■ 四国ダービー今週末のJリーグはダービー祭り。「大阪ダービー」、「千葉ダービー」に続いて「四国ダービー」も開催。2005年にJ2に昇格した徳島ヴォルティスと、2006年にJ2に昇格した愛媛FCの両チームが対戦。
現在、四国にあるJリーグチームはこの2クラブのみ。両チームは最大のライバル関係にあるが、ここ5試合の「ダービー・マッチ」は徳島が圧倒している。2008年からのスコアは、「5対0」、「2対0」、「6対0」、「1対0」、「0対0」。ここ5試合では、「14得点0失点」と徳島が一方的である。
ホームの愛媛FCは<4-2-2-2>。GK川北。DF関根、アライール、小原、三上。MF田森、越智、赤井、杉浦。FWジョジマール、大木。GK川北は第25節のファジアーノ岡山戦でスタメンに復帰。実に1年10ヶ月ぶりのリーグ戦復帰だった。ベテランのFW大木は今シーズン3試合目のスタメン。チームトップの6ゴールを挙げているFW福田はベンチスタート。MF渡邊が出場停止でMF田森が18節以来のスタメン。
対するアウェーの徳島は<4-1-2-3>。GK上野。DF平島、ペ・スンジン、登尾、三田。MF六車、倉貫、島田。FW津田、ドゥグラス、柿谷。25節までフルタイム出場を続けていたMF濱田が出場停止で、MF六車がアンカーで出場し、FW柿谷がスタメン復帰。徳島は3試合連続で4ゴールを記録していて攻撃陣が好調である。
■ 愛媛が勝利!!!ともに2連勝中と調子の上がってきた両チームの対戦は、序盤から予想に反してホームの愛媛が試合を支配し、一方的に攻め込む。2トップのFWジョジマール、FW大木のフィジカルの強さを前面に押し出したサッカーで主導権を握る。しかし、前半のうちに2トップに何度か決定機が訪れるがチャンスに決めきれず。
対する徳島は前半25分を過ぎると、ようやくシュートチャンスを作れるようになるが、セットプレーからDFぺ・スンジンがネットを揺らしたシーンも「オフサイド」の判定。0対0で前半を終える。
後半はアウェーの徳島がMF倉貫を起点にリズムをつかみかけるが、愛媛は後半11分にFW大木に代えてMF内田を投入。流れを呼び込もうとすると、すぐあとの後半17分に先制ゴールが生まれる。MF内田がMF倉貫のファールを誘ってゴール正面の位置でフリーキックを得ると、MF内田が自ら左足で豪快に直接FKを決めて愛媛が先制する。MF内田はリーグ戦2ゴール目。
ビハインドの徳島はMF島田とFWドゥグラスに代えて、FW佐藤とFW徳重を投入。FW徳重のセットプレーや飛び出しから何度かゴール前でチャンスを迎えるが、愛媛のGK川北の踏ん張りもあってゴールは奪えず。結局、そのまま1対0で愛媛が勝利。今シーズンの四国ダービーは愛媛の1勝1分けで終了した。
■ 愛媛が勝ち越す調子の出てきたチーム同士の直接対戦だったが、ホームの愛媛のサッカーが徳島を上回って1対0の勝利をおさめた。両チームの戦力を比較すると、試合前から中盤勝負では「徳島が優勢」で、「愛媛が劣勢」となることが容易に予想できたが、序盤は意図的にロングボールを多用し、バックラインから2トップに長いボールを送り込むことで中盤のエリアでの攻防をなるべく少なくし、徳島のストロングポイントを発揮させないようなサッカーに持っていった。
結果、最初の25分ほどは、ほとんどのセカンドボールを愛媛が拾って、波状攻撃につなげることに成功。FW大木やFWジョジマールが前半の絶好機に確実に決めていれば、もっと楽な試合になったかもしれないが、試合の入り方がうまかった愛媛の作戦勝ちといえる試合だった。ここ最近のダービーは愛媛側から見ると散々だったが、これでJ2の舞台での通算成績では7勝6敗3分けと愛媛がリードしたことになる。
■ 決勝ゴールは内田健太決勝ゴールを決めたのは途中出場のMF内田健太。後半11分から出場すると後半17分のフリーキックのチャンスで豪快なシュートを決めてヒーローとなった。左足の強烈なシュートは壁の隙間をうまく通っていって、それほどきわどいコースとはいえなかったが、勢いのあるシュートとなって、徳島のGK上野は反応することもできなかった。
ロンドン世代のMF内田はサンフレッチェ・ユース出身。サンフレッチェ広島でポジションをつかみかけているDF横竹とは同期となる。プロ入り後、広島では出番に恵まれず、昨シーズンの途中に愛媛にレンタル移籍してきたが、
レギュラー定着とは言えないものの、コンスタントに出場機会を得ている。以前から広島と愛媛は友好関係があって、MF高萩やDF森脇もJ2の愛媛で試合経験を積んだ選手で、広島に帰ってレギュラーをつかんだ選手である。広島も左サイドのMF服部がそろそろ苦しくなる年齢なだけにMF内田にもチャンスはあるだろう。
