■ 盛り上がりに欠けた出場権獲得オシム前監督の突然の離脱から急遽、日本代表の監督に抜擢された岡田武史氏。比較的、グループリーグの組み合わせに恵まれたこともあって、2試合を残してウズベキスタンの地で南アフリカ行き決定させた。
1997年のジョホールバルの戦いのようなドラマチックな展開にはならず、したがって、大きなフィーバーにもなっていない。「盛り上がりに欠けたワールドカップ出場権獲得」との報道がされているが、ワールドカップに出場することが当たり前になってしまった今の状況では、仕方のないことといえる。
実際、1993年のドーハの悲劇以降の16年間で、日本代表チームが、U-20、U-23、W杯の世界大会の切符を取り逃したことは、2008年の牧内ジャパンのただ1度しかなく、日本代表が南アフリカ行きを逃した方がニュースとしては、はるかに面白かっただろう。
■ 難しいグループリーグ突破さて、今後、ワールドカップでベスト4を目指す戦いが始まるわけであるが、現実的には誰がどう考えてもベスト4は厳しい。ベスト4どころか、グループリーグ突破もかなり難しいことは明らかである。
ここで、ここ3大会(フランス、日韓、ドイツ)を振り返ってみると、3大会全てでワールドカップのグループリーグを突破したのは、ブラジル(準優勝、優勝、ベスト8)、イタリア(ベスト8、ベスト16、優勝)、ドイツ(ベスト8、準優勝、3位)、イングランド(ベスト16、ベスト8、ベスト8)、メキシコ(ベスト16、ベスト16、ベスト16)の5チームのみ。
強豪国といわれる国でも、1998年のスペイン、2002年のフランスやアルゼンチンやポルトガル、2006年のチェコのようにグループリーグ突破に失敗した経験を持つ国は少なくない。ワールドカップ出場が当たり前になると、今度は当たり前のようにグループリーグ突破を期待するのはサポーターの1つの心理であるが、たやすいものではない。
■ その他大勢の国々の悩みベスト4(グループリーグ突破)が困難に思われる理由は、岡田監督の選手選考がどうとか、試合内容がどうとか、チーム作りがどうとか、そういう問題以前であり、日本サッカーの持つポテンシャル的な問題による。
今の日本には、「○○をチームに加えれば確実にグループリーグを突破できるだけの戦力になる。」と断言できるだけのスーパータレントはおらず、また、日本代表を確実に決勝トーナメントに導くだけの知恵と経験をもった監督を世界中から探そうとしても無駄だろう。
もちろん、それは、日本代表に限ったことではなく、ブラジルやアルゼンチン、イタリアやドイツ、イングランドやスペインといった超大国を除く、その他大勢の国の代表チームに共通する悩ましい事情である。
■ オーソドックスなサッカーここまでの戦い方を振り返ってみると、第二次岡田ジャパンが見せているサッカーは非常にオーソドックスなサッカーであるといえる。オシム監督が見せたサッカーは「考えて走るサッカー」と呼ばれたが、岡田ジャパンに明確なキャッチコピーがつかない理由も何となく理解できる。
加茂監督時代は「ゾーンプレス」といった言葉が流行し、トルシエ監督時代は「フラット3」や「ウェーブ」といった言葉が新語として脚光を浴びたが、岡田監督のサッカーは、「攻守の切り替えの早いサッカー」という選手たちの共通認識はあるが、1つのフレーズで明確に「これが岡田サッカーである!!!」と表すのは難しい。攻撃にしろ、守備にしろ、世界のサッカーの流れに沿ったシンプルなサッカーである。
また、メンバー選考も極めてオーソドックスである。
MF中村俊輔、MF遠藤保仁、DF中澤佑二という経験豊富な選手がチームの軸。DF内田篤人、MF香川真司、MF山田直輝といった若く才能のある選手を抜擢することに躊躇しないという特徴はあるが、「もっと自分のカラーを出してもいいのでは?」と思わせるほど、普通の選考である。
過去の代表チームを振り返ってみると、オフト時代の森保一、加茂時代の山口素弘、トルシエ時代の中田浩二や明神智和、オシム時代の羽生直剛や山岸智と秘蔵っ子と呼べるキープレーヤーが存在したが、現在の岡田ジャパンにはそういった存在はいない。
1国の代表チームの監督がどの選手を選出するのかは注目の的であり、「何故、この選手を召集しないのか?」、「何故、この選手を召集するのか?」といった話題は多くのサッカーファンの間で議論される内容であるが、岡田ジャパンの場合、オーソドックスすぎて、突っ込みどころが少ないというのが現状である。現在、代表に選ばれている選手で明らかに代表に呼ばれる資格の無いと思われる選手もいない。
