水星の魔女はタイトルからイメージを喚起できる点で良い名づけ方だと思う。
そんな「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の岡本プロデューサーは
インタビューで次のように語る。
岡本 社会科見学で来た10代の子たちから話を聞くタイミングがあったんです。そうしたら「ガンダムは僕らに向けたものじゃない」「(タイトルに)ガンダムとついていたら見ません」と言われて……。
「ガンダムは僕らに向けたものじゃない」10代のリアルな言葉に衝撃を受けて──『機動戦士ガンダム 水星の魔女』岡本拓也プロデューサーインタビュー前編(アキバ総研)
10代にはガンダムという単語が忌避感を募らせている皮膚感覚を語っている。
水星の魔女の世界ではガンダムという名前は忌み嫌われ、
2話のサブタイトルではガンダムを「呪いのモビルスーツ」となっている。
劇中の大人たちはガンダムを忌避しまるで現実の10代の子たちとかぶるような反応をする。
シリーズものは新規層の開拓なしには存続し得ない。
今まではガンダムという言葉が注目される側面もあったと思える。
しかし昨今ではガンダムという言葉が新規層を阻む「呪い」となっている。
今までのTVシリーズのガンダムアニメのタイトル名は
1stから2011年のガンダムAGEまでは「ガンダム○○」みたいな方向が多かった。
(例外は∀ガンダム)
2014年の「ガンダム Gのレコンギスタ」
2015年の「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」以降から一転。
「ガンダム ○の○○」のような名づけ方も多くなり、
2022年の「機動戦士ガンダム 水星の魔女」もその流れにいる。
2014年ぐらいの作品からガンダムより
ガンダムのあとに続く「鉄血のオルフェンズ」「水星の魔女」という
タイトルに比重が置かれているように思える。
この事を各作品のタイトルロゴのデザインから考えてみようと思った。
そして同じ事を考えていた方による記事は既にある。↓
水星の魔女にのぞむこと① タイトルロゴのお話(はずレールガン)
内容的に頷ける意見も多々あり参考になった。
とりあえず本記事ではタイトルロゴのみに焦点をおいて語ってみたい。
オルフェンズと水星の魔女を比較すると
機動戦士ガンダムの文字の大きさ・比率が違う
オルフェンズは機動戦士ガンダムが主張しているが
水星の魔女では機動戦士ガンダムが鉄血よりも小さく添えものであり
水星の魔女というタイトルで世に売り出したいイメージが強く伝わる。
2022年の映画「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」では
機動戦士ガンダムの文字主張が強い。これは1stガンダムの話であり
安彦ファン、ORIGINファン、ベテランガンダムファンをターゲットにして
機動戦士ガンダムの名前で世に売り出したいのだろう。
対して2021年の「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」。
機動戦士ガンダムの文字は小さい。水星の魔女より若干大きい。
ガンダムという主張はありつつも「閃光のハサウェイ」のタイトルで勝負したい印象だ。
約30年前の小説原作でありながら、ガンダムから距離を置くようなタイトルロゴだ。
2014年の「ガンダム Gのレコンギスタ」もガンダムは添え物で
監督も脱ガンダムを標榜しているから「Gのレコンギスタ」に比重が強い。
以上の作品のタイトルロゴと比べて
水星の魔女の機動戦士ガンダムの文字は極めて小さい。
ガンダムを続ける上でガンダムという名前が「呪い」になっている。
であれば水星の魔女という名前で勝負するという
マーケティングの方向性が見えてくるように思える。
今後のガンダムアニメはタイトルロゴにおいて
「機動戦士ガンダム」をどうデザインするかで
作品の方向性が見えてくるのではないかと思う。
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