■ ベテランの大木愛媛の勝利の影の立役者となったのがFW大木勉。1976年生まれで、ベスト8に入った1995年のワールドユースにも出場しているベテランFWは、今シーズン4試合目の出場となったが、持ち味であるアグレッシブなプレーでチームに勢いをもたらした。
J1では154試合で28ゴール、J2では107試合で15ゴール。もともとそれほど得点力のある選手ではなくて、この日もチャンスに決められなかったが、キックオフから全力で飛ばしてチームの活力となった。この日の愛媛の2トップはFWジョジマールとFW大木。ストライカータイプのFWジョジマールとポストプレー含めて献身的なタイプのFW大木という2トップの組み合わせのバランスは良かった。
■ 痛い敗戦勝てば3連勝。5位に浮上することができた徳島だったが、好調だった攻撃陣が不発で完封負け。スコア以上の完敗で3位のアビスパ福岡との差は「8」となって、福岡の背中が遠ざかった。立ち上がりは<4-3-3>で、試合途中に<4-2-2-2>に変更してきたが、どちらもうまく機能せずに終わった。
昨シーズンの開幕前はGK上野、DF三木、DFぺ・スンジンら守備陣の実力者を補強し、失点数を大幅に減らすことに成功した徳島。次のステップとして、今シーズンは攻撃陣を中心に大補強を行い、FW津田、FW平繁、MF島田らの獲得に成功。シーズン前から、いくつかある昇格候補の1つと数えられており、ここまで「6位」という順位は悪くはないが、現実的に「昇格」ということを考えると、まだまだ不足している部分はある。
J2は柏と甲府が抜け出ているが、4位の千葉から12位の岐阜までの勝ち点差は「10」のみ。勝ち点「32」で11位の愛媛FCを含めて、この付近のチームは勝ち点差も実力差も接近している。昇格チームの北九州などなど、下位にはなかなか勝てないチームもあるが、相変わらずの実力伯仲リーグである。
今後、徳島が本格的にJ1を目指すのであれば、このグループから抜け出していかなければならないが、山形の例を見ても、湘南の例を見ても、J1昇格が簡単ではいかないことは誰の目にも明らかである。山形も、湘南も、何度かJ1昇格のチャンスを迎えながらも失敗し、苦労した末の「J1の切符」だった。
J2の中では資金力のあるチームなので、仮に今シーズン、昇格を逃したとしたら、今オフもピンポイントで補強を行ってくる思うが、「勝てる監督」を連れてくるのも1つの策である。3年連続最下位だったチームを中位まで引き上げた美濃部監督の手腕は素晴らしいが、「勝った経験のある監督」ではない。
■ 濱田の穴徳島にとって痛かったのは、フルタイム出場中だったMF濱田が警告累積で出場停止だったこと。その代役としてMF六車がアンカーに入ったが、MF六車がうまく試合の流れに乗れずに機能しなかった。MF濱田の特徴はパス出しであり、MF六車の特徴は体の強さを生かした守備や大胆な攻撃参加。ということで、タイプが全く違う選手であるが、この日のMF六車は「MF濱田のようなプレー」を意識しすぎたような感じで、自分の持ち味を出せなかった。
美濃部監督がどういう意図でMF六車を起用したのかは分からないが、ゲームメーカー的な仕事を期待したのではないはずであり、MF六車はフル出場したもののプレーが中途半端だった。
■ 新しい2トップ今後に向けて期待が出来るのは新外国人のFWドゥグラス。この日は不発だったが、3試合連続ゴールを決めており、チームに加入して出場した6試合で4ゴールを挙げている。184㎝と高さのある選手であるが、「ヘディングシュート」に自分の形を持っていて、ここまでの試合を見た限りでは、かなりのレベルの選手である。23節、24節は途中出場で1ゴールずつ、25節はスタメンで出場して2ゴール。さっそくチームの期待に応えている。
注目したいのはFW津田との相性。この試合は、途中から11ゴールを挙げていて得点ランキング3位のFW津田と2トップを組んだが、双方が持ち味を殺しあって、まったく見せ場はなかった。
ボックス内で仕事をするタイプのFWドゥグラスに対して、スピードや運動量もあるFW津田。FWドゥグラスはクロッサーのMF島田との相性も良さそうで、2トップの組み合わせとしては面白いと思われるが、ともにストライカータイプ。「生かし・生かされ」の関係が築けるかどうか?まだ様子を見る必要がある。
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