■ 第4節ブンデスリーガの第4節。開幕戦のレバークーゼン戦はホームで0対2で敗れたものの、第2節でシュツットガルトに3対1、第3節でヴォルフスブルクに2対0で勝利し、3試合を終えた時点で2勝1敗のボルシア・ドルトムント。ミッドウイークにはヨーロッパ・リーグのグループリーグ初戦でウクライナのSKカルパティ・リヴィウと対戦して4対3の勝利をおさめている。
この日は日本代表のDF内田篤人が所属するシャルケとのルール・ダービー。中学校の社会の授業でも習った「ルール工業地帯」を代表する両チームが激突するこのダービーマッチはヨーロッパでも屈指のダービーと言われている。
ドルトムントのシステムは<4-2-3-1>。GKヴァイデンフェラー。DFオヴォモイェラ、スボティッチ、フメルス、シュメルツァー。MFベンダー、サヒン、ゲッツェ、香川、グロスクロイツ。FWバリオス。元ドイツ代表のMFケールが怪我のため欠場し、MFベンダーがスタメン。18歳のMFゲッツェはSKカルパティ・リヴィウ戦で2ゴールの活躍。
対するはシャルケ。昨シーズンはリーグ2位でチャンピオンズリーグにも参戦しているが、開幕から3連敗中。名将のマガト監督も苦しいスタートとなっている。日本代表のDF内田はパラグアイ戦の怪我の影響で欠場。オランダ代表のFWフンテラールとFWラウールの前線。
■ 今シーズン3勝目試合はアウェーのドルトムントが一方的に押す展開となる。
動きの悪いシャルケに対してドルトムントは前半20分に先制に成功。中盤でMFゲッツェがドリブル突破を図って相手につぶされかけたボールを拾ったMF香川がドリブルで前進。相手DFをかわしてペナルティエリアの少し手前から左足でシュートを放つと、相手DFに当たってコースが変わってゴールイン。1点を先制する。その後もドルトムントがビッグチャンスを作り続けるが、シャルケのGKノイアーが踏ん張って1対0のままで前半を終える。
後半の立ち上がりはホームのシャルケペースとなる。途中出場のMFエドゥーが起点になって何度かチャンスを作る。しかし、後半13分にドルトムントは後半開始から出場したMFブラスチコフスキが右サイドでボールをキープ。うまくタメを作ってから右足でゴール前に正確なボールを供給すると、ファーサイドに走りこんだMF香川がジャンピングボレーのような形で合わせて2点目を挙げる。MF香川はリーグ戦は3ゴール目。シャルケは後半16分にDFプレスタンが2枚目のイエローカードで退場し万事休す。
結局、後半41分にはMF香川に代わって途中出場したFWレワンドフスキのゴールも決まってドルトムントが3点目を挙げる。試合終了間際にシャルケはFWフンテラールがゴールを決めるが、シャルケを圧倒したドルトムントが3対1で勝利し3連勝。今シーズン3勝目を飾った。一方のシャルケは開幕から4連敗となった。
■ ドペルパックの活躍初スタメン(1節)、初勝利(2節)、初ゴール(3節)と一歩ずつステップアップしてきたMF香川であるが、4節では初のドペルパック(2ゴール)の活躍。最大のライバルであるシャルケを相手に鮮烈な印象を残す試合となった。
1点目はドリブル突破から左足で決めたシュート。DFに当たったことで少しコースが変わったことで、ドイツ代表の正GKイアーもどうすることもできなかった。2点目は右サイドからのクロスに左足で合わせたファインゴール。1974年のワールドカップのオランダとブラジル戦のFWヨハン・クライフのようなスーパーゴールとなった。
この日の2ゴールはともに左足で決めたゴール。ヨーロッパの人は、「日本人が左右両足でうまくボールコントロールすること」に少し驚きを感じるようであるが、その中でも、MF香川は特に右足でも左足でも違和感なくボールを扱えるタイプの選手であり、ドリブルから左足に持ち込んでフィニッシュするシーンは非常に多い。
通常、相手には利き足側を警戒されるので、「利き足」を切られると思い通りのシュートにならないことが増えるが、左右両足でフィニッシュできるので、相手は対応が難しい。どちらの足でも、それほどシュート精度は変わらないので、わざわざ右足に持っていく必要はなく、ドリブル→シュート、トラップ→シュートもスムーズに運ぶことができる。ゴールシーンだけを見ていると、「左利き」と錯覚してしまう人もいるかもしれない。これでリーグ戦は4試合で3ゴール。ドイツの地でも、J2時代の2009年、J1時代の2010年と同じようなハイペースでゴールを重ねている。
■ プレースタイルの変化リーグ戦は4試合目。先日のパラグアイ戦やグアテマラ戦の活躍もあって、「ドイツに渡って香川は覚醒した。」と語る向きもあるが、この数ヶ月間で、彼自身が大きく変わったわけではなく、C大阪時代も同じようなレベルのプレーは出来ていた。C大阪時代のMF香川のプレーを注視していなかった人が、最近のインパクトの活躍を受けて、「急激に成長した。」と錯覚しているのではないだろうか。海外に渡って短期間で急成長することが出来たら苦労はしない。
