「けいおん!!」も最終回。ただ「映画化」が決まり、もう少し作品世界を楽しめそうです。
シリーズのまとめを書こうと思っていましたが、
余りにも膨大になりそうなので、ちょっと最近考えていた事を書きます。
それは
「なぜ、けいおん!が話題になるのか、人気なのか?」という事でした。
「アニオタ保守本流」さんの作品への批判的な問題提起も
あずにゃんのいわゆる「ぼっち問題」も含めて、
けいおんを巡る言説の「熱量の源泉」はどこからもたされるのか?こうした諸言説の議論より、この
「熱量の源泉」が気になってきました。
この熱量の源泉は
「現実感」「現実を元にした描写」という
キーワードによってもたらされるのではと考えています。
それでは、お話させていただきます。
① 小道具 けいおん!でまず興味深い出来事、視聴者にニュースになった事とといえば、
1期に澪がつけていたヘッドフォンや
彼女達が使用していたギターやベースが人気を呼び大ヒットした事でした。実際に楽器屋さんに行くと「けいおん!コーナー」が登場して驚いたものです。
実はこの楽器やヘッドフォンが売れたこと。
これが私が気になる「熱量の源泉」の理由の全てなのかもしれません。
つまり「けいおん!」は視聴者を現実世界でアクションを起こさせる熱量を持っている事が
この彼女達が使用していたアイテムが売れたことでわかります。では、なぜ売れたのか?
当たり前の話ですが、現実に実在するギターやヘッドフォン商品そのものを描いたからです。
例えば、ただ記号的にギターやベース、ヘッドフォンを描いた場合
商品が特定もできないので、売れようがありません。
「けいおん!」世界のアイテムは、特定できる実在のものを写生しているのです。
もちろん、見ている側が購入を訴求できるよう魅力的に描かれています。
ここで重要なのは、
作品という虚構の世界と我々が存在する現実の世界が、
このヘッドフォンやギターを通して繋がる事なのです。つまり「けいおん!」は虚構の世界、フィクションでありながらも
現実のアイテムが登場する事で、現実との距離感、現実との接点性をもってしまうのです。
こうした現実と接点を持たせる、現実に存在するものを作品に登場させるのは
彼女達の楽器だけに留まらず、彼女達が食べていたパン、楽器を直す工具、
携帯電話、車、他にもあげればキリが無いでしょう。
この一つ一つの小道具の描写は我々に意識上・無意識に関わらず、
現実との接点を認識させ、我々の意識に刷り込まれていくのです。
② 舞台背景他にも彼女らが使っている楽器やヘッドフォンだけでなく、
現実と接点を持つ点に「
実在する場所」を写生している点も挙げられます。
けいおんの制作会社は京都アニメーションです。
そして地元京都をロケ地にして、現実にある場所をそのまま描いています。
ただ楽器やヘッドフォンと違う点は、アイテムは調べれば近くで売っているかもしれない。
ネットでも調べられる。要は現実で触れられる可能性が高いわけです。
しかしロケの場所については、基本的に作品を見た地元の人でないとわからないでしょう。
ここで重要なのは
「現実にある場所」をそのまま描くという行為そのものが
我々の現実世界と作品の虚構世界を繋ぎ合わせてしまうという事なのです。私達はけいおん!で描写される現実にあるけどどこにあるのかまでは知らない場所。
夏フェス会場でも、マラソン大会中の道のり、演奏を行った会場、その他もろもろ。
これら「現実にある場所」を描写することが、その場所を知らなくても
「こうした場所は現実にあるんだ」と無意識下で我々に刷り込ませられ、
結果我々のリアルが侵食され、現実との接点を持たせているのです。③ キャラクターの造形次に挙げたいのが、
「キャラクターの描かれ方・造形」です。
けいおん!のアニメは原作のマンガと比べてのお話ですが、
まずキャラクターのプロポーションがとてもリアルに描かれています。
それは頭身から体の肉付きといった部分において顕著に現れています。
多くのアニメで出てくる「ありえない巨乳」みたいなキャラは出てきません。
またキャラクターの顔も極めてアニメやマンガ的な記号を使いながらも
魅力的に、かつリアルチックに描かれています。
そして、例えば腕の振り方や歩き方は各キャラそれぞれに違うなど
動きや仕草・動作・挙動の違いがキャラの個性を表現しているのです。
またこうした個々の動作や仕草といったキャラの芝居的なものも含めて
きわめて忠実にそしてリアルに人間に即して描かれています。アニメ特有の激しい動きやデフォルメされた動きは殆どありません。
この唯と紬の体型が一番象徴的でしょうか。
美化せず、それでいて等身大の体型を描いているように思えます。
その為一概にキャラクターといっても、現実を観察して描かれているので
極めて写生的・現実的であり、キャラクターが現実と拮抗した力を持っている。
つまりキャラクターに力があると言いたいのです。それは
