■ 石井正忠監督が解任される。Jリーグ王者の鹿島アントラーズには「初のアジア制覇」が期待されていた。ACLのラウンド16で「アジア最強クラブ」とも言われる広州恒大と対戦したがアウェイの1stレグは0対1の敗戦。ホームの1stレグは2対1で勝利して2試合合計で1勝1敗。2得点/2失点となったが、アウェイゴールの差で惜しくもベスト8進出はならなかった。互角の勝負を繰り広げて「紙一重の差」だったので非常に残念な結果に終わった。
悲願である「アジア制覇」を果たすことはできなかったが、広州恒大戦(H)の翌日の5月31日(水)に石井監督が電撃的に解任されて大岩コーチが監督に昇格することが発表された。大岩氏は元日本代表のCBで現役時代は名古屋・磐田・鹿島でプレーした。キャリアの大半を「タイトルを狙える強豪チーム」でプレーしてきた選手なので勝者のメンタリティを持った指導者であるがトップチームの監督は初挑戦となる。
大岩新監督は鹿島に在籍した2010年限りで現役を引退した。以降はずっと鹿島でコーチを務めてきた。サテライトチームの監督を兼任してきたが本人が一番困惑しているだろう。現役時代に日本代表でプレーした元JリーガーのCBがJリーグのクラブの監督を任される機会がここに来て増えているが「当たりとハズレの差は大きい。」という印象。井原監督(福岡)は成功者と言えるが、大岩監督はどちらに転ぶだろうか・・・。
■ ホームで早くも5敗・・・。大岩監督にとってとてつもなく大きな挑戦になるが、石井監督の解任というのは全く予想できなかったので驚きだった。ACLはGLを首位で通過したがラウンド16で広州恒大に敗れた。一方、J1のリーグ戦はここまで7勝5敗で勝ち点「21」。アウェイでは5戦全勝と無類の強さを発揮しているが、ホームの県立カシマサッカースタジアムでは2勝5敗と低迷。この時期に「ホームで5敗」というのは信じがたい成績である。
直近のリーグ戦は12節の川崎F戦(H)だったが0対3で敗れている。この敗戦でリーチがかかってACLのベスト8進出を逃した時点で鹿島のフロントは「解任」を決断したと推測されるが、解任の理由としては『総合的に判断した結果』と報じられている。普通のチームであれば「ACLでベスト16。J1のリーグ戦では7勝5敗」という成績は『なかなか良い。』と言えるが鹿島からすると「やや不十分な成績」とも言える。
Jリーグ開幕後の監督交代はJ1では新潟の三浦文丈監督、大宮の渋谷監督に次いで3件目となるが、開幕から下位に低迷していて浮上のきっかけをつかめずにいた新潟や大宮とはやはり事情や状況が大きく異なる。三浦文丈監督や渋谷監督については早い段階から「監督交代」の噂が流れていたので実際に退任が発表されたニュースを見聞きしても驚きは無かったが、石井監督の退任は予期せぬ出来事と言える。
■ 20数年の歴史の中で5回目となる途中での監督交代もちろん、いろいろなことを総合して判断した結果だと思う。ホームで5敗というのは重く受け止めなければいけないが、それでも「鹿島らしくない選択だった。」と感じる。Jリーグ開幕以降で鹿島で監督を務めた経験があるのは代行監督を含めてものべ13名のみ。シーズン途中で監督が交代したのは4回(1994年・1998年・1999年・2015年)のみ。20数年の歴史の中で4回のみというのは非常に少ないと言える。
もちろん、大半のシーズンで優勝争いに絡んできた「Jリーグで屈指の名門クラブ」である。「下位に低迷して残留争いに巻き込まれる。」というケースはほぼ無かったが、やはり、目標が非常に高いクラブである。「タイトルを獲得できなかったら意味がない。」という高い意識でシーズンを戦っている選手が多いので高い目標に到達できないシーズンは何度もあったがそういうケースでも監督交代はほぼ無かった。
ブレることなく監督とスタッフと選手が一体となって戦うことが出来る点が鹿島の大きな強みであり、思うような結果が出ない時期も監督をサポートして一致団結して戦って困難を乗り越えてきたクラブなので「監督を代えた方がいいのでは?」という声がほとんど挙がっていない状況での監督交代というのは明らかに異質である。「求心力の低下」など外部の人間が知ることは難しい何か大きな理由があるのだろう。
■ 勿体なく感じるこのタイミングでの監督交代個人的にはこの時点で石井監督のクビを切るのは非常にもったいなく感じる。後任候補として実績のある指導者が控えているのであればそういう選択もアリなのかもしれないが、後任監督に決まったのはトップチームを率いるのは初めてとなる大岩コーチである。「下位に低迷していて二進も三進も行かない状況。とにかく(誰でもいいので)監督を代えなければいけない。」という切羽詰まった状況ではない。
もちろん、大型補強に成功しながら新加入選手を十分に生かし切れていない点はマイナス評価につながる。取りこぼしが目立つのは当然のことながら監督にも責任があるが、6節のC大阪戦(H)や8節の磐田戦(H)あたりは「決定機は作れているのに最後のシュートが決まらない。」という展開だった。最終的には全ての責任を負うのが監督という仕事であるが、選手側に責任がある取りこぼしの方が多かったように感じる。
石井監督にとっては無念の解任だと思うが、2015年の途中にトニーニョ・セレーゾ監督の後を受けてからの約2年間は充実した日々を過ごすことが出来たのではないか。2016年には2冠を達成。クラブW杯では準優勝に輝いた。(ピークの時期と比べると少し下がっているがそれでも)監督としての評価が高いままでの解任なので優秀な監督を探しているクラブにとっては魅力的な指導者である。リベンジを期待したい。
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