■ 32節 J1は残り3試合。3位以内のチームに与えられるアジアチャンピオンズリーグを目指す5位の川崎フロンターレと4位セレッソ大阪の直接対決。14勝7敗10分けのC大阪と、15勝10敗7分けの川崎フロンターレは、勝ち点は同じ「52」で並んでいる。得失点差で上回るC大阪が上に位置している。
ホームで勝ちたい川崎Fは<4-2-2-2>。GK相澤。DF伊藤、菊地、寺田、小宮山。MF横山、中村憲、楠神、ヴィトール・ジュニオール。FW矢島、ジュニーニョ。DF井川が出場停止。DF森、MF田坂が怪我で欠場。MF稲本はベンチ外。FWジュニーニョは16試合で13ゴール。FW矢島はここ5試合で3ゴールを挙げている。
対するセレッソ大阪は<4-2-3-1>。GKキム・ジンヒョン。DF酒本、茂庭、上本、丸橋。MFアマラウ、マルチネス、乾、家長、清武。FWアドリアーノ。GKキム・ジンヒョンは復帰して3試合目。DF高橋は欠場。DF酒本は3試合連続スタメン。
■ セレッソが制する試合は序盤から攻守の切り替えの早いスピーディーな展開となる。前半は川崎FがDF小宮山のいる左サイドから何度か崩してチャンスを作る。しかし、決定機にシュートが枠に飛ばずにゴールは奪えない。C大阪は3シャドーの一角のMF乾にミスが目立ってボールを失うシーンが多い。前半はやや川崎F優位で終了する。
後半開始から、C大阪はボランチのMFアマラウに代えてFW小松を投入し、<4-2-2-2>に変更し、MF家長をボランチに下げて、MFマルチネスとのダブルボランチに変更する。この交代が成功する。後半12分に右サイドからDF酒本がクロスを上げるとニアサイドでFW小松が合わせてC大阪が先制。さらに後半24分にもFWアドリアーノが自陣からドリブルで突進。最後はDFをキックフェイントでかわして左足でゴール。2対0とリードを広げる。FWアドリアーノは10ゴール目。
その後、川崎FはFWジュニーニョのパスからMFヴィトール・ジュニオールが決めて1点を返すが、追いつくことは出来ず。上位対決はアウェーのC大阪が勝利し、4位を守るとともに、3位の鹿島に1ポイント差に迫った。一方の川崎は痛い敗戦。6位に転落し、ACL出場権獲得は難しくなった。
■ 効果的な交代ショートカウンターを武器に戦う両チームの対戦は、前半から激しい展開となった。最後まで両チームともに運動量が落ちない熱い戦いとなったが、先手を打って仕掛けたC大阪が逃げ切った。ポイントになったのは後半開始からFW小松を投入したこと。MF家長をボランチに下げて、「2トップ+2シャドー」に変更したが、これが見事に当たった。
ブラジル人のクルピ監督は、メンバーを固定しがちな監督であり、交代策も積極的ではない。試合前から決まっていたかのように、時間が経ったら疲れてきた前線の選手を交代させるか、逃げ切るときに守備を固めるために守備的な選手を入れるかのどちらかであり、この日のような交代は非常に珍しい。しかし、これが見事に成功した。
Mfアマラウは守備力はあるが、つなぎはぎこちなくて、前半にMFアマラウがボールを失ってカウンターを食らいかけるというシーンもあった。川崎Fはカウンターが得点源であるが、MFアマラウを下げてMF家長を入れたことでボール保持率を上げようとしたが、後半は狙いの展開となった。カウンターを受けたときは、MFアマラウの方がはるかに効果的な守備ができるが、安易な中盤でのロストを減らして、そもそもとしてカウンターを受けないようにメンバーを代えてきた。
■ ニアサイドの小松後半開始から投入されたFW小松が先制ゴールをマーク。チャンスを作り始めていた時間帯だったので、非常にいいタイミングでのゴールだった。C大阪は、FW小松、FW播戸、FW永井の3人のストライカーがベンチに入っているが、最近の序列ではFW小松が一番上になっていて、先日も決勝ゴールを挙げているが、ここに評価を上げてきている。
