■ FWルーニーとのコンビエバートンとの開幕戦で先発起用されたMF香川は、結局、90分間を通してトップ下でプレーした。チームは0対1で敗れて黒星スタートとなったが、地元メディアには、好セーブを連発したGKデ・ヘアに次ぐ評価を受けるなど、上々の公式戦デビューを飾った。
すでに、ドイツで2シーズンプレーして、結果を残してきたので、C大阪からドルトムントに移籍した当初のような驚きはないが、マンチェスターUの中に入っても、堂々とプレーして、トップ下のポジションで、攻撃の中心となっていくつかの決定機を作った。
身を乗り出して観てしまうのは、FWルーニーと絡むシーンである。FWルーニーはユーロ2012出場した影響で、チームへの合流が遅れており、この二人が試合でコンビを組むのは、バレレンガ戦とハノーファー96戦に次いで、3試合目となるが、FWルーニーはMF香川のことを意識していて、MF香川もFWルーニーのことを強く意識している。
まだ、MF香川は遠慮があるのか、FWルーニーが空いていると、シンプルにFWルーニーにリターンパスを送るシーンがほとんどなので、積極性に欠けるところもあるが、感性が似ているのか、ここまでは、スムーズなコンビネーションを見せている。過去には、C大阪でMF乾と名コンビを形成して、ドルトムントではMFゲッツェとホットラインを築いたが、今度は、FWルーニーといいコンビになりそうな予感がある。
ここ数シーズン、孤軍奮闘することが多かったFWルーニーにとっても、MF香川というパートナー候補が加わったのは、心強いことである。FWルーニーほどの選手になると、チームの中で、地位は確立されているので、MF香川に対して、特別なライバル意識を燃やすことはないだろう。「力のある選手だ。」ということをFWルーニーに認められたら、マンチェスターUで成功するための助けになってくれると思うので、FWルーニーとは、いい関係を築いていきたい。
■ FWファン・ペルシーの加入今後、注目されるのは、ポジションである。移籍当初、MF香川は、「トップ下でプレーしたい。」と発言しており、ファーガソン監督も、「トップ下で起用するつもりである。」と公言した。結局、開幕戦は90分を通して、トップ下でプレーすることになったので、願いが叶ったといえるが、開幕直前にアーセナルのFWファン・ペルシーが加入してきたので、状況は変わりつつある。
エバートン戦のFWファン・ペルシーのパフォーマンスを見ると、本来の調子を取り戻すためには、1ヶ月ほど、時間がかかりそうであるが、プレミアリーグでの実績は抜群で、世界でも屈指の点取り屋なので、コンディションが上がってくれば、FWファン・ペルシーがスタメンから外れることは考えにくい。
もちろん、FWルーニーも外せない選手である。したがって、普通に考えると、FWルーニーとFWファン・ペルシーの2トップになる可能性が高い。よって、「MF香川が希望するトップ下でプレーする機会がなくなるかもしれない。」と報道されているが、いきなり、超大物選手が加入してくるのは、ビッグクラブに在籍している以上、仕方がないことで、最初の試練と言える。
■ MF香川のポジションは?(1)エバートン戦のFWルーニーとFWファン・ペルシーとMF香川のパフォーマンスを見ると、しばらくの間は、FWルーニーの1トップで、MF香川がトップ下になりそうであるが、今後、FWファン・ペルシーのコンディションが上がってきたとき、どういう布陣になるのか、興味深いところである。
エバートンとの開幕戦は、FWルーニーの1トップで、MF香川がトップ下で、MFウェルベックが左サイドハーフに回って、FWベルバトフとFWファン・ペルシーがベンチスタートで、FWエルナンデスがベンチ外だったが、攻撃に関しては、世界屈指のメンバーが揃っているので、無数の組み合わせが考えられる。
よって、この状況で、MF香川がレギュラーポジションを確保するのは、至難の業であり、いろいろなポジションをこなさないと、出場機会が減ってしまう。プレーヤーとしての幅を広げるチャンスと言えるが、MF香川に関しては、「トップ下」、「サイドハーフ」、「セントラルMF」の3つのポジションで起用される可能性がある。
