■ 岡田ジャパンの初戦再スタートの初戦。日本は、<4-4-2>。GK川口、DF内田、中澤、阿部、駒野。MF鈴木、遠藤、中村、山岸。FW巻、高原。鹿島のDF内田が先発出場でAマッチデビュー。スタメンの考えられた、MF山瀬、FW大久保らがベンチスタート。
試合は、選手ごとにコンディションにバラツキのある日本が前半はやや劣勢の展開。しかしながら、最終ラインの阿部と中澤が奮闘する。
後半に入ると、MF羽生とFW大久保の投入が効果的に働いてチャンスを作るようになる。しかしながら、FW大久保がなかなかチャンスに決められず、スコアレスドローに終わった。
■ コンディションの差FW高原を除くと全ての選手がオフ明けということもあって、日本の選手はコンディションにバラツキがあった。FW巻、DF阿部、DF中澤らは、普段と変わりない動きを見せたが、FW高原、DF駒野、MF山岸ら、オフに所属クラブを変えた選手のコンディションはいまひとつだった。チームが固まっている状況であればコンディションの悪さをごまかせたかもしれないが、新しいチームにとっては、酷な状況だった。
考えてみると、DF内田とDF駒野、DF岩政らは、元日の天皇杯決勝まで先シーズンを戦っていたので、実質、オフはほとんど無かったといえる。それ以外の選手にしても、1月末の段階でコンディションをある程度まで上げておくように要求するのは、今後、長いシーズンを闘うことを考えると、厳しいことである。
■ 気になる高原のコンディションなかでもFW高原である。紅白戦でも好調だったというFW巻は状態の良さをアピールしたが、2トップを組んだFW高原は、キレを欠いた。時間が経つごとに少しずつチャンスに絡むようになったが、本来のプレーではなかった。FW高原はフランクフルトでプレーしていたので、オフだったわけではないが、浦和への移籍もあって、心身ともに疲労の要因となることも多かっただろう。
仕方ないとはいえ、今日の状態であれば、タイ戦までにコンディションを上げるのは、かなり難しい状態であるように思える。高原は、岡田ジャパンでも絶対的なエースになりうる選手であるが、先を見据えて外すことも選択肢に入れるべきだろう。それほど、状態は良くないように見えた。
■ 活性化を促した大久保一方、FW高原に代わって後半17分から出場したFW大久保は、積極的な裏への飛び出しで多くの決定機を作った。シュートチャンス4本をフイにしたことで評価は分かれるだろうが、たくさんの決定機を作ったことは評価したい。
FW高原のコンディションがこういう状態なので、次戦以降、FW大久保をスタメンで起用することも視野に入れたいところである。
背の低い選手の多いタイ戦ということを考えると、高さのあるツインタワーも効果的課も知れないが、巻と高原の2トップとなると、縦にスピードのある攻撃がなかなか出来ずに、硬直することが多いので、アジアカップでも露呈した。大久保や播戸といった選手を起用した方が、スムーズにいきそうだ。
■ つなぐ意識の強さ攻撃面では、チリもショートパス主体のサッカーだったが、日本も同様に、ショートパス主体のサッカーを見せた。しかしながら、つなぐ意識が強いあまり、低い位置でパスカットされてピンチを迎えるシーンもあって、うまく機能しなかった印象も残った。いきなり南米で個人能力の高いチリとの対戦となったのは、幸か不幸か、岡田ジャパンの意図したサッカーを相手に披露される形となった。
鈴木・中村・遠藤・山岸という中盤は、オシムジャパンでもコンビを組んだ選手たちだが、中村のポジションはやや高めで、鈴木の1ボランチ気味に近い形だった。立ち上がりは、MF山岸の大きな動きからチャンスを作りかけたが、次第に機能しなくなった。
前半10分過ぎに、流れるようなパス回しからMF遠藤のスルーパスを受けたFW巻がGKと1対1になりかけたシーンが一番良かったシーンだったが、チームで意図したプレーが形になって表現できたのは、この場面くらいだった。
ただ、狭い局面を打開できるとビッグチャンスに繋がることは明らかであり、その精度を上げていくことと、状況判断を上げて必要以上のリスクをかけないようにすることが求められる。
■ 再考が必要な中盤チリのプレスが厳しかったという理由もあるが、オシムジャパンではもっとMF中村憲剛が自由にプレーできていて、中村の位置で基点が出来ることが多かったが、この試合では自由を与えられなかった。遠藤も中村も、ドリブルよりもパスに持ち味のある選手だが、プレーエリアがプレースタイルがかぶってしまうこともあった。
MF山岸に代えてMF羽生を入れたことで流れが少し良くなったが、1ボランチにしたことによるメリットよりもデメリットの方が大きかった。多彩なタレントがいるポジションなので、次戦ではいろいろと試したいところである。
■ 駒野の不調DFラインでは、DF駒野のコンディションも悪かった。終了間際になってチャンスに絡むようになったが、単純なパスミスが多く、駒野がサイドを駆け上がってクロスを送るシーンは2度ほどで、片翼となってしまった。
左サイドバックのポジションは、DF安田が落選したため、事実上、駒野しかいないという状況なので、駒野に期待するしかないが、最悪のことを考えてDF安田を再招集することも考えたい。
また、現在のコンディションは不明だが、左足のキッカーがいないことも考えると、DF三都主という選手も無視できない。サイド攻撃はこのチームでも不可欠であって重要なポジションなので、不安は残る。
■ 合格点のデビューAマッチ初出場となったDF内田は、合格点のデビュー戦となった。前半はやや控えめだったが、後半になるとサイドを積極的に駆け上がった。対面したチリの13番の左利きの選手は、スピードのある選手だったが、最初にサイドを突破されたシーンを除くと、うまく対応した。
この試合で、DF加地に優るものを見せられたかというと疑問だが、バックアッパーとしては十分な能力を持っていることを示した。
■ タイ戦に向けてとにかく、タイ戦までは、あと10日しかない。残りは、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦だけである。現段階では、オシムカラーを受け継ぎながら、コンディションに優れた選手を優先して起用してしのぐのが得策だろう。
今はダイナミックな変革を求めるだけの時間は無く、無難に戦って、とりあえずタイ戦で勝ち点3を獲得することを目指すべきだろう。実力差はあってホームということも有るので、余裕が無いわけではないが、勝利を逃すようだと、この後、チーム作りにおいて無理をしなければならない状況になる。当面は、理想を掲げつつ、現実的に戦っていくのがいいだろう。
まずは、期待と不安の入り乱れる最低限のスタートとなった。
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