■ アジア3次予選2014年に開催されるブラジルW杯のアジア3次予選の4試合目。2勝1分けの日本はアウェーでタジキスタンと対戦。グループCは、日本とウズベキスタンが2勝1分けで、北朝鮮が1勝2敗で、タジキスタンが3連敗という成績で、日本とウズベキスタンは、4節終了時点で「グループ2位以内」を決める可能性がある。
このカードは、ちょうど1ヶ月前の10月11日に長居スタジアムで対戦しているが、このときは、日本が「8対0」で圧勝している。ウズベキスタンと北朝鮮の試合は、日本戦の後にキックオフされるので、日本としては勝ち点「3」を獲得し、結果を待ちたいところである。
日本は「4-2-3-1」。GK川島。DF内田、吉田、今野、駒野。MF遠藤、長谷部、岡崎、中村憲、香川。FWハーフナー・マイク。GK西川、GK山本海、DF栗原、DF槙野、DF伊野波、DF安田、MF阿部、MF細貝、MF清武、MF原口、FW前田、FW李忠成がベンチ入り。MF本田圭、DF長友は怪我のため欠場となった。
■ 4対0で快勝試合は、立ち上がりから日本がボールを支配するが、攻めきれない展開となる。逆に、前半32分には、タジキスタンのロングシュートがポストに当たるシーンを作られてしまう。しかし、前半36分に、DF今野がインターセプトして持ち上がって起点になると、MF中村憲のシュートのこぼれ球を、ゴール前に入っていたDF今野が押し込んでようやく先制ゴールを奪う。DF今野は54試合目野出場で代表初ゴールとなった。前半は「1対0」と日本がリードして折り返す。
後半も日本がペースを握る。目立ったのは左サイドのMF香川で、運動量が豊富でタジキスタンのマークを振り払ってゴール前のシーンに絡んでいく。後半11分には、FWハーフナー・マイクに代えてFW前田を投入し、組み合わせを変えると、後半16分に追加点のゴールが生まれる。左サイドで縦に突破したMF香川が左足でクロスを上げると、ファーサイドのMF岡崎がヘディングで決めて「2対0」とリードを広げる。
さらに、後半37分には、バイタルエリアでボールを受けたFW前田が個人技から強烈なミドルシュートを突き刺して3点目を挙げる。FW前田は代表では15試合目の出場で「6ゴール」となった。そして、終了間際には、MF香川→MF清武→MF香川→MF清武→FW前田→MF清武とダイレクトでつないで、最後は、MF清武のラストパスを受けたMF岡崎が決めてダメ押しの4点目を挙げる。MF岡崎は代表通算で26ゴール目となった。結局「4対0」で日本が勝利し、4試合を終えて3勝1分け。次は、11月15日にアウェーで北朝鮮と対戦する。
■ よくないコンディションにも対応ホームで「8対0」と勝利している日本は、先制ゴールを奪うまで、少し時間がかかったが、タジキスタンの守備が改善されて、きちんと守れているわけではなかったので、点を取れそうな雰囲気は漂っていた。したがって、選手たちも慌てることなく、落ち着いて攻めることが出来ていたので、不安を覚えることもなかった。
試合前から、「良くない」と言われていた芝の状態は、確かにいいとは思えなかったが、この時期は、日本でもこういう状態になっているスタジアムがいくつかあるので、選手は慣れている。よって、大きな問題にはならなかった。FWハーフナー・マイクをスタメンで起用してきたので、もっとロングボールが増えるのかと思ったが、それほどロングボールも使わず、普段の試合とそれほど変わらなかった。
次はアウェーの北朝鮮戦で、今度は「人工芝のピッチ」になるということで、また、違った環境になるが、選手たちは「経験豊富」なので、どういうシチュエーションになっても、動揺することなく、淡々と試合に入っていくだろう。このあたりは、頼もしく感じるところである。
■ DF今野泰幸 ようやくの代表初ゴール 大きかったのは、やはり、DF今野の先制ゴールである。「いつか、先制できるだろう。」という感じはあったが、アウェーゲームなので「0対0」で終盤まで進んでいくと、何が起こるか分からないので、嫌な感じになる可能性もあったが、いいディフェンスから攻撃に参加して、貴重なゴールを奪った。
このシーンは、DF今野がインターセプトした後、そのままゴール前まで駆け上がって、こぼれ球を押し込んだが、日本は、MF長谷部とMF遠藤がダブルボランチを組んでいるので、CBが上がっていくと、守備のところが不安になるので、ザッケローニ監督になってからは、こういうシーンはあまり見られず、珍しいパターンのゴールだったが、「切り替えの早さ」と「判断力」が光った。
DF今野は、Jリーグでは、「得点力のある選手」として知られており、過去、いいところでゴールを決めているので、「代表でノーゴールだった。」というのは意外であるが、もともと、ポジショニングに優れた選手なので、セットプレーを中心にDF今野のシュートチャンスが増えていくと、チームの得点力も上がっていく。
■ MF岡崎慎司が2ゴールこの試合は、左サイドのMF遠藤、MF香川、DF駒野のところが、攻撃の中心となったので、右サイドのMF岡崎のところにボールが入るシーンは少なかった。したがって、後半の半ばまでは、消えている時間が長かったが、巡ってきた2つのビッグチャンスを確実に決めて、代表通算で26ゴール目となった。MF岡崎が日本代表に定着したのは2009年なので、3年間で「26ゴール」まで積み上げたことになる。驚異的なペースである。
自身の1点目のゴールも、2点目のゴールも、パスが最高だったので「決めるだけ」というシュートだったが、いいところにポジションを取って、チャンスボールを確実に決められるのは、MF岡崎の強みである。シュツットガルトに移籍してからは、「ドリブル」や「トラップの技術」が向上していて、海外のクラブに移ってからは技術的な部分での進歩を感じるが、「得点力」が最大の武器なので、失わずにいてほしいところである。
