はじめに
日本のアニメにおいて、クラウドファンディングを用いて
製作するケースが徐々に出つつある事を前回の記事で書いた。
日本のアニメはクラウドファンディングの夢を見るか? こうしたクラウドファンディングを用いた作品が
作品の内容的にも、商業的にも成功するかどうか。
こればかりは世に問わなければわからない。
そんなアニメにおけるクラウドファンディングについて考える時に
一つ参考にしたい事例がある。それは「バジリスク」のアニメファンドだ。
「バジリスク」のアニメファンドについて
参考:
初のアニメファンドで資金調達 個人向けに1口5万円から「バジリスク〜甲賀忍法帖〜」は山田風太郎の小説「甲賀忍法帖」を
原作にした、せがわまさきによる漫画。(※原作漫画はものすごく好き)
この漫画をゴンゾ(GONZO)製作でアニメ化。
2005年の4月~9月に全24話放送された。
「バジリスク」のアニメ化に対し、ゴンゾとトヨタ自動車等が出資する
ジャパン・デジタル・コンテンツに楽天証券、ジェット証券の4社で
「アニメファンド! バジリスク匿名組合」というファンドが作られた。
このファンドは個人投資家を対象に一口5万円で製作費を集めていた。
ファンドによるアニメ制作はこの「バジリスク」が始めてであり、
クラウドファンディングでは無いにしても、
ファンドアニメの前例として参考にできるのではないかと思った。
そしてファンドは目標調達額2億4千万円を集めたものの、
投資の償還の一番の大元になるDVDの売上が
損益分岐点を下回る売上枚数に留まった為に
最終的に投資金額5万円に対し、償還額が3万8433円と元本割れとなった。
参考:
アニメファンド! バジリスク匿名組合」の償還にあたってこうして見ると、アニメ初のファンドは投資額分を回収できない結果となった。
まとめ-クラウドファンディングはどうなのか?
「バジリスク」のアニメファンドは、参考先の
図を見てみると
出資者の対象が個人投資家という枠で捉えられており、
あくまでビジネスであり、投資の意味合いのファンドだったと思う。
一方でここ最近話題になっている
「この世界の片隅に」「「Dies irae」などのアニメのクラウドファンディングは、
制作を応援・協力したいファンの熱意に支えられたものであり、
ビジネスというより支援であり、中世におけるパトロンの意味に近い。
このビジネスライクにみえる「バジリスク」のファンドと、
パトロンシステムに近いクラウドファンディングを比べられないとは思う。
ただ「バジリスク」以降、投資家向けのアニメファンドの動きが無かった点を見ると、
クラウドファンディングも実際に作品が世に出て、
商業的にも作品的にも成功しなければ、この流れも収まってしまう可能性も感じた。
何にしても、以前の記事でも書いたのだが、
視聴者・アニメファンが、作品にどう関わるかを考える時に
クラウドファンディングが一つの手段として一般化した場合に
アニメの作り手と受け手の関係性も変わっていく可能性があるとは思う。
最後にファンドにしてもクラウドファンディングにしても
ネットは個々人が何かに対して自分の意思を行使できる選択肢が
広がるものだという事を再認識した。
- 関連記事
-
権利はすでにゴンゾに譲渡されていたのですね