■ J1の第3節J1の第3節。2連勝スタートのサンフレッチェ広島と、1勝1敗の浦和レッズがエディオンスタジアム広島で対戦した。広島は11日(火)にACLのセントラルコースト戦(A)を戦ったので過密日程になっている。対する浦和は「Japanese Only」という内容の横断幕が原因で23日(日)に行われるホームの清水戦が無観客試合になった。雑音が多い中でいろいろな因縁がある広島とのアウェー戦となった。
ホームの広島は「3-4-2-1」。GK林卓。DF塩谷、千葉、水本。MF青山敏、森崎和、ミキッチ、山岸、石原、野津田。FW佐藤寿。ACLのセントラルコースト戦はFW佐藤寿やMF森崎和などベテランは試合に出場しなかったが、この試合は現段階でのベストメンバーがスタメンに名を連ねた。右ストッパーのDF塩谷は3試合連続ゴール中とノリに乗っている。MF高萩、FW浅野らがベンチスタートとなった。
対するアウェーの浦和は「3-4-2-1」。GK西川。DF森脇、那須、槙野。MF鈴木啓、阿部、平川、宇賀神、柏木、原口。FW興梠。第2節の鳥栖戦(A)は高さ対策の意味合いがあったのか、DF濱田を右ストッパーで起用して、DF森脇を右WBにスライドさせたが、この日はいつもの布陣に戻した。過去2試合はMF柏木をボランチで起用していたが、MF鈴木啓がスタメンとなって、MF梅崎はベンチスタートとなった。
■ 2対0で浦和が勝利試合の前半は静かな展開となる。両チームとも「3-4-2-1」と採用しており、戦い方もよく似ているので、ミラーゲームとなる。アウェーの浦和がボールを保持する時間が長かったが、広島がしっかりとスペースを埋めて守ったので、浦和は攻撃のスイッチとなる縦パスを入れることができない。0対0でハーフタイムに突入しそうな雰囲気が満載だったが、前半42分に浦和が先制する。
攻撃参加した左ストッパーのDF槙野のスルーパスをきっかけにFW興梠が決定的なシュートを放って右サイドのCKを獲得すると、セカンドボールを拾って右WBのMF平川が右足でニアサイドに精度の高いクロスを入れる。これを直前に決定機を逃したFW興梠がうまく頭で合わせて浦和が先制に成功する。FW興梠は今シーズン初ゴールとなった。前半は1対0とアウェーの浦和がリードして折り返す。
後半になるとビハインドの広島が前掛かりとなる。前半終了間際に相手に先制ゴールを許す展開は、第2節の川崎F戦(H)と全く同じだったが、ACLで豪州に遠征した疲れがあるのか、川崎F戦ほど攻撃に力を注ぐことができない。試合は1対0のままロスタイムに突入すると、後半46分にDFラインの裏でボールを受けたMF原口が個人技から強烈なシュートを突き刺して決定的な2点目を挙げる。
結局、試合は2対0でアウェーの浦和が勝利した。浦和は第2節はホームで鳥栖に0対1で敗れたが、開幕節はアウェーでG大阪に勝利しており、アウェーでは2連勝となった。対する広島はセントラルコースト戦も1対2で敗れているので、公式戦は2連敗となった。浦和は第4節はホームで清水と対戦するが、この試合が無観客試合となる。一方の広島は19日(水)にACLの第3節でFCソウル(H)と対戦する。
■ 因縁のカードと言えるが・・・浦和には広島で活躍した経験のある選手がたくさんいる。MF柏木とDF森脇とGK西川の3人は広島から浦和に移籍した選手で、DF槙野とFW李忠成も広島で活躍して、海外リーグなどを経て浦和に入団した。2006年の途中から2011年まで広島を指揮してチームの土台を作ったペトロヴィッチ監督もいるので、相手チームに対して特別な感情を抱いている選手やスタッフは少なくない。
Jリーグもそのあたりの事情はよく分かっているので、2012年と2013年は2年連続でビッグアーチでの広島と浦和の試合をJ1の開幕節に持って来た。注目度の高いカードであり、特にビッグアーチでの試合は普通の雰囲気ではなくなるが、例の横断幕の騒動があったばかりなので、広島のサポーターも、相手に対して敵意を剥き出しにするのは難しいシチュエーションだった。