■ 世界で最も過酷なリーグ18チームの3回戦総当たりでトータル51試合。北は北海道から南は熊本まで、東西に長い日本列島を横断するJ2リーグ。12月、1月、2月をブレーク期間とすると、9か月(約41週間)で51試合を戦うことになる。
34試合+ナビスコカップという試合数であり、交通網の発達した都市圏での試合が多く、J1とは比較にならないくらいタイトなJ2リーグ。『世界で最も過酷なリーグ』と形容されるが、あながち間違いではない。
その中で優勝候補といわれるのが、MF香川真司とMF乾貴士という二人の日本代表を擁するセレッソ大阪。ここまでの14勝3敗4分けで2位を走る。
ここで、今シーズンからJ2に昇格してきたの栃木SC、カターレ富山、ファジアーノ岡山の3チームと比較してみると、クラブの歴史、設備の充実度、選手層の厚さ、タレント力と全ての面で上回っていて、スタメン表を見ると、相手チームを圧倒しそうなメンバーが揃うC大阪であるが、そう簡単にうまくいかないのがサッカーの面白いところである。
3節で対戦した栃木SC戦は1対0の辛勝。8節のファジアーノ岡山戦は終わってみればMF乾貴士の1ゴール2アシストの活躍もあって4対1で勝利したが、前半から何度も岡山に決定機を作られてスコアほど内容で圧倒出来なかった。そして、10節のカターレ富山戦はアウェーの地でスコアレスドロー。21節のホームのカターレ富山戦は2対3で敗れている。
14勝3敗4分けと申し分ない成績を残すC大阪だが、立ち上がりから相手を圧倒して試合を制したと呼べるゲームはほとんどなく、どの試合も苦戦しているのが現状である。ただ、だからといって、イチイチ大騒ぎしていたら、クラブは成り立たなくなるだろう。Jクラブのどのチームのサポーターも、ひいきチームが全ての試合で素晴らしい内容のサッカーを見せて相手を圧倒するスコアで勝利することを望むが、それが不可能であることを十分に理解している。
■ ベスト/ベターな道のり1998年のフランスW杯を戦った日本代表、J1昇格を目指したコンサドーレ札幌、2003年と2004年に2年連続で年間王者に輝いた横浜Fマリノス。過去に岡田監督が率いたチームは3チームあるが、どのチームもファンタスティックなサッカーを見せたわけではなく、むしろ、その逆であった。
そのサッカーに好き嫌いがあるのは理解できるが、その嗜好はそれぞれとして、ここまで岡田監督が見せている仕事には十分に合格点が与えられるものであると思う。ある程度はオシム監督の遺産を引き継いだが、準備期間は通常の半分程度であり、苦しむことなく予選を最速で突破したというのは、立派な実績である。岡田監督就任当初、「岡田武史ではワールドカップ出場も難しい。」と語っていた人も少なくなかったが、その予想は裏切られた。
ここ最近の日本代表の試合はあまり後味が良くない。その理由は、全ての試合にパーフェクトな準備をして、パーフェクトなモチベーションで臨んで、パーフェクトなパフォーマンスを見せて、パーフェクトな勝利をおさめないと気がすまないという勢力が増殖しているからであるように思う。
正直、岡田監督の掲げた「ワールドカップベスト4」という到達目標が現在の日本代表にふさわしいものかといわれるとNOであるが、ここまでの岡田ジャパンはベストな道のりではないが、ベターな道をそれなりに順調に進んできているように思える。「このままではベスト4入りは難しい。」というのは事実で、より良い道があるのであれば方向転換することも必要だが、いろいろな障害があって常にベストの道を進めるわけではなく、また、ベストの道を選択していないからイコールダメとも言い切れない。
厳しい目線で日本代表を見守ることが強化への最善の策であるとすれば全てにおいてパーフェクトを求める姿勢が正しいといえるのかもしれないが、現実には、一部のサポーターやジャーナリストの非現実的な見方が、むしろ、足かせになっているように思える。
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随分先見性のある内容だった、面白く読めた
>GL突破の可能性を2割に引き上げる可能性のある監督とは誰ですか?
