■ 日韓戦キリンチャレンジカップ2011で日本と韓国が対戦。両チームの対戦は、ここ1年で3回目となる。最初は、昨年10月にソウルで対戦してスコアレスドロー。2回目は、1月のアジアカップの準決勝で、このときは2対2でPK戦に突入し、GK川島の活躍で日本が勝利し、決勝進出を果たした。ともに9月からブラジルW杯のアジア3次予選がスタートするので、最終チェックの場となる。
ホームの日本は「4-2-3-1」。GK川島。DF内田、吉田、今野、駒野。MF遠藤、長谷部、岡崎、本田圭、香川。FW李忠成。インテルのDF長友、ジュビロ磐田のFW前田は怪我のため欠場。昨年10月の日韓戦以来の代表復帰となるDF駒野が左SBでスタメン。MF香川はアジアカップの韓国戦以来の代表戦となる。セレッソ大阪のMF清武は初代表となる。
対する韓国も「4-2-3-1」。GKチョン・ソンリョン。DFチャ・ドゥリ、イ・ジェソン、イ・ジョンス、キム・ヨングン。MFキ・ソンヨン、イ・ヨンレ、ク・ジャチョル、キム・ジョンウ、イ・グノ。FWパク・チュヨン。プレミアリーグのサンダーランドに移籍したFWチ・ドンウォンは欠場。ボルトン所属のFWイ・チョンヨンは怪我のため今季絶望と言われている。
■ 香川真司!、本田圭佑!、香川真司!試合は、前半7分に韓国が最初のビッグチャンスを作る。右サイドバックのDFチャ・ドゥリのクロスにMFイ・グノがニアに飛び込んできて、フリーでヘディングシュートを放つが、枠外でゴールならず。しかし、その後は日本のボール支配率が上がっていって、チャンスを作っていく。
先制ゴールが生まれたのは前半35分のこと。MF遠藤が右サイドでMFイ・グノからボールを奪うと、ためてからゴール前のFW李忠成にやさしいパスを送ると、FW李忠成はうまい落としを見せて、絡んできたMF香川にボールを渡る。すると、MF香川は鮮やかなステップからDFを外してゴールネットを揺らす。MF香川の代表通算6ゴール目で日本が先制する。その直後に、日本は負傷したMF岡崎に代えてMF清武を投入。初代表となったMF清武もうまくボールに絡んで、押せ押せのままで前半を終了する。
後半も日本ペースが続く。後半8分には、左サイドでボールを受けたDF駒野がドリブルで仕掛けてペナルティエリアに侵入して左足で強烈なシュートを放つと、このシュートはGKチョン・ソンリョンに防がれるが、MF清武がこぼれ球を拾ってMF本田圭に丁寧に落とし、MF本田圭が得意の左足で決めて2対0とリードを広げる。
さらにその2分後にも、日本はカウンターからビッグチャンスを作る。中盤でMF香川がボールを持って右サイドに展開すると、右サイドに流れたMF清武が中央にクロス。これに飛び込んできたMF香川が決めて3対0とリードを広げる。MF香川は2ゴール目。MF清武は2アシスト目。
その後、ペースを落とした日本に対して、韓国が決定機を作るようになるが、韓国はシュートに正確さを欠いてゴールは奪えず。結局、試合は、そのまま3対0で日本が快勝。W杯予選に向けて最高の形でテストマッチを終えた。
■ 歴史的な快勝劇「ライバル対決」と言われた日韓戦だったが、終わってみると、3対0の圧勝。日本がホームで韓国に勝利したのは、FW城彰二とFW中山雅史のゴールで2対1と勝利した1998年3月のダイナスティカップ以来で、さらには、韓国相手に3ゴール以上を奪ったのも37年ぶりということで、歴史的な勝利となった。
日本はMF長友とFW前田が欠場で、韓国はFWチ・ドンウォンとFWイ・チョンヨンが欠場となったが、それ以外はほぼベストと言えるメンバーで、親善試合とは思えないほどのガチンコバトルとなったが、「MF朴智星とDFイ・ヨンピョの抜けた穴は大きいな。」と感じさせる試合となった。
それにしても、韓国にとって、この敗戦は屈辱的なものである。「日韓併合以来の屈辱」という得意のフレーズが、明日の韓国の新聞で見られるかもしれない。とにかく、アジアカップに続いて日本に敗れたチョ・グァンレ監督にとっては、これ以上ない厳しい結果となった。W杯のアジア予選前の大事な時期であるが、韓国側のショックの大きさを考えると、解任されても不思議ではない。
■ 最高の試合一方、日本にとっては、最高の試合となった。後半に3点目を奪ってからは、メンバーも入れ替えてダレてしまったが、3対0にするまでの展開は、ほぼパーフェクトだった。キーになったのはMF香川とMF本田圭の二人で、際どい位置でボールを受けてもほとんどボールを失わないので、バイタルエリアで起点ができて、そのあとは、面白いようにサイドを崩していった。
MF岡崎が負傷して途中交代となったことは心配であるが、MF清武を投入したザッケローニ監督の采配も的中し、MF清武は2アシスト。さらには、3点目を奪った後、後半11分にDF駒野に代えてDF槙野を投入した采配も的確で、前半は、守備のときに、DF駒野の裏のスペースを突かれてピンチを招くシーンがあったが、高さのあるDF槙野が入って改善された。DF駒野は2点目の起点となったが、久々の代表戦となったDF駒野を、比較的、いいイメージのままで下げることができた点も、次につながるはずである。
記憶をさかのぼってみても、韓国相手にこれほどの試合ができたのは、1999年秋の五輪代表の試合くらいである。このときは、MF中田英、MF中村俊らが中心となって、国立で韓国を4対1で撃破したが、フル代表レベルでは記憶にない。いつまでも、レコーダーにとどめて、見直したい試合の1つとなった。