もちろん、警察沙汰になるような騒動を起こすことは絶対に認められないが、どの試合も1/34として淡々と済まされるようだと観ている方は面白くない。節度をわきまえた上で、プロレス的な盛り上げ方をすることは、Jリーグがプロスポーツである以上、決して悪いことではないと思うが、あのような騒動が起こってしまうと、広島のサポーターも、浦和のサポーターも、自制せざる得なくなる。
■ 背番号「9」を背負う原口元気大きかったのは前半42分の先制ゴールである。攻撃参加したDF槙野のアイディアのあるスルーパスがきっかけとなってCKを獲得したが、どこかで、誰がリスクを冒さないと、浦和も、広島も、チャンスにつながりそうな雰囲気は無かったので、DF槙野のプレーが試合を動かすことになった。鳥栖戦では6本のシュートを放っているが、後ろにいる選手が試合を動かすパワーを持っている点が浦和の強みと言える。
今週はピッチ外のことで注目されて、雑音の多い中での試合となった。試合終了後に赤く染まったスタンドに向かうとき、試合を決める追加点のゴールを決めたMF原口の目が潤んでいたように見えたが、ユース出身で生え抜きのMF原口は「レッズ」を愛する気持ちが人一倍強い選手である。23歳の若者にツライを思いをさせてしまったことを浦和のサポーターは重く受け止めないといけないと思う。
騒動を起こしたサポーター集団は批判されても仕方がないが、選手ならびに全く無関係のサポーターには非は無い。ここぞとばかりに浦和というクラブや浦和のサポーターや浦和の選手を叩こうとする空気には違和感を感じるが、乗り越えていかなければならない。今シーズンからエースナンバーの背番号「9」を背負うことになったMF原口のゴールと振る舞いは、強く印象に残った。
■ 森保監督になって3年目一方の広島は公式戦は2連敗となった。森保監督になって3年目となるが、ミラーゲームになったり、動きの少ない展開になったとき、勝率は悪くなる。この試合の前半は相手の浦和も思い通りのサッカーはできなかったが、広島も思い通りのサッカーだったとは言えない。前半42分に浦和が先制したが、それまではずっとにらみ合いが続いている状態で、盛り上がるポイントの少ない展開だった点は否めない。
今シーズンの公式戦はこれが6試合目だった。一番最初のゼロックスの横浜FM戦は全く違っていて、5試合目だったセントラルコースト戦(A)は相手の鋭いカウンターにタジタジとなったが、北京国安戦(H)、C大阪戦(A)、川崎F戦(H)、浦和戦(H)はスローテンポで試合が進んでいる。この4試合の成績は2勝1敗1分けなので悪い成績とは言えないが、いい内容のサッカーができているとは言えない。
もちろん、したたかに戦うことが悪いわけではない。そういう戦いで2連覇を果たしたので間違ったやり方とは言えないが、タレント力を考えると勿体無く感じるところもある。2節の川崎F戦(H)は「試合運びの巧さ」で掴んだ勝ち点「3」と言えたが、にらみ合いの展開になった場合、相手チームが主導権を握っているわけではないが、広島の方が主導権を握っているわけでもない微妙な空気で時計だけが進んでいく。
闇雲にリスクを冒すのはいいことではないが、正直なところ、北京国安戦や川崎F戦や浦和戦で先制された後に見せたコンビネーションを駆使したサッカーを0対0のときから披露した方が、相手は嫌がるだろうし、もう少し楽に勝ち点を積み上げることができるのではないかと思う。リスクを冒さない戦い方というのが、別のところで異なる種類のリスクを生み出しているような気もする。
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