■ オランダ戦トゥーロン国際大会の第2戦。初戦でトルコに0対2で敗れたU-23日本代表が強豪のオランダ代表と対戦した。オランダは21歳以下の選手が中心で、初戦はエジプトに3対0で勝利している。日本としては、グループリーグを突破するためにも、負けられない試合となった。
日本は「4-2-3-1」。GK安藤。DF大岩、鈴木、山村、比嘉。MF村松、扇原、宇佐美、高木善、齋藤学。FW指宿。中1日での試合となったので、関塚監督はメンバーを大幅に入れ替えてきて、2試合連続スタメンとなったのは、GK安藤、DF鈴木、MF扇原の3人だけで、8人が初スタメンとなった。これまでボランチ起用が続いていたDF山村は、センターバックでスタメンとなった。
■ オランダに逆転勝利!!!試合は、前半3分に右サイドを崩したオランダが先制ゴールを挙げるが、前半5分に日本は左サイドでボールを受けたMF齋藤学が中央にスライドするドリブルから見事に右足で決めて同点に追いつく。MF齋藤学はアジア最終予選のマレーシア(A)以来のゴールとなった。オランダは右サイドのFWルコキのところから、再三、仕掛けてチャンスを作るが、日本も2列目の3人がいいプレーを見せて対抗していく。前半は、ほぼ互角の展開で1対1で終了する。
均衡を破ったのは日本で、後半3分にMF齋藤学を起点に中央でMF高木善がボールを受けると、右サイドの裏に走ったMF宇佐美に絶妙のスルーパスを送る。MF宇佐美はディフェンスの裏に抜け出してGKと1対1になって、自分でシュートを打てるシチュエーションだったが、後ろから走ってきたFW指宿にラストパスを送ってFW指宿がゴール。2対1と逆転に成功する。
しかし、オランダもその直後に右サイドのFWルコキの突破から同点に追いつく。その後は、オランダがボールを支配して攻め込む時間が長くなる。日本は劣勢になるが、GK安藤を中心にオランダの攻撃を防ぐと、後半33分に波状攻撃から最後はゴール前に上がっていたMF扇原が右足で強烈なシュートを決めて勝ち越しに成功する。結局、試合は3対2で日本が勝利。オランダと日本はともに1勝1敗となった。
■ MF扇原 終了間際に決勝ゴール!!!トゥーロン国際大会は、選手たちの最終選考の意味合いの強い大会であり、過密日程ということもあって、日本はメンバーを大きく入れ替えてきたが、乱戦を制して、決勝トーナメント進出に望みをつないだ。オランダにも、日本にも、同じくらい決定機があったので、2対2になってからは、「どちらが先に決めるか!?」という展開になったが、ボールを持てずに守備に回ることが多くなっていた日本が、後半33分に勝ち越しゴールを挙げた。
決勝ゴールを決めたのは、MF扇原で、得意ではない右足で強烈なシュートを決めた。フィールドプレーヤーでは、MF扇原とDF鈴木の二人だけがトルコ戦に続いてスタメン起用となったので、チームの中心的な存在であることは間違いないが、中1日ということもあって、MF扇原はトルコ戦と比べると低調で、ミスも多かったが、いいタイミングで攻撃に参加して決勝ゴールを奪った。
相手の選手は、MF扇原の情報を持っていなかったはずなので、対応した選手も、「左利きが得意」ということは分からなかったはずである。そのため、右足で蹴るよりも、切り替えしてから、左足でシュートを放った方が、確率も高くて、相手を惑わすことができたと思うが、思い切って右足でシュートを放ったことが功を奏した。このシュートは右足のシュートだったので、ラッキーなところもあるが、ゴール前に入って行って、精度の高いシュートを打てるのは、彼の武器である。
■ 2列目トリオが躍動熾烈なポジション争いが続いている2列目のポジションでスタメン起用されたのは、MF齋藤学、MF高木善、MF宇佐美の3人だったが、それぞれが持ち味を発揮した。初戦は、MF東、MF水沼、MF大津が起用されたが、3人とも持ち味を出せずにアピールすることは出来なかったが、この日のトリオは、ゴールにも絡んで、インパクトを残した。
