■ 第35節J2の第35節。14勝12敗8分けで勝ち点「50」の松本山雅(9位)と、12勝12敗10分けで勝ち点「46」の栃木SC(12位)がアルウィンで対戦した。プレーオフ争いは、3位の京都が勝ち点「57」、4位の徳島と5位の長崎が勝ち点「56」、6位の千葉が勝ち点「55」となっていて、両チームとも、6位の千葉の勝ち点「55」という数字がターゲットになる。ただ、9位の松本山雅は「5」差で、12位の栃木SCは「9」差なので、勝たないと苦しくなる。
ホームの松本山雅は「3-4-2-1」。GK村山。DF飯田、多々良、犬飼。MF岩上、喜山、玉林、飯尾竜、鐡戸、船山。FW塩沢。ボランチのMF岩沼が怪我のため欠場で、MF岩上がボランチに下がって、MF鐡戸がシャドーの位置でスタメンとなった。左WBは34節のG大阪戦でMF阿部がレッドカードで退場となったので、大卒ルーキーのMF飯尾竜がスタメンで起用された。神戸の下部組織出身で、今シーズン7回目のスタメンとなる。
対するアウェーの栃木SCは「4-2-3-1」。GK榎本達。DF菅、チャ・ヨンファン、西岡、三都主。MFパウリーニョ、高木和、廣瀬、クリスティアーノ、近藤。FWサビア。5月26日(水)に行われた16節の横浜FC戦で負傷して長期離脱していた大黒柱のMFパウリーニョが戦列に復帰してきて、19試合ぶりのスタメンとなった。MFクリスティアーノは10ゴール、FWサビアは9ゴールを挙げている。元日本代表のDF三都主は24節以来のスタメンで、スタメンは5回目となる。
■ 2対2のドロー勝たないと苦しくなる両チームの対戦は、前半7分にアウェーの栃木SCが先制する。左サイドでボールを受けたMF近藤のクロスをFWサビアが頭で合わせて幸先よく先制に成功する。FWサビアは来日初の二桁ゴール到達となった。一方の松本山雅は得意のセットプレーに活路を見出そうとするが、なかなか決定機を作れない。久々の先発となるMF飯尾竜やMF鐡戸もあまり機能しなくて、前半は1対0で栃木SCがリードして折り返す。
後半開始から左WBのMF飯尾竜を下げてFWホドリゴ・カベッサを投入。MF鐡戸を左WBに回して、同点・逆転を狙うと、後半28分に左サイドでボールを受けたMF岩上の左足のクロスをFWホドリゴ・カベッサが頭で合わせて1対1の同点に追い付く。しかし、直後の後半34分に栃木SCがカウンターを仕掛けると、途中出場のMF久木野の折り返したボールをFWクリスティアーノが決めて2対1と勝ち越しに成功する。FWクリスティアーノは今シーズン11ゴール目となった。
勝ち越しを許した松本山雅だったが、後半38分に右サイドでスローインを獲得すると、MF岩上が投げたボールをFWホドリゴ・カベッサが直で頭で合わせて2対2の同点に追い付く。21歳のFWホドリゴ・カベッサは今シーズン3ゴール目となった。その後はオープンな展開となって、双方が惜しいシーンを作るが、3点目のゴールは生まれず。結局、試合は2対2の引き分けに終わって、両チームとも、勝ち点「1」を積み上げるにとどまった。
■ 松本育夫監督になって3試合目J2も残り8試合となったが、この時期になると、崖っぷちに追い込まれて、「1つも落とせない。」というチームが出てくる。残り8試合という段階で6位の京都との差が「9」という栃木SCはまさしく崖っぷちに追い込まれているが、71歳の松本監督になってからは3試合で2勝1分け。3試合で7ゴールと監督交代の成果は出ている。次はホームでG大阪と対戦するが、勝ち点「3」が必要な試合であり、栃木SCにとっては大きな試合となるだろう。
ようやくMFパウリーニョが戻ってきて、この日は、右SBにDF菅、左SBにDF三都主を起用するなど、メンバーを入れ替えてきたが、松田監督の頃と比べると、攻撃陣の距離感が良くなっているように感じられる。MFクリスティアーノを筆頭にして、個で打開できる選手が何人かいるので、味方との距離が近すぎるのは、あまりいいことではない。松本監督になってからは、適度な距離を保つようになって、バランスが良くなったと感じる。
攻撃の核となるMFクリスティアーノは後半34分に勝ち越しゴールをマークして、今シーズン11ゴール目となった。スピードとパワーとシュート力はJ2の中では最高峰で、シュートへの意欲も高いので、ゴール数はもっと増えてもおかしくない選手だと言えるが、ここ最近は、いいところでゴールを決めている。ボランチで起用されたこともあったが、トップ下あるいは1トップの位置で自由に動かれると、相手にとっては厄介である。
