■ 早くも5ゴール目と好調昨オフにセレッソ大阪からオーストリアのザルツブルクに移籍した20歳のFW南野。2014-2015シーズンは13試合で3ゴールという成績だったが今シーズンは絶好調。オーストリアの国内リーグ戦では8試合を終えた時点で早くも5ゴール。9月12日(土)に行われたグレーディヒ戦では2ゴールを挙げるにとどまらず、裏への抜け出しからPK(&レッドカード誘発)も獲得するなどチームの4対2の逆転勝利に大きく貢献した。
グレーディヒ戦のゴールシーンを映像で確認することができたが、2点目がいいゴールだった。ポストに入った味方選手からダイレクトのパスを引き出すと、一瞬のスピードと正確なボールコントロールで相手を振り切ってキーパーと1対1の形を作る。そして、最後は倒れ込みながらゴールに流し込んだ。1点目もエリア内で相手をかわしてから左足で決めたいいゴールだったが、2点目はそれ以上にいいゴールだった。
同じC大阪から欧州に巣立ったMF香川、MF乾、MF清武、FW柿谷などと比較されることが多いが、MF香川やMF乾やMF清武と比べるとはるかにストライカー色の強い選手である。C大阪のトップチームに昇格した時はFW柿谷がエースとして君臨していたので左SHに回ることが多かったが、本来はゴール前になればなるほど力を出す選手であり、FW柿谷と比べてもワンランク・ストライカー色の強い選手である。
■ FWロマーリオのような選手になるかと思ったが・・・。ゴールシーン以外のプレーもいくつか見ることが出来たが、裏に抜け出してボールを受けようとするシーンが多いのは好印象。良くないときのFW南野は足元でボールを受けて強引にドリブルで仕掛けるプレーが多くなるが、ボールを引き出す動きができているのは非常にいいことだと思う。もちろん、MF永井謙やFW浅野拓クラスのスピードはないが標準をはるかに上回るスピードを持っている。裏を狙うのは効果的である。
FW南野の魅力は何といってもゴール前で生きるテクニックを持っている点である。例えばMF乾やMF清武と比べるとバイタルエリアでボールを扱うプレーはそこまで得意ではない。バイタルエリアの狭いスペースで無理にボールを受けようとしてロストするプレーが多い点はFW南野の改善点の1つだと思うが、一方でゴール前になればなるほど冷静にプレーできるようになるタイプで天性のストライカーである。
高校時代のFW南野のプレーを観たときは「典型的なボックスストライカー」であり、「将来的には元ブラジル代表のFWロマーリオのような選手になるのではないか。」と思った。ゴール前でのポジショニングが抜群で、中央の下がった位置からドリブルで仕掛けるプレーを得意にしていた点がFWロマーリオを彷彿とさせたが、それ故、C大阪のトップチームで左SHをそつなくこなす姿を見たときは少し驚いた。
最大の武器である「ボックス内でのプレー」を出しにくいポジションでプレーすることが大半だったのでC大阪での2年間は思ったほどのゴール数を記録することができなかったが、「SHとして守備力」や「タッチライン際での突破力」や「エリア外からのミドルシュート」などを習得・勉強できたのは『FW南野自身のプレーヤーとしてのレベルアップ』という観点だけを考えるのであれば有意義な経験だったと言える。
■ 「南野待望論」が浮上してもおかしくない状況過去のエントリーで何度も記述しているので繰り返しになるが、(サイドハーフでも十分にプレーできるとは思うが、)トップ下に近いポジションでプレーして積極的にゴールを狙うような選手か、1トップの位置を任されて味方からのパスが集まってくるような選手に是非とも育っていってほしい。海外の中堅以上のクラブで1トップやトップ下を任されるというのは難易度がかなり高いが、それだけの資質を持っている。
FW南野がプレーしているオーストリアリーグは4大リーグや5大リーグと比べると格が落ちるのは確かだが、ザルツブルクに関しては欧州でも注目されているクラブの1つである。残念ながら今シーズンはELの本大会出場を逃したが、近年は欧州の舞台でも結果を出しており、(2シーズンほど前の話になると思うが、)湘南の曺貴裁監督がザルツブルクのサッカーをよく見て研究していたというのは有名な話である。
ザルツブルクで活躍して4大リーグや5大リーグに引き抜かれた選手はたくさんいるので、当然のことながら、FW南野もより大きなリーグのより大きなクラブにステップアップすることが次の目標で、本人だけでなくクラブもそうなることを望んでいるところもある。もちろん、内容も大事になってくるが、分かりやすいアピールポイントになるのはゴール数である。いい感じでシーズンをスタートすることができた。
FW南野はブラジルW杯直前の2014年の4月にザックジャパンの日本代表候補合宿に呼ばれているが、ザルツブルクでこれだけの活躍を見せていると「FW南野を日本代表に呼んだらどうなのか?」という話は出てくるだろう。むしろ、しばらくの間、このくらいの活躍を続けていれば「何故、FW南野を招集しないのか?」という人は増えてくるはず。「南野待望論」が浮上してもおかしくない状況になりつつある。
当然、「若ければOK」というわけではないが、男女のバレーボールの日本代表などを観ていると若くて才能のある選手が代表チームに入ってくると期待値や注目度は高くなるし、他の選手たちの刺激にもなる。華やかなムードになるところも大きなプラスの材料と言えるだろう。日本代表のアタッカーのポジションは一番の激戦区と言えるので競争は激しいが、一度、呼んでも面白いのではないかと思う。
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