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押井守の虚実「宮本武蔵 -双剣に馳せる夢」 

押井守原案・脚本、西久保瑞穂監督「宮本武蔵 ~双剣に馳せる夢~」を視聴。


 
 『宮本武蔵―双剣に馳せる夢―』 原案・脚本押井守氏インタビュー

上記のインタビューでも語られているが
海外から歴史の番組を作りたいという話がこの作品のキッカケのようであり、
映画というよりドキュメタリーのような仕上がりになっていた。

本編の多くは、CGパートによる押井守氏の薀蓄がメインであり
アニメは宮本武蔵と剣豪達の戦いのアクションシーンのみにとどまる。
IGのクオリティを、黄瀬和哉さんの作画をたっぷり見たいと期待すると
肩透かしをくらう可能性がある。シーン自体はさすがのクオリティ。


本作のテーマは後世に創作された虚像を排して、
押井守の独自解釈によって宮本武蔵の実像に迫るというものだった。

押井氏は宮本武蔵を剣豪としてではなく、軍略家・兵法家として捉えることで
武蔵の生涯・価値観は常に、剣豪として道を極めるためではなく
戦場での戦略・戦術を考え続けた軍略家として捉え方をしている。

だから軍略家:宮本武蔵にとって佐々木小次郎との決闘は
所詮1対1の戦いであり、あくまで戦場での兵法の追求と実践に主眼をおいた
武蔵にとっては、誇れるものでも語れるものでもなかったと結論づけている。

この結論の結び方には一定の説得力を感じる。


しかし本作は、後世に創作された虚像を排して実像に迫ると言いつつ、
本編のアニメパートはまさに後世に創作された虚像を元にしたかのような
宍戸某、吉岡家、佐々木小次郎との戦いが描かれる。
まるでこれらの決闘も実像として映ってしまうような見せ方もしている。

だがアニメパートの決闘は後世の創作であり虚構だ。だからアニメで描かれる。
そして押井氏の薀蓄・論が語られるシーンはCGパートで描かれ、アニメで描かれない。

こうしたアニメを虚構、CGパートや写真パートを実と本作は据えることで
虚実入り混じった、いかにも押井作品らしいテイストに仕上がっている。

さらにいえば、諸説ある吉岡家や佐々木小次郎等の決闘を取り上げている事自体が
この作品は、虚実入り混じった内容である事を証明していると思う。

その意味では、あくまで本作は歴史学的にみた宮本武蔵の真実というより
押井守氏の虚実入り混じった独自解釈で、宮本武蔵を捉え直したと言う方が近いだろう。


最後に。押井氏は宮本武蔵に興味があるのは間違いないだろう。
まず押井氏が宮本武蔵に興味があるのは、押井氏が常々語る「勝敗論」と関係があるだろう。
そして軍略を極めつつ、一方で書や絵画・工芸などにも秀でた万能人宮本武蔵の生き方が
アニメ監督だけでなく、実写・小説・ゲームと様々な分野を手がけることで
アニメ作品作りにフィールドバックさせてきた押井監督の琴線にふれたからだろう。


(押井守著:勝つために戦え!)

一つの事を極めるには、他の事にも通じる必要があるのではないか。
押井氏が宮本武蔵を取り上げたのは、この事を伝えたかったという面もあるだろう。
 
ドキュメンタリー風味のテイストの作品ながら
押井守氏が関わるだけに、一筋縄ではいかない作品だった。
 
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[ 2014/03/23 18:00 ] 押井守 | TB(0) | CM(0)
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