FW小松の魅力はスピードと体格を生かした強引なドリブル突破からのシュートであるが、ヘディングシュートも苦手ではない。クロスを上げたのはDF酒本だったが、ニアサイドへ早いクロスを送ってヘディングで合わせるというプレーは、昨シーズンのC大阪ではよく見られたパターンである。
今シーズン、175㎝のFWアドリアーノの1トップになって高さがなくなったので、こういうプレーは全く見られなくなったが、J2時代に培ったプレーであり、1トップのFW小松やFWカイオが、右サイドのDF酒本や左サイドのDF石神からのアーリークロスをニアで合わせるシーンは非常に多かった。ただし、飛出しが早すぎて、オフサイドになるケースがほとんどで、あまりゴールにはつながっていなかったが、この日は見事に決まった。
■ ホームで敗戦一方の川崎Fはホームで痛い黒星。ここ6試合では2勝2敗2分けと思うように勝ち点を伸ばせておらず、6位に転落してしまった。前半はいい形でチャンスを作るシーンもあったが決めきれずに0対0で前半を終えると、後半にシステムを変更してきたC大阪に対応できずに2失点。終盤に攻め込んだが、MFヴィトール・ジュニオールのゴールを1点を返すにとどまった。
頼みのMF中村憲はMFヴィトール・ジュニオールのゴールの起点になったが、全体としてはミスが多くて中盤で不用意にボールを失うケースが多かった。DF酒本が守っていたC大阪の右サイドは穴となっていて、DF小宮山が前半は積極的に仕掛けたが、後半はチームが劣勢になってサイドを生かせなくなった。
■ サイクルの終焉これで川崎Fは6位に転落。4位以内に入ればACL出場の可能性が残るが、残り2試合ということを考えると、かなり厳しくなったといえる。すでにリーグタイトルと天皇杯を逃しており、今シーズンは思っていたようなシーズンとはならなかった。
誤算だったのは、選手の流出であり、GK川島、FWレナチーニョ、GK鄭大世が夏に欧州のクラブに移籍してしまった。GK川島の代役で出場機会を得たGK相澤は目覚まし活躍を見せているが、FWレナチーニョとFW鄭大世がいなくなったことで、攻撃に以前のような迫力はなくなってしまった。どこからでも点が取れるのが川崎Fの魅力であったが、この試合は、FWジュニーニョとMF中村憲に頼る場面が多く、手詰まり感もあった
2005年にJ1に昇格した川崎Fは、MF中村憲剛とFWジュニーニョを中心に、ここ5年で一気に強豪クラブの仲間入りを果たした。その間に、MF谷口やFW鄭大世が成長し、GK川島やFWレナチーニョといった能力の高い選手を相次いで獲得したことで上位の常連になったが、プラスアルファを作っていたFW鄭大世、GK川島、FWレナチーニョがいなくなって、MF谷口もレギュラーから外れている。今シーズンは日本代表のMF稲本を獲得したが、期待ハズレに終わっており、チームとしての厚みはなくなってしまった。
代わりに入っているFW矢島、MF楠神といった選手は能力の高い選手であるが、まだ経験が不足しており、この日のスタメンで代表クラスといえるのは、MF中村憲を除くと、DF小宮山くらいであり、スケールダウンした感は否めない。
そう考えると、関塚監督からバトンを引き継いだ高畠監督はよくやっているといえるが、MF中村憲も30歳を迎えて、FWジュニーニョも33歳になっている。チームを支えてきた二人も、そろそろ厳しくなる年齢である。雨の等々力競技場は、サイクルの終焉を感じさせる試合となった。浦和や名古屋といったお金のあるクラブと比べて、「育成」や「発掘」といった部分で強豪にのし上がってきたチームである。「上位クラブ」という地位をどのようにして維持しながら、タイトルを目指していくのか?今オフは、川崎Fにとってはターニングポイントになりそうである。
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