■ 準決勝の相手はブラジルメキシコで開催されているU-17W杯に出場しているU-17日本代表は、ラウンド16でニュージーランドと対戦したが、6対0と快勝し、ベスト8進出が決定。準々決勝で「4強」をかけて、サッカー王国のブラジルと対戦することになった。
ブラジルとは、前回の2009年大会でも対戦しているが、このときは2対3で惜敗。MF高木善朗とFW杉本健勇がゴールを決めたが、終了間際に勝ち越しゴールを決められて、ブラジルから勝ち点を獲ることはできなかった。
■ 過去のブラジル戦この試合だけでなく、日本とブラジルは、FIFAの世界大会で、たびたび、対戦が実現している。
フル代表では、2005年にコンフェデレーションズカップで激突した試合が印象的である。GLの第3戦で対戦となったが、このときは2対2のドロー。試合終了間際にFW大黒のゴールで日本が追いついたものの、逆転までは至らず、グループリーグ敗退に終わった。ただ、日本代表のパスがよく回って、「ジーコジャパンのベストゲーム」とも評される試合となった。
さらに、本番のドイツW杯でも同じグループに入ったので、1年後に再戦することになったが、この試合は、ブラジル代表が自力の差を見せつけて、4対1で勝利。GLを突破するには、2点差以上で勝利する必要だった日本が、FW玉田のゴールで先制したが、FWロナウドに2ゴールを許すなど、結局、逆転負け。MF中田英寿は、この試合がラストゲームとなった。
20歳以下の世界大会(=ワールドユース)では、1995年と2003年に対戦経験がある。1995年大会は、MF中田英、MF奥らが中心で、準々決勝で顔合わせしたが、1対2で惜敗。2003年大会も同様に準々決勝での対戦となったが、1対5で大敗。キャプテンのMF今野、守護神のGK川島らが奮闘したが、力の差はいかんともしがたく、終了間際のFW平山相太のゴールで1点を返すにとどまった。
■ マイアミの奇跡ただ、「ブラジル戦」で思い出されるのは、何と言っても、1996年のアトランタ五輪の本戦である。
今でこそ、日本代表が世界大会に出場することは「当たり前」になっているが、この時点では、ワールドカップは未経験で、オリンピックに出場すること自体が28年ぶりだった。MF中田英、DF松田ら、1993年のU-17世界大会や1995年のワールドユースを経験した選手もメンバーに入っていたが、世界経験のある選手はごく一部で、多くの選手は全く世界経験がなかった。当然のことながら、当時のU-23日本代表のメンバーで、海外クラブに所属していた選手もおらず、選手も、監督も、スタッフも、手さぐりの状態といえた。
改めて、アトランタ五輪のブラジル代表のメンバーを見てみると、豪華絢爛である。2トップに入ったのは、FWサビオとFWベベトで、その後、FCバルセロナなどで活躍するFWロナウジーニョという怪物ストライカーもベンチに控えていた。中盤も世界トップレベルのタレントが揃っており、ドリブラーとして注目を集めていたMFジュニーニョ・パウリスタが中心で、左利きのMFリバウドもスタメンに名を連ねた。
DF陣も豪華メンバーで、軸となったのはベテランのDFアウダイール。彼もオーバーエイジ枠で参加していた。左サイドバックは、悪魔の左足を持つDFロベルト・カルロスで、守護神はGKジーダ。GKジーダは長らくACミランのゴールを守った。
このチームは、大会前から非常に評判も高くて「金メダルの大本命」と言われるチームだった。しかし、この「ドリーム・チーム」を相手に、日本が1対0で勝利してしまうのであるから、サッカーとは分からないものである。
■ 守り切った日本代表この歴史的な偉業を成し遂げた日本代表は「3-6-1」の布陣で、GK川口。DF鈴木秀、田中誠、松田。MF伊東、服部、遠藤、路木、前園、中田英。FW城彰二というスタメンで、ボランチにMF服部を入れたのかサプライズだった。
当時のMF服部は、左サイドのスペシャリストと考えられていて、おりボランチの経験に乏しかったが、マンマークの強さを買って、西野監督がボランチに抜擢。MFジュニーニョ・パウリスタを徹底的にマークして、MFジュニーニョ・パウリスタを消したのが、日本にとっては大きかった。
結局、この試合は後半27分にMF伊東が挙げたボールを守り切って、日本が1対0で勝利するが、ブラジルが放ったシュートは28本で、日本は4本のみ。ポゼッションでも圧倒されてしまったが、粘り強い戦いで勝利を呼び込んだ。
試合後は、スーパーセーブを連発したGK川口能活がクローズアップされたが、同じくらい勝利に貢献したのが、DF松田直樹、DF田中誠、DF鈴木秀人の3バックで、1対1の強さに定評のあるDF松田とDF鈴木秀がストッパーで、3バックの中央にDF田中誠が入るという形だったが、中でも、スイーパー的な仕事を任されて、抜群のカバーリング能力を発揮したDF田中誠の活躍は、特筆すべきものがあった。
■ 愛すべきチームこの「マイアミの奇跡」を起こした世代は、「アトランタ世代」で、世界の扉をこじ開けた世代であるが、「このチーム」や「このチームの選手」に愛着や思い入れを感じるサッカーファンは多い。
技術的に見ると、この次の時代の主役となる「黄金世代」と比べると劣っている部分も多く、MF前園真聖、FW小倉隆史ら、怪我等の理由もあって、期待されたような素晴らしいサッカー人生を送ることができなかった選手もいるが、時代を切り開いていくたくましさがあって、何かをやってくれそうな雰囲気を持った選手が多かった。
「黄金世代」は「スマートな選手」が多かったが、「アトランタ世代」は正反対で、MF前園、FW小倉、GK川口、DF松田、DF鈴木秀と、すぐに頭に血がのぼって、一触即発のムードになりそうな選手も多かった。「危うさ」や「脆さ」も感じさせるチームで、「一匹狼」的な選手も多かったが、まとまったときは力以上のものを発揮して、大舞台でも臆することなく戦えるタイプの選手も揃っていた。実に、人間味にあふれた「愛すべきチーム」でもあった。
大アップセットを演じたブラジル戦も、もう15年も前の出来事になってしまった。時が経つのは早いものであるが、それでも、この試合でスタメンだった11人のうち、GK川口(磐田)、DF田中誠(福岡)、DF松田(松本山雅)、MF伊東輝(甲府)、MF服部(鳥取)と5人もの選手が、現役として活躍し続けている。彼らには、一日でも長く、現役でプレーし続けてもらいたい。
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