■ MF香川のポジションは?(2)まず、トップ下については、ドルトムントの頃から慣れ親しんだポジションなので、違和感はないだろう。本人の希望するポジションであり、もっとも得点に絡みやすいポジションである。当然、ここで起用されるのが、ベストであるが、MF香川がトップ下でプレーするためには、FWルーニーか、FWファン・ペルシーのどちらかをサイドあるいはベンチに追いやる必要があるので、大変なことである。
もちろん、サイドハーフで起用される可能性もある。日本代表は「4-2-3-1」で、マンチェスターUは「4-2-2-2」がメインとなるので、両者に違いはあるが、C大阪のときは、ずっと左サイドハーフでプレーしてきたので、攻撃に関しては、大きな問題はないだろう。不安なのは守備のところである。相手のサイドハーフやサイドバックの攻撃参加をケアする必要があるので、プレミアリーグでサイドハーフをこなすためには、ポジショニングなど、勉強が必要なところがたくさんある。
気になるのは、これまで、ファーガソン監督がプレシーズンマッチを含めて、一度も、MF香川のサイドハーフをテストしていないことである。練習でいいプレーができなかったのか、サイドハーフでの起用は全く想定していないのか、はっきりとした理由は分からないが、エバートン戦の起用法を見ると、FWルーニーとFWファン・ペルシーとMF香川が同時起用されるときは、FWルーニーがサイドハーフに入るのが基本となりそうなので、サイドハーフで起用される可能性は、現時点では、一番、低いといえる。
■ MF香川のポジションは?(3)むしろ、セントラルMFで起用される可能性の方が高い。プレシーズンマッチのハノーファー96戦でテストされて、まずまずの成果を得たので、開幕戦から、このポジションで起用される可能性もあった。もともと、MF香川はボランチ出身の選手なので、パスを受けてボールを散らす作業は、難なくこなす。こちらも、攻撃に関しては、大きな問題はないだろう。
不安はやはり守備面で、1対1の守備力が劣るので、エバートンのような空中戦を頻繁に使ってくるチームを相手にするとき、MF香川をこのポジションで起用するのは、勇気が必要である。肉弾戦になると、守備に追われてしまって、持ち味を発揮できない可能性が高いといえる。
いずれにしても、これだけのビッグクラブの一員となったので、今後、壁にぶち当たって、試合に出場できない時期も訪れるだろう。そうなると、コンディションを維持するのが難しくなるので、日本代表にとっては、マイナスに働くが、これまで、いくつもの壁を乗り越えてきた選手なので、次に壁にぶち当たったとしても、自らの力で壁を打ち破っていくだろう。
2011年1月末にチェゼーナからインテルに移籍したDF長友も、大きなチャレンジをして、今、現在、インテルというチームで確固たる地位を築いているが、MF香川の場合、さらに争いが熾烈なポジションでプレーしており、各国代表のエースクラスとの競争がスタートしている。大変なチャレンジだと思うが、実力的には、全く問題ないと思うので、成功を祈りたいところである。
関連エントリー 2010/05/12
本気(マジ)で落選ジャパン23名を考える。 2010/05/16
【C大阪×神戸】 シンジ 旅立ちの日 (生観戦記 #4) 2010/09/24
香川真司はドイツでどんな評価をされているのか? 2011/01/11
本田圭佑のベストポジションはどこか?について考える。 2011/04/28
長友佑都はイタリアでどんな評価をされているのか? 2012/05/20
ザックジャパンのベストイレブンを考える。 (ボランチ編) 2012/05/21
ザックジャパンのベストイレブンを考える。 (攻撃的MF編) 2012/08/21
【エバートン×マンU】 香川真司 上々のデビュー戦
- 関連記事
-