■ 最悪の成績 2013年のACLはグループリーグが終了した。日本勢は柏レイソルが4勝2分けという好成績でグループ首位で決勝トーナメント進出を決めたが、浦和レッズが3位で、ベガルタ仙台とサンフレッチェ広島はグループ4位という順位に終わって、「本大会に出場した4チームのうち3チームがグループリーグで敗退する。」という現行制度になってからは最悪の結果となった。
東アジアはグループEからグループHに組み込まれて、合計で16チームが本大会に出場することができるが、今年は、日本と韓国と中国は4チーム、タイは2チーム、オーストラリアとウズベキスタンが1チームを本大会に送り出している。ここで、日本から出場した4チームの成績を足してみると、8勝7敗9分けで勝ち点「33」。得点32で、失点27で、得失点差が「+5」となった。
同じく韓国のKリーグのチームは、合計で6勝4敗14分けで勝ち点「32」。得点が30で、失点が26で、得失点差は「+4」となって、中国のCリーグのチームは、合計で8勝7敗9分けで勝ち点「33」。得点29で、失点24で、得失点差「+5」なので、「この3カ国の力は接近している。」と言えるが、中国は3チームで、韓国が2チームを決勝トーナメントに送り出したのに対して、日本勢は1チームだけと残念な結果となった。
表1. 各国の結果 (グループEからグループH)
| 勝ち点 | 試合数 | 勝利 | 分け | 敗戦 | 得点 | 失点 | 得失点差 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 |
日本 | 33 | 24 | 8 | 9 | 7 | 32 | 27 | 5 | 1 | 0 | 1 | 2 |
韓国 | 32 | 24 | 6 | 14 | 4 | 30 | 26 | 4 | 1 | 1 | 1 | 1 |
中国 | 33 | 24 | 8 | 9 | 7 | 29 | 24 | 5 | 1 | 1 | 2 | 0 |
ウズベキスタン | 10 | 6 | 2 | 4 | 0 | 6 | 3 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 |
タイ | 8 | 12 | 1 | 5 | 6 | 10 | 23 | -13 | 0 | 1 | 0 | 1 |
オーストラリア | 7 | 6 | 2 | 1 | 3 | 5 | 9 | -4 | 0 | 1 | 0 | 0 |
■ 残念だった浦和と仙台の敗退 0勝3敗3分けという成績だった広島については、もともと資金力の乏しいチームで、選手層も薄くて、怪我人も多かった。よって、「仕方がない。」、「むしろ、若手主体でよくがんばった。」と言うこともできるが、浦和と仙台の2チームに関しては、突破できる実力を持っていて、さらには、選手もスタッフもサポーターもACLに力を注いでいて、野心も感じられたので、残念な結果となった。
浦和に関しては、3節と4節の全北現代戦で先制ゴールを挙げながら、リードを守り切れなかったことが全てだった。最終的には、全北現代と同じ勝ち点「10」を稼いだが、直接対決で0勝1敗1分けと負け越しているので、3位となった。オフに大型補強を行って「アジア制覇」の期待が高まっていたので、その期待の裏返しで批判されても仕方がない結果となった。
一方の仙台は、ブリーラムとの激しい争いとなって、最終節の江蘇舜天戦で勝利していれば、2位で突破することができたが、1対2で敗れた。怪我人や本調子でない選手も多くて、ギリギリの中での戦いとなったが、ホームで自力で決められるチャンスがあったので、悔しい結果となった。FWウイルソンの退場など、最終戦はジャッジにも悩まされたが、6試合で1勝しかできないと、突破するのは難しくなる。
■ 称賛したい仙台の戦いぶり ただ、仙台の戦いぶりは称賛に値する。J1では2勝3敗3分けで12位と出遅れていて、リーグ戦に力を注ぎたくなる状況になっているが、それでも、「何とかしてACLとリーグ戦の両立させよう。」と頑張ってきた。過去には、鹿島やG大阪や名古屋など強豪チームも苦しめられたが、「やり繰りをしながらアジアにチャレンジする。」というのは、限られたチームにしか経験できないもので、クラブの財産となる。
J1の場合、上位チームと下位チームの差が小さいので、スタートで出遅れてしまうと、ACL組と言えども、残留争いに巻き込まれる可能性が高くなる。したがって、両立させようとするのはリスクを伴うが、全てのチームが降格の恐怖におびえて、ACLを捨てるような状況になってしまうと、ACLの価値も上がって来ないし、日本勢の評価もガタ落ちとなる。結果は出なかったが、チャレンジ精神は見事だった。
同じように柏もリーグ戦は3勝4敗1分けと負けが先行している。リーグタイトルも狙っているチームなので、スタートで躓いてしまったが、ACLでは4勝2分けと素晴らしい成績を残している。柏も外国人助っ人を中心に怪我人が多く出ているので、楽な戦いではなかったが、2012年に続く2度目のチャレンジということで、アジアの戦いにも慣れてきて、「レイソル強し」を印象付ける戦いを見せている。
■ 中国勢の躍進 先のとおり、日本勢と韓国勢と中国勢の勝敗はほとんど同じだったが、3チームが決勝トーナメント進出を決めた中国勢の躍進ぶりが目に付く。ここ数年は、韓国勢の活躍が目立っていたが、今年は中国のクラブが勝負強さを発揮した。ちょっと前までは、「中国で行われるアウェーゲームは厳しいが、日本国内で行われるホームゲームでは難しくない相手」と思われていたが、確実に力を付けている。
現行の制度になってからは初めて3チームがグループリーグで敗退する結果になったので、「なぜ、勝ち残れなかったのか?」を総括する必要があるが、中国のクラブが潤沢な資金をバックに力を付けていることは、無視できない要素である。「GL突破は当たり前」だった時代と比べると、「広島や仙台や浦和の成績は情けない。」と感じる人もいると思うが、周辺国の事情は変化してきている。
したがって、独りよがりで、日本の事情だけを考慮した評論というのは避けなければならないが、CリーグのクラブがJリーグやKリーグのクラブに匹敵する実力を身に付けつつあることは、歓迎すべきことでもある。本当に健全な経営が成り立っているのか、疑問に感じるところもあるが、スーパーな選手を抱えているチームも多くて、Jリーグの選手たちは得難い経験をすることができる。
当然、日本国内の状況も変化している。才能のある若手がすぐに欧州に渡ってしまう時代がやって来て、ACLに出場する国内のビッグクラブが「ACL出場」を餌に他クラブの若手を引き抜くことが難しくなった。CLやELに出場する選手が何人もいる中で、同時にACLも勝ち進もうとすると、相当な地力が必要となるが、今は韓国や中国と比べて、そこまでの差はないので、こういう結果になってしまう。
当然、J1やJ2のクラブ数を少なくして、戦力や資金が一部のクラブに集中するような仕組みを作ったら、ACLで好成績を収めるようになると思うが、長期的な視野で考えると、何の解決策にもなっていないどころか、マイナスである。逆風が多くなっているが、それでも、アジアの中で存在感を発揮するためには、ACLで好成績を残すことは不可欠で、効果的な手を打たなければならない時期に入ってきている。
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