左サイドハーフで起用されたMF齋藤学は、初戦のトルコ戦でも途中出場してキレのあるプレーを見せたが、前半5分に鮮やかなドリブルシュートを決めた。愛媛時代によく見られた形で、もっとも得意とするプレーであるが、横にスライドしながら中央に切れ込んで、相手をきりきり舞いさせた。シュート自体はヒットしなかったが、鮮やかドリブルから生まれたスーパーゴールだった。
現時点では、2列目の選手で「当確」といえるのは、MF清武くらいで、他の選手は、MF東を含めて10人くらいで枠を争っている。よって、MF齋藤学も当落線上といえるが、大きなアピールができた。課題は、ゴールを奪った後、2度ほどあった決定機に決められなかったことと、後半にスタミナが切れてパフォーマンスが落ちてしまったことと、守備の部分で、DF比嘉をサポートしきれなかったところであるが、キレのあるドリブルと飛び出しは大きな武器である。スーパーサブとしての適性も高い選手なので、MF齋藤学は、18人の中に入ってくる可能性は、かなり高いのでは?と思われる。
トップ下でプレーしたMF高木善も、好プレーを見せた。ゴールやアシストはなかったが、2点目と3点目のゴールは彼が起点になっていて、守備でも貢献した。トルコ戦では、持ち味を出し切れなかったが、MF宇佐美やMF齋藤学との連携も良くて、中盤の3人のコンビネーションは良かった。オランダリーグでプレーしているので、「相手の選手のことを良く分かっている。」というアドバンテージはあったが、落ち着いてプレーした。
印象的に残ったのは、東京Vの頃と比べて、体が強くなっていることで、相手に接近されてもしっかりとボールをキープすることができていた。2列目はライバルが多くて、メンバーに入るのは大変であるが、チーム内にキャラクターの重なる選手はおらず、チームのアクセントになれる選手である。MF東が、一番のライバルとなるが、残りの試合でも、MF東を上回るプレーを見せたいところである。
■ 存在感を発揮したMF宇佐美久々の合流となったMF宇佐美も、いいプレーを見せた。MF宇佐美は、つい先日、オランダのフル代表と対戦したばかりなので、オランダ代表チームとの試合が続いたが、やはり、若年層のオランダ代表を相手にした場合は、余裕を持ってプレーをすることができる。
右サイドハーフで起用されたが、ボールもおさまって、「MF宇佐美にボールを預けておけば大丈夫」という雰囲気が生まれてチーム全体が落ち着いた。FW指宿のゴールシーンは、自分自身でもシュートを打つことができたが、確実な方を選択してアシストを記録した。こういうシーンでは、パスを出して失敗すると、批判もされるし、後悔もするので、シュートを選択しがちであるが、適切に判断して、FW指宿にラストパスを送った。
MF宇佐美は、高校生の頃からJリーグの舞台で活躍していたので、当然のことながら、このチームでも主力となることが期待されていた。しかしながら、なかなかチャンスを与えられず、これまで、全くチームに貢献できていない。ライバルも多いため、最終メンバーに残るのも厳しい状況で、トゥーロン国際大会がラストアピールの舞台となるが、いいプレーを見せることができた。
■ FWルコキへの対応に苦しむ・・・一方の守備陣は、オランダの右ウイングのFWルコキの対応に苦労した。右サイドに張っていることが多かったので、DF比嘉がマッチアップすることになったが、1対1では止められないほどのスピードとテクニックを持った選手で、何度も、右サイドを崩されてしまった。
失点シーンは、ともに右サイドを破られており、安易なにアタックしてかわされることの多かったDF比嘉の責任も大きいが、DF比嘉だけでは、対処できないレベルの選手であることは、明らかだったので、周囲の選手は、DF比嘉をサポートする必要があったが、DF山村にしても、MF扇原にしても、MF齋藤学にしても、十分なサポートはできなかった。
本大会で、ここまで強烈なウインガーと対戦することは無いとは思うが、特別な選手がいるときは、チーム全体で協力して守らないとダメで、協力体制が十分ではなかった。いいレッスンになったと思うので、改善を期待したいところである。
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