■ 収穫のあったFC東京の2試合目ACLの第2節は3月1日(火)と3月2日(水)に行われるが、初日に登場した日本勢はサンフレッチェ広島がアウェイでFCソウルに1対4の大敗。FC東京はホームでベトナムのビン・ズオンに3対1で逆転勝利を飾った。FC東京はこれで1勝1敗。前半24分に先制ゴールを許したが後半の頭から登場したFW阿部拓が大活躍。ゴールやアシストといった目に見える結果を残したわけではなかったが流れを変える働きを見せた。
FW阿部拓が文句なしでこの試合のMOMと言えるが、FC東京にとって収穫の1つと言えるのはFWネイサン・バーンズとFWサンダサという助っ人コンビがいずれもゴールに絡んだ点。昨シーズンの途中にFW武藤嘉の穴を埋めるべくFC東京に加入したものの思うような活躍ができずに苦しんでいた両助っ人がチームに貢献できたのは非常に良かった。アタッカーの起用法で城福監督は嬉しい悩みを抱えることになった。
さらには高卒2年目で19歳の左SBのDF小川諒が2点目と3点目のゴールに絡んだこともFC東京にとっては収穫と言える。SBはDF駒野とDF室屋が共に怪我で離脱中。本職ではないDF橋本拳をコンバートして起用するなどやり繰りで苦労していたので本格派の左SBのDF小川諒が公式戦初出場で輝きを放ったのは喜ばしい話である。180センチとSBとしてはサイズがある。日本では珍しいスケールの大きい左SBである。
■ GL突破は相当に厳しくなったサンフレッチェ広島勝利したFC東京はひとまず落ち着くことができるが、2連敗となった広島は早くも決勝トーナメント進出に黄色信号が灯った。2015年のACLではG大阪が2連敗から巻き返して決勝トーナメントに進出しているので、当然のことながら、数字上の可能性は残されているが同様に2連敗スタートとなったブリーラムU戦で山東魯能やFCソウルが取りこぼすことはあまり期待できない。大逆転でのGL突破はかなり難しい。
初戦の山東魯能戦(H)を落とした広島にとって2戦目のFCソウル戦(A)は「絶対に負けられない試合」だった。『勝てば最高であるが、引き分けでも次につながる貴重な勝ち点「1」になる。』と言えたが、結果は前半25分にDF千葉のゴールで先制したものの、ここから4連続失点で逆転負け。FWアドリアーノに2試合連続のハットトリックを許した。山東魯能戦(H)でも逆転で敗れているので2試合連続の逆転負けとなった。
ソウル戦(A)の1失点目はCKから、2失点目はFKからゴールを許した。初戦の山東魯能戦(H)の1失点目もCKから奪われているので『セットプレーの守備』が大きな弱点になっている。昨シーズンまでは空中戦に強いMFドウグラスがある程度のレベルで跳ね返してくれたが、代役候補の1人であるMFピーター・ウタカに同じようなプレーを期待するのは難しい。「隙が無さそうな広島の数少ない付け入る隙」と言える。
■ 恒例行事となるACLでの選手起用への批判最大のライバルとなる韓国も中国のクラブもリーグ戦やカップ戦で好成績を残したチームばかり。簡単な戦いにはならないのは確か。タイやベトナムのクラブも経験値を積み上げており、「思うような結果が出ないこともある。」と言えるが、広島はJリーグ王者としてACLに参加しているので「GL突破は最低限のノルマ」であり、「決勝トーナメントに進出できなかったら批判されても仕方がない。」と言える。
毎度の話であるが、広島の森保監督はACLよりもリーグ戦を重視する傾向にある。ゼロックスのG大阪戦、GLの初戦の山東魯能戦(H)、J1の開幕節の川崎F戦(H)、GLの2試合目のFCソウル戦(A)のスタメンの顔ぶれを見ると一目瞭然。G大阪戦と川崎F戦は「現状でベストと思われる11人」が起用されており、ACLの2試合については「(替えの効かないGK林卓やDF塩谷やDF千葉を除くと)若手中心のメンバー構成」だった。
当然のことながら、これほどの過密日程なのですべての試合を「ベストメンバー」で乗り切るのは不可能である。中2日や中3日の試合が続く中でスタメンを固定してた戦うのは逆に非効率的である。主力を適度に休ませながら乗り切ろうとするのはJリーグでもごく当たり前のことになっているが森保監督は「ACLでは使わない。」と決めた選手(=ベテラン組)は徹底して使わない。分かりやすい選手起用を行っている。
なので選手起用に対して一定以上の批判の声が集まるのは広島がACLに出場したときの恒例行事になっている。もちろん、2014年のときのようにGLを突破して決勝トーナメントに進出することができれば批判の対象にはならないが、リーグ王者として参加した2013年は0勝3敗3分け。今年も開幕2連敗スタート。結果を出すことができないと「ACLに対する本気度がちょっと低いのではないか?」と批判される。
■ 「J1のリーグ戦 > ACLの戦い」広島の場合、明らかに優先順位が「J1のリーグ戦 > ACLの戦い」と設定されている。他チームの多くは連戦になったときはその時々で「どちらを優先すべきか?」を判断しており、特に開幕して間もない時期は(ACLの方が短期決戦であることも絡んで)ACLを優先する傾向にある。開幕の鹿島戦(H)でFWパトリックやMF宇佐美を先発で起用しなかったG大阪のケースが典型と言えるが広島ではそういうことはほぼ無い。
「ACLの戦いを優先した結果、国内リーグが疎かになって低迷する。」というのは良くあるパターンなので、ドライに「J1のリーグ戦 > ACLの戦い」と判断して戦ってきたことが国内リーグで広島が安定した好成績を残してきた理由の1つと言えるが、Jリーグを代表してACLに出場しているので『もう少しACLにウェイトを置いた戦いを選択してもいいのでは?』と感じる人が多くなるのはごく当たり前の話である。
もちろん、広島は選手層が非常に厚いチームなのである程度はターンオーバーを採用しても大丈夫であるが、それでも「FW佐藤寿やMF森崎和やMFミキッチに匹敵する選手がベンチに控えているのか?」というと『No』と言える。ベストに近いメンバーを起用したからと言って必ずACLで勝利できるわけではないが、『この選手がいたらもしかしたら勝てたのではないか?』となるとモヤモヤした気持ちになる。
他クラブのサポーターは「やっかみ」や「失望感」から広島の選手起用を批判するが、批判されることが恒例行事になっているので森保監督や広島のサポーターも必要以上に頑なになっており「最善の選択」ができていないようにも感じるときもある。いずれにしろ、広州恒大や全北現代といったアジア屈指の強豪相手にも十分に太刀打ちできる総合力があることは明らかなだけにACLで結果を出せていないのは残念である。
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