■ <4-2-3-1>アジアカップの初戦となったヨルダン戦で<4-2-3-1>のトップ下で起用されたMF本田圭佑。しかしながら、自身のコンディション不良やチームメイトとの連携の問題もあって思うように機能しなかった。試合途中でMF岡崎を投入し、MF本田圭を右サイドに置いてからチームの流れが良くなったこともあいまって、「本田圭佑のベストポジションはどこか?」という問題がクローズアップされることになった。
そもそも、同じ<4-2-3-1>でも、いろいろなやり方がある。特に「3」の位置はさまざまである。
例えば、アルビレックス新潟はMFミシェウが真ん中(=トップ下)で起用されているが、運動量豊富に動き回って自由なポジションを取って相手を混乱させる。2トップに近い並びになることもあって、トップ下なのか、フォワードなのか、分類するのは難しい。セレッソ大阪はもっと自由であり、右がMF清武、中央がMF家長、左がMF乾という並びが基本であるが、このベースのポジションは攻撃のときはあってないようなものであり、ポジションチェンジが頻繁に行われる。同じサイドに3人が固まることもある。
一方で、「3」の位置で、ポジションチェンジをほとんど行わないチームもある。ドイツのボルシア・ドルトムントはその典型であり、右のMFブラスチコフスキで、左がMFグロスクロイツの場合、彼らの位置が入れ替わることはほとんどなく固定である。これは欧州のクラブではよく見られるパターンであり、ヨルダン戦の前半の日本も同じような感じになっていた。
■ ポジション遍歴①典型的なサイドアタッカーを起用するのであれば、ポジションチェンジをしない方が効果的である場合が多いが、MF岡崎やMF香川のようにフィニッシュに絡むことを仕事とする選手をサイドに起用する場合、ポジションを固定すると効果を発揮しない。サイドで1対1になったときに確実に抜ける選手がいれば問題ないが、そうでないと、攻撃のバリエーションもなくなってしまう。
ヨルダン戦では、MF本田圭が真ん中に構えたことや、MF松井が右サイドに入ったことで、ポジションチェンジがほとんどなくて、それなりにパスはつながるが相手にとっては守りやすいという状況が生まれてしまった。今後、MF本田をどう起用するのかというのがザッケローニ監督にとっても悩みどころとなるが、いろいろな可能性が考えられる。MF本田圭はプロに入ってからも、いろいろなポジションを経験してきたからである。
■ ポジション遍歴②名古屋グランパスではボランチ、攻撃的MFのポジション以外にも、<4-4-2>の左サイドバックや、<3-5-2>の左ウイングバックも経験。北京五輪代表チームでも同様で、右サイドハーフが基本であったが、左ウイングバックで起用されることもあった。
2008年にオランダリーグのVVVに移籍するとトップ下でプレーすることが多くなった。2009年になると、日本代表にも常時、召集されるようになったが、代表では<4-2-2-2>の右サイドハーフがメインのポジション。しかし、同じポジションにMF中村俊輔がおり、この二人を併用するのか、どちらかをベンチにするのか、大会前まで岡田監督の悩みの種となった。結局、W杯の本大会では予想に反して1トップで起用されて、4試合で2ゴールを挙げて日本のベスト16入りに大きく貢献。世界中に名を知られるようになった。この布陣はローマのFWトッティのイメージで「0トップ』とも表現された。
現在、所属するCSKAモスクワではボランチでプレーすることが多い。得点へのこだわりの強いMF本田圭は、スルツキー監督に対して「自分はトップ下でプレーしたい。」と伝えていると語っていたが、CSKAモスクワにトップ下のポジションがないことも多く、また攻撃的MFにはMFアラン・ザゴエフという20歳のロシア代表の選手がいることもあって、左ボランチがメインになっている。
■ ベストポジションは?①MF本田圭の持ち味は、卓越したフィジカルと左足の強烈なシュートであり、大舞台でも物怖じしないパーソナリティも魅力である。パスセンスもあって、クロスの精度も高いが、イマジネーション溢れるタイプではない。また、標準以上の運動量はあって、攻撃的な選手にしては十分なほど守備もこなす。
その一方、フィジカルの強さを生かしたドリブルは魅力であるが、細かいステップで相手をかわしていくタイプではなく、サイドからのクロスにゴール前でワンタッチで合わせてゴールするようなシーンは多くない。また、スピードには欠けるので、裏のスペースに飛び出してシュートを狙うプレーは苦手である。さらに、パスで味方を生かすことは出来るが、味方のためにスペースを作ったり、動き回って相手を惑わすようなプレーは得意ではない。
南アフリカW杯で活躍し、すでに日本のトッププレーヤーとなったMF本田圭であるが、それゆえに、改めて「どこがベストポジションか?」と問われると、答えるのは難しい。本人はトップ下を希望しているが、今後、CSKAモスクワよりも上のクラブでプレーすることを考えたとき、世界トップレベルのトップ下タイプであるMFカカー、MFエジルのような機動力や打開力のある選手と比べると見劣りするのは否めず、ポジションを争うには不利である。
センターバックと右サイドバックを除く、ほとんどのポジションでプレーできるので、使い勝手のいい選手とも言えるが、逆に使いどころに困る選手とも言える。実に不思議なプレーである。
■ ベストポジションは?②まだ、ザッケローニ監督になって3試合なので、これからいろいろと試す必要があるが、日本代表でのプレーに限らず、今後、ヨーロッパのメガクラブでレギュラーとしてプレーするためには、得意なポジションを見つけて極めることも必要であり、そうでないと、ユーティリティプレーヤーとして器用貧乏的な使われる危険性もある。
そう考えると、ボランチ(=センターハーフ)を極めるというのも1つの道ではないだろうか?
プレミアリーグのクラブへの移籍話も出ているが、プレースタイルを考えると、縦に速いプレミアリーグでトップ下やサイドハーフでポジションをつかむのは至難の業である。もちろん、本人は得点へのこだわりを見せており、ゴールを量産するにはゴールに近い位置でプレーする方が好ましいが、チェルシーのMFランパード、リバプールのMFジェラードのようなセンターハーフのイメージで、どんどんゴール前に上がっていくことも可能である。
この場合で、攻撃に参加したときにカバーしてくれる相方が必要であり、バランス感覚も要求されるが、優れたセンターハーフになるだけのポテンシャルはある。MFマラドーナ、MFプラティニ、MFジーコの時代から、なぜか日本では「トップ下」を特別なポジションをととらえる傾向があって、トップ下(あるいは司令塔)といったフレーズが伝える側は大好きであるが、トップ下でプレーするから優秀というわけでも、トップ下から外されたからダメというわけでもない。
日本代表のことだけを考えると、1トップ(フォワード)でも可能であるし、コンビネーションさえ確立されていけば、トップ下でも十分にできるだろうが、特異なプレースタイルだけに使いどころも難しい。
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