■ 監督がいなくなるというアクシデントを乗り越えて・・・今年の8月に静岡県内で行われた全日本少年サッカー大会の決勝も柏とC大阪の対戦だった。このときはPK戦の末、C大阪U-12が柏U-12を下して小学生年代の日本一に輝いたが、高校年代の決勝戦も同じカードになって、結果はまたしてもC大阪の下部組織が勝利した。J2に降格するなどいいことが少なかった今シーズンのC大阪であるが、U-12とU-18の日本一というのは非常に明るい話題である。
C大阪U-18は今シーズンの途中に大熊監督がトップチームの監督に就任したため、村田コーチが後を託された。「チームのことをよく分かっている。」という理由があったにせよ、下部組織で監督を務めている指導者をシーズン途中でトップチームの監督に据えるというのは全くいいことではないが、「大事な時期に監督が不在になる。」というアクシデントを乗り越えて見事に初優勝を飾った。
C大阪はU-18で育ったDF温井、MF阪本、MF西本、FW前川、MF沖野だけでなく、三菱養和SCユースのDF池田樹雷人と、神戸U-18のMF米澤令衣の加入も決まっており、実に7人の高校生がトップチームに加入することになった。J2降格が決まって、何人かの主力の退団は避けられないが、彼らにとっては大きなチャンスであり、この中の何人かは1年目からJ2で出場機会を得ることになるだろう。
目立ったのは10番のFW前川と左SBのDF温井の2人で、FW前川はボールの持ち方が人とは違っており、攻撃のアクセントになることができる。DF温井は177センチとサイドバックとしてはサイズもあって、左足のキックの精度も非常に高い。左SBのレギュラーのDF丸橋の去就が微妙とされていたが、残留が決まった。DF温井にとっては大きな壁となるが、身近なところにいいお手本がいるというのは幸せである。
■ 全国から有望株を集めるようになったC大阪個の選手も光ったが、C大阪U-18で印象に残ったのは強烈なプレッシングである。「運動量には自信がある。」、「最後まで運動量が落ちないようなトレーニングをしてきた。」と選手たちはコメントしていたが、前からの守備は相当なレベルだった。大熊監督がトップチームの監督に昇格した後は、トップチームも前線から守備がかなり良くなったが、これが大熊監督の持ち味と言えるのだろう。
決勝ゴールを決めたMF高田は「スマイス・セレソン」というクラブの出身である。ちょっと紛らわしいが、「セレッソ」ではなくて、「セレソン」で、C大阪の下部組織ではない。C大阪U-18の選手の出身クラブを見ると、2・3年生はC大阪U-15を含めた大阪のチームがほとんどであるが、1年生になると半分以上は「遠方からスカウトして来たのかな?」と思われる選手で、全国から有力選手を獲得しているようだ。
1年生の出身クラブを挙げていくと、「カターレ富山U-15」、「大方フットボールクラブ」、「F.C.コーマラント」、「津ラピド」、「長野フットボールクラブ」、「ソレッソ熊本」、「長崎南山中学校」、「京都紫光クラブ」、「大里FC」、「京都パープルサンガ」など。当然、両親の仕事の都合などで大阪に引っ越してきてC大阪U-18に入団した選手もいるかもしれないが、スカウティングに力を入れ始めているのは間違いない。
高校野球の場合、中学生をスカウトすることは『越境入学』などという言葉を使って否定的に考える人が多いが、もちろん、サッカーにおいては問題視する人は少なくて、そもそもとして、(高校野球にも同じことが言えるが、)問題視するような話ではない。「育成」あるいは「育成力」と言われるが、結局のところはもともとの素材が良くないとプロレベルや代表レベルに育てるのはほぼ無理である。
■ レイソルは準優勝に終わる。一方の柏は大多数の選手が柏U-15出身である。小学生の頃から一緒のチームでプレーしていた選手が多くて、小さい頃から同じようなメンバーで戦ってきたという強みがある。しかも、年代別代表に招集された経験のある選手が非常に多くて、2種登録されてトップチームデビューを果たしているFW大島康のような選手もいるが、この日は期待されたFW大島康を含めて自分たちのサッカーはできなかった。
とにかく、前半の立ち上がりからC大阪のプレスが強烈で、中盤で柏のパスが引っかかるケースが非常に多かった。プレスをかいくぐったときはビッグチャンスになったが、その数はあまり多くなかった。シュート数は柏が8本で、C大阪が9本だったのでほぼ互角だったが、全体的にはC大阪が主導権を握っていた。「1対0でC大阪が勝利した。」という結果は妥当と言えるのではないか。
柏U-18でもっとも名前が知られている選手は96ジャパンのメンバーだったFW会津だと思うが、この日は右ウイングでプレーした。168cmで64kgなのでサイズ的には恵まれていないが、技術が高くて、運動量の多い選手で、球際の強さも持っている。「吉武監督がこういうタイプの選手を好んで起用する。」という面もあると思うが、近年はユース育ちでも泥臭いプレーをする選手が多くなってきた印象がある。
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