「こうしたキャラクターが現実に存在するのかもしれない」という事を
ここでも我々の意識の中に刷り込ませるという手法なのです。
一つ比較の為に例を出します。例えば学園黙示録に出てくる巨乳の先生。
あんなデカイおっぱいをして、括れている人は現実にはそうはいないでしょう。
ここで我々は、「あの先生の体型ありえない=現実的でない、非現実的」という
メッセージを自覚・無自覚に関わらず受け取ってしまっているのです。
そうすると、学園黙示録という作品はキャラクターのプロポーションの分だけ
作品世界のリアル感が損なわれているわけです。
④ 結論ここまでで何が言いたいのか、
描写の積み重ねでしかリアルさを獲得できないという事です。
「けいおん!」は作品のお話以前に描写の一つ一つがリアルなのです。
現実に訴えかける力がある。だから我々は語りやすいのです。
押井守監督は
「現実から出発する事でしか嘘が作れるわけが無い」と言っています。
言い換えれば
「作品世界の虚構性の中に生じるリアリティやリアル感は、
現実を観察して徹底的に描写しなければ獲得できない。」だから「けいおん!」は現実の丁寧な観察によって、虚構性を獲得し
それがゆえに現実との接点性も獲得する事によって我々のリアルを侵食する。
その為に、作品内である種のリアルを突きつけられるために
我々はけいおん!を語りたくなってしまうという点にあるのではと考えています。
また言い換えれば、現実的に感じられるからこそ語ってしまうという意味では
ニュースや時事の問題と同列に語れてしまうという側面もあるのかもしれません。
結論的を申せば、最初の問題提起の
「けいおんを巡る言説の熱量の源泉」は
リアルな描写、またはリアルに見える虚構的な部分がまず理由の一つだと考えます。
正直、まだまだこのお話は語りきれない部分があるので、
シリーズ化できればと考えています。
それでは!!
最終回の感想記事は
「こちら」になります。
合わせてご覧頂ければ、嬉しいです!!
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① 小道具 けいおん!でまず興味深い出来事、視聴者にニュースになった事とといえば、
1期に澪がつけていたヘッドフォンや
彼女達が使用していたギターやベースが人気を呼び大ヒットした事でした。実際に楽器屋さんに行くと「けいおん!コーナー」が登場して驚いたものです。
実はこの楽器やヘッドフォンが売れたこと。
これが私が気になる「熱量の源泉」の理由の全てなのかもしれません。
つまり「けいおん!」は視聴者を現実世界でアクションを起こさせる熱量を持っている事が
この彼女達が使用していたアイテムが売れたことでわかります。では、なぜ売れたのか?
当たり前の話ですが、現実に実在するギターやヘッドフォン商品そのものを描いたからです。
例えば、ただ記号的にギターやベース、ヘッドフォンを描いた場合
商品が特定もできないので、売れようがありません。
「けいおん!」世界のアイテムは、特定できる実在のものを写生しているのです。
もちろん、見ている側が購入を訴求できるよう魅力的に描かれています。
ここで重要なのは、
作品という虚構の世界と我々が存在する現実の世界が、
このヘッドフォンやギターを通して繋がる事なのです。つまり「けいおん!」は虚構の世界、フィクションでありながらも
現実のアイテムが登場する事で、現実との距離感、現実との接点性をもってしまうのです。
こうした現実と接点を持たせる、現実に存在するものを作品に登場させるのは
彼女達の楽器だけに留まらず、彼女達が食べていたパン、楽器を直す工具、
携帯電話、車、他にもあげればキリが無いでしょう。
この一つ一つの小道具の描写は我々に意識上・無意識に関わらず、
現実との接点を認識させ、我々の意識に刷り込まれていくのです。
② 舞台背景他にも彼女らが使っている楽器やヘッドフォンだけでなく、
現実と接点を持つ点に「
実在する場所」を写生している点も挙げられます。
けいおんの制作会社は京都アニメーションです。
そして地元京都をロケ地にして、現実にある場所をそのまま描いています。
ただ楽器やヘッドフォンと違う点は、アイテムは調べれば近くで売っているかもしれない。
ネットでも調べられる。要は現実で触れられる可能性が高いわけです。
しかしロケの場所については、基本的に作品を見た地元の人でないとわからないでしょう。
ここで重要なのは
「現実にある場所」をそのまま描くという行為そのものが
我々の現実世界と作品の虚構世界を繋ぎ合わせてしまうという事なのです。私達はけいおん!で描写される現実にあるけどどこにあるのかまでは知らない場所。
夏フェス会場でも、マラソン大会中の道のり、演奏を行った会場、その他もろもろ。
これら「現実にある場所」を描写することが、その場所を知らなくても
「こうした場所は現実にあるんだ」と無意識下で我々に刷り込ませられ、