名前を挙げらない程、たくさん居ると思いますよw
無策のジーコでも一割程の可能性はあった思います。
OZにさえ勝っていればその後の戦い方も違い2位も十分にありました。OZと10戦すれば3勝程度は出来たと思ってます。
「岡田よりジーコが優れている」とは思いませんが、今の実験的なサッカーはあんまりです。
トッティタイプ不在の0トップ+ガンバ+バレー不在の大木甲府=現代表
ぱんさん
真剣勝負で内容まで求めるのはそれこそブラジルレベルの国の話でしょう。
GL突破の可能性を2割に引き上げる可能性のある監督とは誰ですか?
私にはそれは「ないものねだり」に思えます。
岡ちゃんで現実を見せられ、トルシエで歓喜し、ジーコで再度現実を突きつけられ、オシムで夢を見させられて、また岡ちゃんで現実に戻される。こんな気がする。
監督岡田に対し「何をもって合格なんだ!?」って思いました。
W杯出場と言う結果なら不合格ではないものの、あの戦力でアジアA組の2位以内を確保出来ない監督の方が逆に珍しいかと・・・
この結果のみで合格ならば松木安太郎監督でも合格しそうです。
内容で「合格」か?と考えれば、
親善試合以外の真剣勝負ではほぼグダグダ。オールスターメンバーを並べただけで機能性はイマイチ。同じようなタイプを並べたりコンセプト実現の為に選手の持ち味を殺しまくる。現代表の目玉である大木のクローズ戦術にしても、ある程度の国なら当たり前にやってる内の1つにしか過ぎない。等不満タラタラ。
岡田ではグループリーグ突破の可能性は5%程しかないと感じるので2割程度に引き上げてくれる監督にして欲しいと思います。
「中立地W杯での初勝利」を至上命題とするならば、岡田監督でも全く構わないのですが・・・
考えてみれば、ノルマと言うか絶対に達成しなくちゃいけない目標って物が明確になっていないのでサッカーファンの意見にまとまりがないのかもしれませんね。
ベスト4とかベスト8等の非現実的な物でなく、達成できるかもしれないノルマを協会に発表して欲しいです。
発表する事によって、達成する為に本格的に動き始める事ってたくさんあると思います。
「オーソドックスなサッカー」というものを
どう定義づけていらっしゃるのでしょうか?
今の代表のサッカーがそうであるとは
個人的には全く思っていません。
シンプルでもなく手数がかかりすぎるサッカーだと
感じています。
遠くアウェイの地でW杯出場を決め、
帰国直後に行われたどーでもよい消化試合で、
試合内容を厳しく問うミーハーサポとマスゴミ。
そうか!
「W杯5大会連続優勝」とか目指してるんだ!
すごいね!さすがサッカー大国だね!ニッポン!
テレ朝以外の他の民放各局にとってサッカー日本代表が注目されることは有難迷惑な話なんで、以前のように盛り上げてないのが主な原因にあると思いますがどうでしょうか?
岡崎の活躍や本田の成長には頼もしさを感じますが、もっと選手起用に"冒険"があってもよいと思います。たとえば金崎や谷口など。
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