■ 歴史に残るシーンになった鹿島のPK獲得クラブW杯の準決勝の鹿島 vs アトレティコ・ナシオナルの試合は3対0で鹿島が完勝。日本勢としてのみならず、アジア勢として初となる決勝進出を果たした。12月15日(木)に行われる準決勝の2試合目でレアル・マドリーが順当に勝利すると鹿島 vs レアル・マドリーという夢のカードが実現する。ACLで好成績を残すことが出来ずに「内弁慶のチーム」と言われることが多かった鹿島にとっては歴史的な偉業と言える。
アトレティコ・ナシオナルは合計で24本のシュートを放っており、力的には相手の方が上だったと思うがゴールを奪った時間帯が非常に良かった。前半33分にFW土居のPKで奪った先制ゴールはいろいろな意味で大きかった。今大会はFIFA主催の国際試合としては史上初めてビデオ判定システムが導入されているが、鹿島に与えられたPKは「映像を確認した上でジャッジが下される。」という初めてのケースとなった。
一方で「そもそもとしてDF西大伍はオフサイドポジションにいたのではないか?」という話も出ているので最初のケースから難しい状況になってしまった。「ビデオ判定システムが採用されていなかったら生まれなかった誤審疑惑」とも言える。『誤審はできる限り減らそう。』という大目標で導入が本格的に検討されている新システムが逆に仇になってしまったが、試行錯誤を繰り返しながら精度を高めていくしかない。
■ 多くのスポーツで取り入れられているビデオ判定システム注目されたビデオ判定システムの1発目がこういうことになったのでビデオ判定システムに対してネガティブな感情を抱く人は少なくないと思うが、昨今はいろいろなスポーツでビデオ判定システムが導入されている。呼び名についてはそれぞれで微妙に異なるが、旧態依然な組織と思われがちな大相撲はかなり早い段階から用いられており、本格的に導入されたのは1969年と伝えられているので48年前になる。
プロ野球(NPB)は部分的な採用にとどまっているが、数年前から「ホームランなのか?ファールなのか?」というシーンにはビデオ判定システムが用いられており、今シーズンからはホームベース上のクロスプレーに関しても反則が無かったのか?否か?を映像で確認するシステムが採用されている。アメリカのMLBはさらに進んでいて、抗議があったときはセーフか?アウトか?などの微妙なシーンも映像で判断する。
テニスのチャレンジシステムは良く知られている話であり、バレーボールも数年前から本格的にチャレンジシステムが導入されており、アメリカのプロバスケットボール(NBA)も数年前から微妙なシーンについては積極的に映像で確認するようになった。ビデオ判定システムについてサッカー界はかなり消極的だったことを考えると今回のクラブW杯で試験的に採用したことは大きな前進であり、大きな出来事と言えるだろう。
■ ビデオ判定システムの是非についてもちろん、ビデオ判定システムに関しては否定的な意見もあるとは思うが、昨今のスポーツ界の流れを考えると近い将来、少なくともW杯やCLや欧州選手権(ユーロ)やコンフェデやクラブW杯などの舞台では本格導入されるのは確実と言える。いろいろな競技でビデオ判定システムが採用されている中、サッカー界だけが採用を拒むというのはなかなか難しいだろうし、ファンやサポーターにも受け入れられないだろう。
ビデオ判定システムの導入に否定的な意見を持つ人の多くは
・映像を確認した上で誤審があったことが判明したときは審判員の権威が低下する可能性がある。
・確認のために数分程度の時間がかかるので試合が止まってしまう。
という2点を指摘することが多いが、1つ目に関しては他競技の話を例に出すと試合中に映像をチェックした上で最初の判定が間違っていたことが判明したとしても判断を下した審判員が責められるようなことはほとんどない。『映像でしか分からないほど微妙なシーンは少なくない。』ということくらいは大半の人は理解しているのでビデオ判定システムが導入されたとしても審判員の権威の低下につながるとは思えない。
むしろ、現行のままの方が権威の低下につながりやすい。「映像を見ても良く分からない。(=どちらとも取れる。)」という場面もあるが、「映像を見たら一目瞭然」という場面も少なくない。「審判員にとって死角になりやすい領域をサポートする。」という意味合いでビデオ判定システムが本格的に導入されるのであれば審判員も大歓迎だろう。誤審がゼロになるわけではないが少なくなるのは間違いない。
2つ目に挙げたのはサッカー界特有の問題である。勝敗がすぐに決まる大相撲で早くから本格導入されている理由とも言えるが、インターバルの多い野球やテニスやバレーなどとは違ってサッカーは基本的には45分間、プレーは止まらない。映像確認のための待ち時間は選手や観客にとってのストレスになるが、今回の鹿島 vs アトレティコ・ナシオナルで要した時間は2分ほどだった。このくらいであれば許容できる。
当然、90分の中で何度もビデオ判定のために試合が中断するようなことになると大問題であるが、『数試合に1回程度』であれば大きなストレスにはならない。試合中の選手の怪我等によって2分程度、試合が止まることは決して珍しくない。どういう場面にビデオ判定システムを採用するべきなのか?など細かい運用ルールについては、今後、テストを繰り返すことである程度の基準が出来ていくはずである。
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