■ MF香川真司 2ゴール前半の中盤から、日本がボールを持てるようになって、セットプレーを中心に何度もゴール前を脅かすシーンを作ったが、韓国の壁も厚くてゴールを奪えなかった。しかし、前半35分にMF香川が韓国ゴールをこじ開けた。このシーンは高い位置でボールを奪ったMF遠藤のプレーも、ゴール前で正確な落としを見せたFW李忠成も見事だったが、最後を決めきったMF香川も見事だった。
その後もチャンスを作り続けたMF香川は、後半10分にもMF清武のパスからネットを揺らして2ゴールの活躍。これまで、代表の試合では「左サイド」を任されていて、中に入っていくタイミングをつかめずに持ち味を出せない試合が続いたが、この日は、MF本田圭やMF清武との連携もよくて、ストレスなくプレーすることができた。
普段、ドイツでプレーしている選手なので、韓国くらいの相手なら何のプレッシャーも感じないかもしれないが、これだけ落ち着いてプレーできるのはさすがとしか言いようがない。文句なしのワールドクラスのプレーだった。
■ MF本田圭佑 2点目のゴールMF香川とともに攻撃を引っ張ったMF本田圭は2点目のゴールをマーク。この試合は、かなりシュートチャンスも多くて、ゴールの予感はしていたが、シュートがヒットせずに枠に飛ばないことが多かった。しかし、ゴールシーンは落ち着いて左足を振り抜いた。
リプレーを見ると、MF清武のパスに対して、うまくスペースを作って、シュートコースを作った巧みなゴールだったが、普通の選手では、この体勢で逆サイドの隅に飛ばすことはできない。MF本田圭の強さが十二分に発揮されたゴールとなった。
もちろん、ゴールシーン以外でも存在感抜群で、MF本田圭もワールドクラスのプレーを見せた。アジアカップでは黒子に徹することが多かったが、この試合は、人を使うことが上手いMF清武が入ったこともプラスに影響したのか、自由にプレーしていて、MF本田圭の良さも発揮された。ずっと、議論されてきたMF香川とMF本田圭の共存問題も、これで収束することだろう。
■ 代表デビューのMF清武弘嗣この二人にうまく絡んでいったのが途中出場のMF清武である。序盤からいい動きを見せていたMF岡崎が前半の早い時間帯で負傷したため、前半36分に投入されたが、これがデビュー戦とは思えないほどの落ち着いたプレーで2アシストをマーク。これ以上ないほどの代表デビュー戦となった。
MF清武は、今回が初のフル代表なので、ほとんどの選手と初めて一緒にプレーしたことになるが、違和感を感じさせなかった。それを全く感じさせなかった。MF香川とも、C大阪ではチームメイトだった時期もあるが、一緒にピッチ上でプレーしたのは、ほんの数分程度である。それでも、これだけの連携ができるのだから、「サッカーセンス」は、代表に入っても図抜けているように思える。
■ FW李忠成も好プレー攻撃では、MF香川、MF本田圭、MF清武の3人が目立ったが、1トップに入ったFW李忠成も非常に良かった。MF香川の1点目のゴールをアシストしたポストプレーは巧みで、2列目の3人ともうまく絡んでチャンスを作った。何度かあったチャンスに決めきれなかったことは課題であるが、FW前田とのポジション争いでは、少し優位に立ったように感じられる。
また、久々の代表戦となったDF駒野もよかった。前半は、DF駒野のサイドで守備の枚数が不足気味で、守備では苦戦したが、後半のMF本田圭のゴールシーンは、DF駒野のドリブル突破が起点となった。左サイドは本職ではないが、怪我のDF長友にも刺激となったことだろう。
逆サイドのDF内田も悪くなかった。後半のカウンターからの決定機がポストに当たったシーンは決めてほしかったが、時間が経つにつれてパフォーマンスが上がっていった。攻撃にうまく絡んで、なぜ、シャルケでポジションを失っているのだろうか?と思わせるプレーを見せた。
■ 次は北朝鮮戦最高の形で韓国戦を終えた日本代表の次の相手は、北朝鮮戦となる。北朝鮮は引いて守ってくると思われるので、ずっと日本が攻める展開になると予想される。この試合のように、前半のうちにゴールをこじ開けられると問題ないが、0対0で進んでいくと、精神的につらくなる。前半にあるチャンスを確実に決めたいところである。
ただ、この試合のようなプレーができれば、特に問題もないだろう。北朝鮮はそれほど高さのあるチームではないので、セットプレーも有効になるだろう。大事なホーム初戦となるが、確実に勝利してくれるだろう。それほど、期待感を感じさせる試合だった。
とにかく、この試合は、スコアも、内容も申し分なく、日本代表がアジアの中で抜けてきたような印象すら受ける。韓国も同じように海外組が増えてきているが、MF朴智星を除くと、強烈なインパクトを残している選手はおらず、ワールドクラスのプレーヤーになれそうな選手は出てきていない。本当に韓国は、日本にとって「永遠のライバル」なのか?今後も、ずっと、日本のライバルであり続けることができるのか?
韓国サッカー界は、今、Kリーグの八百長問題があって、国民から厳しい目で見られているという。もともと、そんなにサッカー人気の高い国ではないので、一歩間違うと、没落する可能性は十分に考えられる。これから「アジアは一強」の時代になるのだろうか?
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