結果我々のリアルが侵食され、現実との接点を持たせているのです。③ キャラクターの造形次に挙げたいのが、
「キャラクターの描かれ方・造形」です。
けいおん!のアニメは原作のマンガと比べてのお話ですが、
まずキャラクターのプロポーションがとてもリアルに描かれています。
それは頭身から体の肉付きといった部分において顕著に現れています。
多くのアニメで出てくる「ありえない巨乳」みたいなキャラは出てきません。
またキャラクターの顔も極めてアニメやマンガ的な記号を使いながらも
魅力的に、かつリアルチックに描かれています。
そして、例えば腕の振り方や歩き方は各キャラそれぞれに違うなど
動きや仕草・動作・挙動の違いがキャラの個性を表現しているのです。
またこうした個々の動作や仕草といったキャラの芝居的なものも含めて
きわめて忠実にそしてリアルに人間に即して描かれています。アニメ特有の激しい動きやデフォルメされた動きは殆どありません。
この唯と紬の体型が一番象徴的でしょうか。
美化せず、それでいて等身大の体型を描いているように思えます。
その為一概にキャラクターといっても、現実を観察して描かれているので
極めて写生的・現実的であり、キャラクターが現実と拮抗した力を持っている。
つまりキャラクターに力があると言いたいのです。それは
「こうしたキャラクターが現実に存在するのかもしれない」という事を
ここでも我々の意識の中に刷り込ませるという手法なのです。
一つ比較の為に例を出します。例えば学園黙示録に出てくる巨乳の先生。
あんなデカイおっぱいをして、括れている人は現実にはそうはいないでしょう。
ここで我々は、「あの先生の体型ありえない=現実的でない、非現実的」という
メッセージを自覚・無自覚に関わらず受け取ってしまっているのです。
そうすると、学園黙示録という作品はキャラクターのプロポーションの分だけ
作品世界のリアル感が損なわれているわけです。
④ 結論ここまでで何が言いたいのか、
描写の積み重ねでしかリアルさを獲得できないという事です。
「けいおん!」は作品のお話以前に描写の一つ一つがリアルなのです。
現実に訴えかける力がある。だから我々は語りやすいのです。
押井守監督は
「現実から出発する事でしか嘘が作れるわけが無い」と言っています。
言い換えれば
「作品世界の虚構性の中に生じるリアリティやリアル感は、
現実を観察して徹底的に描写しなければ獲得できない。」だから「けいおん!」は現実の丁寧な観察によって、虚構性を獲得し
それがゆえに現実との接点性も獲得する事によって我々のリアルを侵食する。
その為に、作品内である種のリアルを突きつけられるために
我々はけいおん!を語りたくなってしまうという点にあるのではと考えています。
また言い換えれば、現実的に感じられるからこそ語ってしまうという意味では
ニュースや時事の問題と同列に語れてしまうという側面もあるのかもしれません。
結論的を申せば、最初の問題提起の
「けいおんを巡る言説の熱量の源泉」は
リアルな描写、またはリアルに見える虚構的な部分がまず理由の一つだと考えます。
正直、まだまだこのお話は語りきれない部分があるので、
シリーズ化できればと考えています。
それでは!!
最終回の感想記事は
「こちら」になります。
合わせてご覧頂ければ、嬉しいです!!
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>作品内である種のリアルを突きつけられるために
>我々はけいおん!を語りたくなってしまうという点にあるのではと考えています。
そうですね、その通りだと思います。
特にけいおんの場合は、ほとんどの人が通る日常的な高校生活という舞台でリアルを突きつけて来るものだから、誰しもが色々な意見を持つのだと思います。
それぞれが経験して、実際に考えを持ちながら歩いてきた道でもありますし。
部活もそうだし、受験もそうだし、卒業もそう。
ほとんどが視聴者の中にリアルな体験として残ってるものなんですよね。
そうするとやっぱり自分語りではないですけど
自分と照らし合わせてしまって自然と熱もこもるのかなと。
受験の件なんかでは結構色々な意見が飛び交っていましたが、
(特に4人が揃って同じ大学という点)
それもやっぱりそれぞれが色々な受験というリアルな体験をしているからだと思うんです。
受験で苦労した方は「そんな簡単じゃない」と思うだろうし
近年の簡単に大学に行ける世代の人達は「それも一つの選び方」で納得できる。
どうしてもそれぞれの体験を元にして考えてしまうんじゃないかなと思います。
視聴者に対して、それぞれのリアルに訴えることのできる作品。
それがけいおん!であり、このアニメに惹き付けられる一つの理由なんでしょうね。
なんか短的に纏めようとしたら逆に纏まりのない文になってしまいました…
すいません…(汗) では、失礼しました><