元日本代表のDF三都主は24節の福岡戦(A)以来のスタメンとなった。「守備の時、ポジショニングの良い選手を起用する。」という松本監督の考えの下、スタメンに抜擢されたが、精度の高い左足のクロスは健在である。残り7試合となったが、栃木SCは引き分けでは苦しくなる。どの試合でも勝ち点「3」を狙わなければならないが、DF三都主の左足は武器の1つになるだろう。フリーでクロスを上げることができると質の高いボールが入ってくる。
■ FWホドリゴ・カベッサが2ゴール一方の松本山雅は3試合勝ちなしとなった。岡山(A)、G大阪(H)、栃木SC(H)ということで、厳しい相手が続いたが、3試合で勝ち点「2」というのは、想定外である。2度リードされた状況から同点に追いついて勝ち点「1」を拾ったことをポジティブに考えたいところであるが、痛いドローであることに変わりは無い。次はアウェーで残留争いをしているFC岐阜と対戦するが、勝ち点「3」が絶対に必要な試合である。
この日は、ボランチのMF岩沼が怪我で欠場して、左WBのMF阿部が出場停止だったので、MF鐡戸とMF飯尾竜がスタメンで起用されたが、あまり効果的な働きは出来なかった。MF鐡戸は2シャドーの一角に入ったので、動き回って相手の守備を掻き回すことが期待されたが、オフ・ザ・ボールでも、オン・ザ・ボールでも、良さを発揮することはできなくて、左WBのMF飯尾竜は攻撃においてはボールを失うことも多くてブレーキになった。
ただ、後半の頭から投入されたFWホドリゴ・カベッサが2ゴールと結果を残したことは、今後、利いてくる可能性はある。178cm/85kgなのでがっちりした体格であるが、ターゲットタイプというよりは、スピードやパワーを生かして自らシュートチャンスを作るストライカータイプの選手だと思うが、この日は、ゴール前で強さを発揮して、2ゴールともヘディングでネットを揺らした。チームを敗戦の危機から救う価値ある2ゴールとなった。
■ 猛威をふるうロングスローFWホドリゴ・カベッサの2ゴールをアシストしたのは、ともにMF岩上だったが、前節のG大阪戦も2つのゴールをアシストしており、前々節の岡山戦でもMF船山の同点弾をアシストしているので、ここ3試合で松本山雅が挙げた5ゴール全てに絡んでいて、3試合で5アシストとゴールに絡みまくっている。この日は下がり目の位置でプレーしたが、加入してわずかな期間で反町監督の信頼を勝ち取って、中心選手の1人としてプレーしている。
1点目の後半28分の同点ゴールは左足のクロスでFWホドリゴ・カベッサのゴールをアシストしたが、2点目の後半38分の同点ゴールは、MF岩上の代名詞と言えるロングスローから生まれた。G大阪戦の2点目もMF岩上のロングスローからゴール前のDF犬飼が直で合わせて同点ゴールが生まれているが、ここ最近は、松本山雅の一番の武器になっていて、相手チームも対策を立てているが、「なかなか止められない。」というのが現状である。
ロングスローの使い手というと、元千葉のDFマーク・ミリガンと鳥栖のMF藤田直の2人が有名であるが、MF岩上のロングスローの特徴はスピードが出ることで、ライナー性のボールを投げることができる。距離的には、DFマーク・ミリガンやMF藤田直の方が遠くまで飛ばすことができると思うが、スピードでは負けていない。そして、MF岩上は右足のクロスの精度が高いので、跳ね返って来たボールを拾って、セカンドチャンスにつなげることができる点も魅力と言える。
レンタル元の湘南は高さのあるチームではないので、MF岩上のロングスローが大きな武器になることはなかったが、松本山雅には、DF飯田、DF犬飼、FW塩沢など、セットプレーで点の獲れる選手が何人もいる。反町監督はJ2リーグの中では屈指の策士で、湘南時代からセットプレーのときにトリックプレーを使うのが大好きな指導者だったが、いろいろなアイディアを持っているので、今後は、「ロングスローの威力」を最大限に利用してくると考えられる。
この試合でも、前半に左サイドでスローインを得たとき、普通にロングスローを行うのではなくて、胸の高さ付近の弾道の低いボールをニアに供給したシーンがあったが、試合に向けていろいろなパターンを用意してくると思うので、今後、面白いシーンが見られる可能性が高い。これだけ警戒されると裏をかきやすくなるので、松本山雅がスローインを得て、MF岩上がタッチライン際に向かって走り出したときは、ピッチから目を離してはいけない。
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