はじめに
ニコニコ動画でキルミーベイベーの全話配信をやっている。
改めて見返してみて、やはり面白い。それも抜群に面白い。
その理由をキルミーベイベーを見ながら考えてみたいと思う。
キルミーベイベー的時間体験
まず、キルミーベイベー的としかいえないような時間感覚が挙げられると思う。
それは弛緩しきった時間感覚ともいえるし、
他のアニメと比べて時間の流れが遅く感じてしまうともいえるし、
とにかく、他のアニメで感じる時間感覚とは明らかに別物だ。
そして、この時間感覚は1クールアニメの中では貴重のように感じる。
それは1クールアニメは、物語を見せる/やれる内容に尺的な限りがあるため
物語でも画面の見せ方でも詰めて見せる傾向が強いように感じる。
端的にいえば、テキパキしていてきっちりしているのだ。
一方でキルミーベイベーは、1クールアニメ的なテキパキと詰めこんで見せるのではなく、
一つのネタの密度を維持しながら、でもペース配分としてはゆっくり。
キャラクターのしゃべりもゆっくりだ。そしてシュールさも多分にある。
ゆっくりかつシュールな感じがキルミーベイベー独特の時間感覚を生み出している。
OP・ED曲の存在も重要だ。
本編に比べてアップテンポな曲調とダイナミックなアクションで見せるOPは、
本編の時間感覚とは、違っている。
このOPは畳み掛ける感じで始まり、本編ではゆったりな感じで進行する。
そしてEDでは、本編よりも少しペースを上げた曲調で終わる。
こうした、OPやEDの曲のテンポを含めて
トータルで緩急をつけて(もちろん声優さんの演技やBGMも含めて)
時間感覚を作り上げているのが、キルミーベイベーの時間なのである。
その中で一番時間のズレを作っているキャラは、
とにかく喋りが一番遅いあぎりさんである。
見やすい絵作り
この作品の画面は見やすい。必要以上に画面の密度を上げない。
例えば背景美術の精度を実写のように極度に上げる手法は取らず、
リアルさは損なわない程度に簡略化した線量で美術を描き、イメージBGを多用する。
キャラクターの動きもゆったりとしている。速い動きは少ない。
視覚に追いつきやすい動かし方。
パン、パン、パンと畳み掛けるようなカット割りもあんまりない。
そんなキルミーベイベーは作品の画作りにおいて
画面の情報量をきちんと計算して作られ、
この画作りが作品のほんわか感を生み出しているのだ。
作画監督の長谷川眞也さんや安藤正浩さんが、作画面で支えているのも大きい。
山川吉樹さんの存在
監督の山川吉樹さんが全13回中で9回、コンテを切っているのは大きいと思う。
監督が率先して、作品のカラーを作り上げているのがわかる。
同じJ.C.STAFFのぽてまよが、監督の池端隆史さんが全話のコンテを切ったのを見ると
J.Cはギャグ系の作品を監督自らのコンテでコントロールするという方向があるのかも。
やすなとソーニャが可愛い、そして二人の関係性が素敵
デザイン的にも二人は私の中では可愛い。
茶色髪のやすなと金髪(黄色)のソーニャの対比もいい。
そんな二人はお互いの事が好きで好きで仕方がないようにみえるのも好きだ。
ボケ(やすな)とツッコミ(ソーニャ)のバランスも取れていて、
二人の役割がたまに変わるのも面白く、そこがまた可愛い。
赤崎千夏さんと田村睦心さんの掛け合いも、
回をこなすに連れて、上手くなっていく過程も聴いていて面白い。
特に赤崎さんの後半の暴走は見ていて楽しい。
まとめ
簡単にまとめてみたが、
クセになる時間感覚を味わえるのが、この作品の醍醐味だろう。
何回もみるとクセになる、中毒性が高い作品なのである。
この中毒性は山川監督以下、スタッフワークによって
高度なレベルでコントロールされた、ゆるシュールな世界なのだ。
そして2013年の3月という今見返すと、
今ではてーきゅうのアーススターや、
あいまいみーの竹書房などのギャグマンガのショートアニメが多く出回っているが
ちょっと前の2012年では、30分アニメでギャグに挑戦した作品が
あったなぁということを思い知らされる。
何にしてもキルミーベイベーは、
以上の理由から他のアニメでは味わいにくい感覚を味わえる意味で
唯一無二といえる印象を受けるアニメだ。
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たまに、「フッ」という程度の回もあるんだけど、基本つまらないよなぁ。