ただ、プレースタイルというか、プレー中の意識は、C大阪時代と比べて変化しているのは普通に感じることである。C大阪時代の終盤は、もう少し雑な部分も多かったし、強引さもあった。(今のようなゴール前の落ち着きはなかったが、)ミスが少なくてシンプルなプレーを心掛けているという点では、ドイツでのプレースタイルは、MF香川がJリーグにデビューした2007年当時のプレーに近いような気はする。
ドルトムントでは「1トップ下」でのプレーとなるが、ここまでの試合を見て少し気になっていたのは、周りに気を使いすぎている様な印象があることで、「もっと自分で仕掛けるシーンが増えてもいいのでは?」と感じていたが、この日は仕掛けるところは仕掛けて、ドリブルでもチャンスを作った。どうしても前にいる味方選手がFWバリオスだけになってしまうので、パスコースは多くない。ゴールという目に見える結果も残していて、今後、ドリブルを多用していっても、全く問題ないだろう。MF香川が真価を発揮するのは、むしろ「これから」である。
■ ルール・ダービーでの活躍それにしても、「ダービーで2ゴール」というのは、周囲に与えるインパクトという点で、これまでのものとは段違いのものがある。「ルール・ダービー」というと、ドルトムントやシャルケのサポーターだけでなく、世界中のブンデスリーグに興味のある人が関心を持っている一大イベントである。その中での活躍ということで、MF香川の知名度は飛躍的に上がったことだろう。
当然、サポーター間の敵対心やライバル心も激しいものがあるはずであり、その中でこれだけ活躍出来たということでmしばらく活躍できなくても大丈夫なくらいの「貯金」を1試合で作ったといえる。前半終了間際にイエローカードを受けていたこともあってフル出場はならなかったが、11人対10人と数的優位で楽な展開であり、かつ2点リードもあったので、クロップ監督の交代の判断は妥当な選択だったといえる。
■ ゲッツェ、グロスクロイツ、ブラスチコフスキレバークーゼンとの開幕戦を見ていると、「ドルトムントは両サイドハーフが少しパンチ不足か}」と感じたが、試合を重ねるごとによくなってきて、サイド攻撃も機能するようになってきた。もともと、18歳のMFゲッツェは将来のドイツ代表の中心として期待される逸材であり、22歳のMFグロスクロイツもドイツ代表のキャップがある有望選手であり、MFブラスチコフスキはポーランド代表。レベルの高い争いになってきている。
現状はこの3人で2つのポジションを争う形になっているが、エジプト代表のMFジダンが帰ってきたらMF香川もこのポジションで起用される可能性があって無視できない競争であるが、現状、MF香川と一番合っているのはMFゲッツェ。MFゲッツェは他の二人とは違って「サイドプレーヤー」という感じではなくて、頻繁に中央に入ってきてプレーに絡もうとする。MF香川と感覚が似ているのか、パス交換もスムーズである。
MFグロスクロイツは現時点ではクロップ監督のファーストチョイス。ヴォルフスブルク戦のMF香川のゴールはMFグロスクロイツのアシストであったが、サイドでボールを持ったときは推進力はある。ポーランド代表のMFブラスチコフスキが運動量が豊富でサイドを活性化させるタイプか。この試合の2点目のMF香川のゴールにつながったクロスはパーフェクトだった。
以前、「MF香川はクロスがイマイチ」とクロップ監督からは指摘されていたが、MFブラスチコフスキのクロスと比較すると「クロスが不得意」に見られても仕方がない。タイプの異なる選手がそろっている。
■ 厳しいシャルケ一方のシャルケは点差以上の完敗だった。最後に意地を見せて最終スコアは1対3であったが、ドイツ代表のGKノイアーの神がかり的なスーパーセーブがなければ、5点・6点と取られていても不思議はなかった。前線にはFWラウールやFWフンテラールがいてタレントは豊富であるが、中盤とDFラインのコンビネーション不足は明らかであり、バイタルエリアで安易にMF香川をフリーにするシーンが多すぎた。
マガト監督のチームとは思えないほどの低調ぶりであるが、この試合を見る限り、DF内田は怪我で欠場したことは幸いだったといえるかもしれない。DF内田はチームの中で生きるタイプの選手であるが、これだけバラバラのチームの中でDF内田が輝くことは不可能に近い。開幕から4連敗となって、CLもリヨンに敗れた。そろそろ結果を出さないとマガト監督といえども苦しくなるが、DF内田もチームと同様に厳しい立場にある。1つ勝って、立て直したい。
ボルシア・ドルトムントプレ 2082 2010/08/08
【ドルトムント×マンC】 香川真司に期待したいこと 1節 2099 2010/08/23
【ドルトムント×レバークーゼン】 香川真司 ブンデスデビュー戦 2節 2106 2010/09/01
【シュツットガルト×ドルトムント】 香川真司がドイツで評価される理由は? 3節 2114 2010/09/12
【ドルトムント×ヴォルフスブルク】 香川真司 ブンデスリーガ初ゴール 4節 2121 2010/09/20
【シャルケ×ドルトムント】 香川真司 ドペルパックの大活躍
- 関連記事
-