■ メダル獲得はならず3位決定戦で洪明甫監督率いる韓国代表と対戦した関塚ジャパンだったが、前半38分にカウンターからアーセナルに所属するFWパク・チュヨンにゴールを決められると、後半13分にも、同じく縦パスからアウクスブルクのMFク・ジャチョルに決められて、2点ビハインドとなった。
2点を追う日本は、DF山村、FW杉本、MF宇佐美を投入し、終了間際にはコーナーキックからDF吉田のシュートでネットを揺らすが、相手キーパーへのファールを取られて取り消しとなった。結局、2対0で韓国が勝利して、韓国が初の銅メダルを獲得し、1968年のメキシコ五輪以来となる44年ぶりのメダルはならなかった。
試合の序盤は韓国がボールを保持して攻め込んできたが、前半20分あたりを過ぎると、逆に、日本がボールをもつ時間が長くなって、ゴール前のシーンを作るようになったが、空中戦を競りに行ったDF吉田の作った穴を埋めきれず、FWパク・チュヨンに先制ゴールを決められてしまった。
■ 防ぐことができた失点今大会の日本と韓国は戦い方はよく似ていて、前からプレッシャーをかけてボールを奪って、素早く攻めるサッカーで結果を残してきた。韓国はFWチ・ドンウォンという大型ストライカーが攻撃の中心となるのでロングボールが主体で、日本はFW永井というスピードのある選手が要となるので、日本はFW永井の裏のスペースに縦パスを出す割合が多くなるが、両チームともシンプルな攻撃でチャンスを作ってきた。
その一方で、日本も、韓国も、ボールをポゼッションして、パスや動きで相手の守備を崩すことはできないので、先制されると苦しくなるが、FWパク・チュヨンのゴールが決まったことで、韓国は楽になって、日本は苦しくなった。
このシーンは、DF吉田が釣りだされたことが痛かったが、1対1とはいっても、DF鈴木は対応できていたので、慌てる必要の場面だったが、MF山口螢がカバーに戻ってきて、数的優位になった瞬間に生まれたちょっとした気の緩みが元で、シュートを打たれてしまった。韓国の選手はFWパク・チュヨンしかいなかったので、日本にとっては勿体ないシーンであり、防ぐことができた失点と言える。
■ 交代のカード先制された後は、日本の選手はガクッと来てしまって、ミスが多くなった。特に、FWパク・チュヨンに1対1で対応してゴールを決められたDF鈴木の落ち込みが顕著で、これまでの5試合は安定したプレーを見せていたが、考えられないようなミスも発生して、最終ラインに落ち着きがなくなった。
サッカーの試合で「先制ゴールが大事」というのは、言うまでもないことであるが、年齢制限のある五輪代表の試合では、先制ゴールの持つ意味はさらに大きくなる。関塚ジャパンは、リードされたときのシミュレーションは十分ではなくて、ビハインドを跳ね返すほどの攻撃力は持っていないので、反撃のチャンスを作ることはできなかった。
ただ、同じようにビハインドとなった準々決勝のメキシコ戦と比べると、選手交代に工夫は見られた。まず、後半14分にMF扇原に代えてMF山村を投入し、ボランチを入れ替えてきたが、MF山村の攻撃参加はアクセントの1つとなって、何度かチャンスに絡んだ。
さらに、後半17分にMF東に代えてFW杉本を投入し、後半26分にFW永井に代えてMF宇佐美を投入したが、MF宇佐美も何度か見せ場を作って、メキシコ戦よりは交代選手は機能したが、「2点差」になると、守っている方も楽なので、そういう意味でも、2点目のMFク・ジャチョルのゴールは痛かった。
■ 銅メダルに値する韓国代表銅メダルを獲得した韓国は、やはり、力のあるチームだった。この世代は、才能のある選手が揃っており、「黄金世代」と言ってもおかしくないと思うが、銅メダルに値するチームだったと思う。趙広来監督が率いていた頃の韓国代表は、スマートな選手を重宝して、キレイなサッカーを志向していたが、洪明甫監督は、かなり現実的なサッカーで結果を残した。
MFキ・ソンヨン、MFク・ジャチョル、MFキム・ボギョンなど、中盤には、テクニックのある選手が揃っているので、「いいサッカー」もできると思うが、リスクを冒すことなく、ロングボール中心のサッカーで結果を残した。「昔ながらの韓国サッカー」というイメージの強いチームに仕上がっているが、こういうサッカーで結果が出たことは、自信にも繋がるだろう。
■ お疲れ様ということで、関塚ジャパンは、残念ながら「4位」という結果で、メダルを獲得することはできなかったが、大きな舞台で、6試合も戦うことができたことは、財産となるだろう。中2日の試合が続いたので、決勝トーナメントに入ってからは、疲弊している選手が多くて、メキシコ戦や韓国戦については、自分たちのサッカーが出来なかったが、たくさんの課題と収穫を得た実り多き大会となった。銅メダルを日本に持ち帰ることはできなかったが、6試合で得た経験は、メダルと同等か、それ以上の価値があると言える。
3位決定戦の印象は、2年前と4年前のアジアユースをリアルタイムで観た人とそうでない人では、大きく変わってくるだろう。2008年のアジアユースの準々決勝は0対3で敗れたが、日本代表はサンドバック状態で、なす術なく敗れた。近年の日韓戦の中では、群を抜いて最悪の試合であり、このときは、とてつもない差があった。その2年後のアジアユースも同様で、FW指宿の2ゴールで2対0とリードしたが、前半だけで3ゴールを許して、2対3で敗れた。この試合も、韓国のロングボールを跳ね返すことができず、無残に敗れた。
そのため、ロンドン世代はU-20W杯に出場できず、大きな批判を浴びたが、惨めな試合だったアジアユースの2試合と比べると力は接近していて、日本にも勝つチャンスはあった。残念ながら、この時点では、まだ力関係を逆転することはできず、0対2で敗れたが、挽回するチャンスはいくつも残っている。フル代表の場合は、4年ごとのW杯で一度、リセットされて、次の日から新たな4年間がスタートするが、五輪代表の戦いは、本大会で終わりではない。本大会で得たことを、普段のリーグ戦であったり、フル代表につなげることが、本大会の成績と同じくらい大事なことである。
ピーキングの問題や選手の起用方法など、いくつかの問題点もあったと思うが、まずは、関塚監督とスタッフの方々、そして、選手たちには、「お疲れ様」、「よく頑張った」と言いたい。確かに、メダルまで、あと一歩のところまで迫ったので、悔しい気持ちもあるが、全員でハードワークして、スピーディーに攻めるサッカーは、世界にインパクトを与えて、日本サッカーの持つポテンシャルの高さ、ならびに、日本サッカーの進化系の1つを大舞台で示すことができたと思う。メダルが獲れなくて、悔しい気持ちもあるだろうが、胸を張って日本に帰ってきてほしい。立派な戦いを見せた彼らを誇りに思う。
関連エントリー 2008/08/13
ラモス瑠偉と日の丸への思い 2010/10/11
【U-19日本×U-19韓国】 布ジャパンの歴史的な惨敗 2011/08/24
Jリーガーと兄弟構成に関して 2011/09/29
韓国サッカーとは、どのように付き合っていくべきか? 2012/06/05
テレビ朝日とサッカー中継の進化 2012/06/18
日本代表の応援にどこまで求めるのか? 2012/08/01
反省も必要なサッカー評論家 2012/08/02
関塚ジャパン GLのMVPを考える。
- 関連記事
-