレーンは10人となる。楽な展開となった日本は、途中出場のMF永井らが、カウンターからチャンスを迎えるが、3点目は奪えず。しかしながら、「2対0」で逃げ切って勝ち点「3」を獲得。2連勝と好スタートを切った。
■ アウェーで貴重な勝ち点「3」バーレーン代表というと、2004年に行われたアテネ五輪の最終予選でも対戦したが、このときは、埼玉スタジアムで「0対1」で敗れている。その後も、バーレーンには、苦戦することが多かったので、この試合も同様に、「難しい試合」になるかと思ったが、そこまで苦労はしなかった。
バーレーンのストロングポイントは、「フィジカルの強い選手が多い点」と、「センターバックが強力である点」で、これまでは、日本が攻めながらもゴールに結び付けられず、焦れたところで「カウンター」や「セットプレー」でピンチを招くというパターンが多かった。よって、「セットプレー」が怖かったが、幸いにして、この日のバーレーンの「セットプレー」は、あまり怖さを感じなかった。レフェリーがバーレーン寄りだったので、接触プレーがあると日本のファールを積極的に取っていたので、セットプレーのシーンこそ多かったが、シュートにつながったシーンはほとんどなかった。
バーレーンが、「クイックリスタート」を多用していたことも、日本には「プラス」に働いた。中東のチームと対戦するときは、必要以上に痛がって倒れたり、リスタートのときに時間を使ったり、日本のリズムを崩そうといろいろな手を打ってくるが、この日のバーレーンは「ノーマル」に戦ってきたので、戦いにくさは感じなかった。3月14日にはホームで対戦する予定で、予選のラストゲームとなるが、勝ち点「3」を得るのは難しくないだろう。
■ 成長を感じた関塚ジャパンU-22日本代表のアウェー戦というと、6月にクウェートと対戦した試合が印象に残っている。この試合は、DF酒井宏のゴールで、前半に日本が先制したが、後半に逆転負けを喫した。H&Aの初戦で「3対1」で勝利していたので、大きなアドバンテージを持っていたが、後半に相手の波に飲み込まれて、全く自分たちのサッカーが出来なかった。このときは、「暑さ」という敵もあったので、条件は全く違うが、6月のクウェート戦の教訓を選手たちも生かしており、落ち着いて戦うことができた。
このチームには、リーダー・タイプの選手がいないこともあって、劣勢になったときに立て直すことができないという弱点がある。しかも、今回は、キャプテンのMF山村も不在で、A代表組もいないということで、「引き分けでもOK」というシチュエーションでの試合だったが、流れが悪くなりかけたときにも、「パニック」にならずに、したたかに戦うことができていた。
センターラインで軸となるべき選手が、所属クラブでポジションをつかんだことも大きいだろう。チームの立ち上げ当初から、「ボランチ」と「センターバック」がウイークポイントと言われてきたが、C大阪のMF扇原と、浦和のDF濱田の二人が、最近になって所属クラブでレギュラーに定着し、新潟のDF鈴木も、クラブでディフェンスラインの中心になってきた。このポジションで試合に出ている選手が少なかったので、試合経験の無さを露呈することがあったが、彼らがクラブでも試合経験を積んで、五輪代表にもフィードバックできているのが大きい。
■ MF大津が先制ゴールこういう展開になったので、前半終了間際に挙げたMF大津の先制ゴールが大きかった。前半20分過ぎから、コーナーキックの数が増えていたが、キックの精度もイマ一つで、中央の選手に合うシーンが無くて、を生かし切れていなかったが、このシーンでは、キッカーのMF扇原が際どいところにボールを蹴って、相手キーパーを誘き出して、その裏に入ってきたMF大津がうまく合わせてネットを揺らした。
今回のチームは、MF清武とMF原口が不在で、スタメン起用が濃厚と思われたMF山崎も負傷してベンチを外れることになったので、2列目が不足気味だったが、MF大津、MF東、MF山田直の3人が、ともにゴールに絡んで、MF清武やMF原口の不在の影響をあまり感じさせなかった。