ザックジャパンでは、右サイドがMF岡崎で、左サイドがMF香川という配置になっているが、両サイドの選手が、これだけ「運動量豊富」に動き回ってくれると、周りも楽になる。MF中村憲、MF清武が加わってきて、2列目も争いになってきているが、MF岡崎を外すことは考えにくい。
■ MF香川は2点目をアシスト所属のドルトムントでも調子を上げてきているMF香川は、好調を維持しており、たくさんのチャンスに絡んだ。タジキスタンの守備は、2列目の選手をフリーにする傾向にあるが、その弱点をうまく突いた。ピッチの問題もあったのか、ゴール前のラストのところで「ボールコントロール」が乱れるシーンが何度かあって、自身のゴールは生まれなかったが、周りもよく見えていて、周囲を生かすプレーもできていた。
10月の代表戦のときは、コンディションも悪く、精神的にも落ち着かない状況だったので、MF香川らしいプレーは少なかったが、今はコンディションが良いので、プレッシャーの厳しいエリアでも、落ち着いてボールを受けて、次につなげることができている。
アジアカップの頃は、『左サイドでのプレーに戸惑っている』と報道されていたが、最近では、左サイドでも「違和感」はなくなってきている。相性のいいMF中村憲が「トップ下」に入ったことも好材料で、MF中村憲は、いいタイミングでパスを出してくれるので、いいリズムでプレーできている。
■ 1トップの争いは・・・ほとんどのポジションで「レギュラー」が決まってきたザックジャパンであるが、1トップのポジションだけは、熾烈なポジション争いが繰り広げられている。アジアカップではFW前田が軸になってタイトルを獲得したが、オーストラリアとの決勝戦でゴールを決めたFW李忠成もポジション争いに加わってきて、さらに、FWハーフナー・マイクも台頭してきた。よって、このポジションだけは、誰がスタメンで起用されるか、全く分からない状況であるが、この試合は、FWハーフナー・マイクが先発で、FW前田が途中出場となった。
先発起用されたFWハーフナー・マイクは、出来としては悪くはなかったが、なかなかシュートチャンスを作ることができなかった。長居での試合で「2ゴール」を決められていることもあって、タジキスタンは相当に警戒していて、相手のマークを引き付ける役割はできたが、その試合と比べると、インパクトは薄かった。2試合連続スタメンとなって「レギュラー獲り」のチャンスだっただけに、やや不完全燃焼だったといえる。
一方、途中出場したFW前田は、ピッチに入ってから、しばらくは乗り切れなかったが、強烈なミドルシュートを決めてアピールに成功すると、その後は、2列目の3人とも、うまく絡んだ。4点目のFW岡崎のゴールにも絡んでいるが、こういう周りの選手を生かすプレーは「得意」としているので、このシーンも大きなアピールとなった。現状では、この3人は、それぞれにいいところがあるものの、抜けているところもないので、「相手の状況」や「コンディション」を見極めて、臨機応変に起用していくのがベターだろう。
■ 集中して守ったCBコンビ一方、守備陣は、タジキスタンがシュートへの意識が非常に高くて、「ミドルシュート」や「ロングシュート」が多かった。その中で、何本かは、うまくミートできたシュートがあったので、「ヒヤッとするシーン」もあったが、単発の攻撃だったので、それほど「怖さ」は感じなかった。また、パスでつながれると嫌なところで、あっさりとシュートを打って外してくれたので、楽になったシーンも多かった。
攻撃では、MF岡崎、MF香川らが目立ったが、DF吉田とDF今野のセンターバックコンビのパフォーマンスは、非常に良かった。グラウンドが凸凹していたので、センターバックの二人は、気を使ったと思うが、DF吉田も、DF今野も出足が良くて、相手の起点となる選手をうまくつぶすことに成功した。
特に、先制ゴールも決めたDF今野は守備でも貢献し、MOM級の活躍だった。オーストラリアのような高さのあるチームが相手になると、178センチのDF今野では苦しくなるが、このレベルのチームが相手になると、DF今野も余裕をもって対応できるので、「1対1」になっても安心感がある。ザックジャパンになって、唯一、フル出場を続けているが、そろそろ「DF今野の代わり」となる選手も探していく必要がある。
■ パフォーマンスのよくなかったDF内田アウェーということを考えると、「4対0」というスコアは十分な結果であり、ほとんどの選手が及第点以上のパフォーマンスを見せたが、唯一、右サイドバックのDF内田のパフォーマンスは低かった。試合勘の問題なのか、コンディションの問題なのか、よく分からないが、序盤から「パスミス」が多くて、日本は、右サイドから攻撃するシーンはほとんどなかった。もともと、左サイドにMF遠藤とMF香川がいるので、日本の攻撃は「左」に偏りがちであるが、これだけ、DF内田がよくないと、その傾向に拍車がかかってしまう。
ボランチのところに、相手のプレッシャーがかかっていなかったので、MF遠藤のところにストレートにパスが入ったので、DF内田のところを経由する必要が無かったという事情もあるが、DF内田のビルドアップというのは、日本の武器の1つなので、このようなパフォーマンスでは、強い相手と戦うときは苦しくなる。
先日のホームでのタジキスタン戦は、DF内田が欠場したため、DF駒野が右サイドで出場したが、1ゴール2アシストと活躍した。そのため、その試合のDF駒野のパフォーマンスと比較されるのは仕方がないが、それと比べても、非常に物足りないものだった。このままだと、DF長友が戻ってきたら、DF駒野が右サイドに入って、DF内田が外れるという可能性も十分に考えられる。DF内田としては、次の北朝鮮戦で挽回したいところである。
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