■ 準決勝トリニダード・トバゴで開催されているFIFA U-17女子ワールドカップ。トリニダード・トバゴは、10年ほど前にMFベッカムやMFギグスらとともに、マンチェスター・ユナイテッドで一時代を築いたFWドワイト・ヨークの母国として知られているカリブ海の小国である。
2年前の大会はFW岩淵真奈を擁して「ベスト8」に輝いた日本代表であるが、今大会は「ベスト8」の壁を打ち破ってベスト4に進出を果たした。相手は北朝鮮代表。もう片方のブロックは韓国がスペインに2対1で勝利して決勝進出を決めている。25日に行われる決勝戦は日韓対決になるか?南北対決になるのか?アジアのチームが「ベスト4」に3チーム残っているのも今大会の特徴といえる。
準々決勝でアイルランドに2対1で勝利しているU-17女子の日本代表はGK平尾恵理。DF和田奈央子、村松智子。MF仲田歩夢、猶本光、田中陽子、川島はるな、浜田遥、高木ひかり。FW京川舞、加藤千佳。4試合連続ゴール中のMF横山久美はベンチスタート。
■ 2対1の逆転勝利試合の序盤は北朝鮮が優勢。日本代表と同年代とは思えないほどがっちりした体格の選手が多い北朝鮮が競り合いで強さを見せて主導権を握る。しかし、日本も右サイドのセットプレーからFW京川がクロスバー直撃のシュートを放つなど、徐々にペースをつかんでいく。日本は前半の半ば以降、何度か決定機を作るも決められず。0対0で前半を終了する。
ペースをつかんでいた日本だったが、後半13分にゴールやや左寄りからフリーキックのチャンスを与えると、北朝鮮の強烈なシュートのこぼれ球を押し込まれて先制を許す。苦しくなった日本だったが、しかし、後半23分セットプレーの流れからDF高木がヘッドで決めて同点に追いつくと、その直後に前半途中から出場していたMF横山が相手DFを手玉にとってドリブルからシュート。これが鮮やかに決まって2対1と逆転に成功する。
リードを奪ってからは完全に日本ペース。テクニックと創造性で相手を上回った日本が、そのまま2対1で勝利。見事に決勝進出を決めた。敗れた北朝鮮は3位決定戦に回ることになった。
■ 見事に決勝進出!!!前回大会の王者の北朝鮮にリードを奪われる苦しい展開となったが、見事な2ゴールで逆転に成功した日本は、韓国との決勝戦進出を決めた。男女問わず、どの年代でも北朝鮮との国際ゲームはいつもタフな試合になることが多いが、この試合も同様な展開。いやな流れだったが、後半に立て続けに2ゴール。さすがの北朝鮮も意気消沈したのか反撃するパワーは残っていなかった。
日本代表チームが「FIFA主催の国際大会」では決勝に進むのは、男女合わせても「1999年ワールドユース」、「2001年のコンフェデレーションズカップ」に続く史上3回目の快挙。1999年のワールドユースではスペインに0対4、2001年のコンフェデではフランスに0対1で敗れて優勝はならなかったが、3度目の正直でヤング・なでしこが世界チャンピオンになれるだろうか。
準決勝で韓国に1対2で敗れたスペインとは予選リーグで対戦していて日本は1対4で敗れているが、北朝鮮に0対1で敗れたドイツを相手に、韓国は予選リーグで0対3と敗れている。この世代は、特にコンディションや精神面で波が大きいだろうが、十分にチャンスはあるだろう。
■ 5人抜きでの決勝ゴール決勝ゴールは前半の途中から出場していたFW横山のドリブルシュートだった。DF高木のゴールで追いついた直後の攻撃で左サイドからドリブルで仕掛けると、4人もしくは5人のディフェンダーを抜き去ってゲット・ゴール。もし、このゴールが「男子のワールドカップ」で生まれていたとしたら、1986年のメキシコ大会のアルゼンチンのマラドーナや、1994年のアメリカ大会のサウジアラビアのオワイランのように半永久的にサッカーファンの間で語られることになるだろう「スーパー・ゴール」だった。
FW横山以外にも、このチームはほとんどの選手がドリブルで仕掛けることができる。これが一番の魅力である。ボランチの位置からもドリブルで仕掛けようとするので、「危ない」と思うシーンもあるが、これだけ積極的に仕掛けられる選手がそろっていると見ている方は面白く、現地の人も日本代表のテクニックには感嘆したようで、日本の選手がテクニックを見せるたびに大歓声が上がった。
日本人はアジリティーに優れているので、欧州の大型選手と対戦するとそれが大きなアドバンテージになってドリブルが効果的であるということは、最近、分かってきたことであるが、同じアジアの北朝鮮を相手にしてもドリブルは効果的だった。
これでMF横山は5試合連続ゴール。なぜ、スタメンで出場していないのか不思議でならないが、もし日本が大会を制したとしたら大会MVPはMF横山で間違いないだろう。そういえば、前回大会でも大会MVPに当たる「ゴールデンボール」を受賞したのが「リトル・マナ」ことFW岩渕真奈。(FW岩淵も17歳であり、年齢的にはこの世代に当たるが、今大会は出場していない。)なでしこ・ジャパンというと、「パス・サッカー」で世界トップレベルに近づいてきたが、若い世代はドリブルが武器の面白い選手がそろっている。
■ 背番号10の京川舞FW横山以外にも、MF田中、MF川島とタレントが揃っているが、好パスでチャンスを作っていたMF川島を後半途中に交代させたのは少し意外だった。確かに運動量が落ち始めていて、前半ほど攻撃に絡めなくなってきたが、パスで決定機を作れそうだったのがMF川島だけ。この交代がうまくはなるのか心配したが、結果として、この交代から間もなく2ゴールが生まれた。
前線ではFW京川の奮闘も光った。グループリーグ2戦目のベネズエラ戦ではハットトリックを記録するものの、3戦目のニュージーランド戦は不発。決勝トーナメント1回戦のアイルランド戦ではスタメンから外れていたが、この日はスタメン出場。ドリブルで仕掛ける技術もあるが、タフに当たられても平気な強さも光った。
■ 決勝戦は日曜日世界レベルへの挑戦が続いている男子サッカーとは違って、女子サッカーは世界トップレベルである。もちろん、競技人口等が全く異なるので単純に比較はできないが、男子サッカーにとって、女子サッカーの活躍は刺激になるものである。
世界レベルにある女子サッカーであるが、国内リーグの注目度は低いままであり、厳しい状況にある。注目度の低さがハングリー精神となって国際レベルでの活躍につながっている面もあるが、このレベルを維持して、さらに上へと引き上げていかなければもったいない。
一部の地域を除くと、まだまだ、女子でサッカーを続けるというのは非常に難しいと思われる。なでしこジャパンのエースのFW澤穂希と川崎フロンターレのMF中村憲剛が小学生時代に同じサッカークラブだったというのは有名であるが、都市部はともかく、地方では女子がサッカーを行う環境は整っておらず、サッカーを始めるきっかけすらほとんどないのが現状である。
16歳や17歳の選手に大きなものを背負ってもらうのは忍びないが、彼女らの活躍に刺激されてサッカーに興味を持って、「自分も始めてみよう」と思う選手が一人でも多く出てきてほしいところ。韓国との決勝戦は26日の日曜日の朝の7時から行われる。
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