MF大津は、合流してから2日しか経っていないということで、他の選手と比べるとハンディもあったが、調子はよさそうで、ドリブルのキレもあった。ボルシアMGでは、なかなか出番が回って来ずに、やや苦労しているが、いい経験を積むことはできているようで、ボールを持っても慌てずにプレーすることができていた。「左サイド」のポジションは、U-22日本代表では「最大の激戦区」になっていて、現状は、MF山崎とMF原口の優先度が高くなっているが、MF大津も違った魅力を持つので、ポジション争いに絡んでくると面白くなる。
■ MF扇原貴宏 2ゴールに絡むこの試合の2つのゴールは、ともに、C大阪のMF扇原の左足が起点となった。ボランチは、FC東京のMF米本が長期離脱中で、不動の存在だったキャプテンのMF山村も欠場となったので、層の薄いポジションとなっているが、ここに来て、MF扇原が台頭してきて「ボランチの軸」になりつつある。序盤こそ、パススピードの出にくい芝の状態だったこともあって、MF扇原のパスが緩くなって「危ない奪われ方」をするシーンもあったが、時間が経つにつれて、対応していった。
MF扇原は、左足の正確なパスが持ち味であるが、確実に味方につなぐだけでなく、適度に「遊びのパス」も使うことができる。「大柄」で、「レフティ」で、「ユーティリティーな選手」ということで、鹿島のDF中田浩とイメージが重なるところが多いが、DF中田浩よりも、攻撃的なセンスを備えているように思う。課題となるのは「守備力」で、まだまだ、フィジカル的な弱さを感じることが多いが、それでも、「身長」があるので、中盤のエリアでは制空権を握ることができる。
■ ダブルボランチの組み合わせボランチを組んだMF山本康とのバランスも、前半45分は、悪くなかった。ダブルボランチの選択肢として、C大阪でもコンビを組んでいるMF山口蛍とMF扇原というのもあったと思うが、関塚監督はMF山本康を起用してきた。MF山村が不在で、難しい決断だったと思うが、前半はMF山本康の出来もまずまずので、中盤でダイナミズムを生み出していた。
ただ、後半開始からMF山本康にミスが続いて、何度か中盤で危ない奪われ方をしたので、バーレーンにカウンターの機会を与えてしまった。前半のダブルボランチのバランスは良かったので、『メンバー交代をするのもリスクが高い。」と思ったが、関塚監督が素早く手を打ってMF山口蛍を投入し、試合が落ち着いた。MF山口蛍は、波が激しい選手なので、C大阪でも、試合に入りきれずに浮遊することも多く、交代で送り出すには勇気のいる選手といえるが、この試合はしっかりと試合に入って穴を作らなかった。
■ MOMはMF東最後に、この試合のMOMを選ぶと、大宮のMF東がもっともふさわしいように思う。MF清武が不在で、MF山田直がスタメンに入ったので、MF東が右サイドに回ったが、攻撃でも守備でも貢献度が高くて、質の高いプレーを続けた。バーレーンは、それほどカウンターの切れ味がなかったので、脅威になることはなかったが、それでも、中盤で変な奪われ方をすると、嫌な感じになったと思うが、MF東は軽率なミスもなく、安定したプレーを続けた。
他には、DF鈴木とDF濱田のセンターバックコンビも安定していた。セットプレーになっても、DF鈴木とDF濱田とDF酒井宏とMF扇原の4人は「高さ」があるので、確実に跳ね返すこともできていて、危ない感じはあまりしなかった。DF鈴木は、アウェーのクウェート戦では自分のミスからPKを与えて失点するなど、やや精彩を欠いたが、この試合は安定していた。DF鈴木も、昨シーズンまでは、新潟でプレー機会がほとんどなかったが、今シーズンになってレギュラーに定着し、着実に進歩している。
前述のように、センターラインの選手が経験を積んでレベルアップしてきたんで、チーム全体もレベルアップできているように感じる。シリアやバーレーンというのは、厄介な相手なので、この中でグループ首位になるのは、そんなに簡単ではないと思ったが、いい感じになってきた。ロンドンへの道筋が見えた試合となった。
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