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2020年8月 5日 (水)

世界的混乱の私営化

Stephen Karganovic
2020年8月2日
Strategic Culture Foundation

 一人のアメリカ人オリガルヒによる最近の不用意な発言は、国際法と国際秩序に、わずかに残されたものを損なうための新手法を示唆している。本気か、冗談か誰にもわからないが、テスラ・モーターズの大物イーロン・マスクが、去年エボ・モラレス大統領を打倒したボリビア・クーデターは「ボリビア国民の利益最優先ではない」と訓戒し「誰であれ必要な連中を、我々はクーデターする。さっさと対処する!」と恥知らずにツイッター投稿した内容で、情報通の投資家は、確実に、「本気」に賭けるだろう。

 「リチウムを入手できるよう、ボリビアで、エボ・モラレスに対してクーデターを組織した」かどで、直接、マスクにではなく、アメリカ政府の責任を問う別のツイートに、マスクが対応したものなので、もちろん、もっともらしい否認の余地がある。マスクの「我々」という答えは、理論的には、卑劣な行為に対する責任の個人的告白ではなく、むしろ、自国の外交政策に対する支持の善良な国民の忠実な表現と解釈できる。寛大に言えば、そのような読み方も可能だ。だが、より現実的には、大衆の心では、先駆的な電気自動車設計と結び付いているが、マスクが言っているのは、実際ボリビア政権転覆作戦に、大いに関心を持っていたことだ。電気自動車は、非常に簡単に言えば、リチウム電池で動き、ボリビアはたまたま、その鉱石の主要な供給源なのだ。リチウムがなければ、テスラも、他のいかなる電気自動車もないのだ。

 さらに多少の空白を埋めると、たまたま、クーデターのわずか数週間前の2019年11月、モラレス大統領は、リチウム埋蔵を含め、本質的に、ボリビアの鉱物資源の国営化政令を公表していた。ボリビア観察者たちは、もちろん、いつか、そうなるのはわかっていた。政治的に素朴な大統領は、二年前、ボリビア国民に、国富の利益を享受する権限を与える彼の大胆な作戦を明らかにしていた。彼の素朴さを読み、泣いていただこう。「ボリビアのエボ・モラレス大統領は、この貴重な資源の世界価格急騰に彼の希望を託し、現在貧困に陥っている南米の彼の国の繁栄する将来を見ている。「我々は巨大なリチウム産業を開発する。既に8億ドル以上得ている」とモラレスはドイツのDPA通信社に語った。」

 だから、早くも2017年、ジャッカル連中は通知を受けていたのだ。モラレスの「罪」は十分多数あり、たとえ彼が適正な価格を引き出す意欲的プロジェクトを発表して、リチウム・カルテルの反感を買っていなかったにせよ、彼は結局、排除の標的に定められていたはずだ。だが今、少なくとも、イーロン・マスと彼の現地代理人は、クーデター準備が行われていた間、中立の観察者でない「可能性が大いに高い」ことがハッキリしている。マスクの「誰であれ必要な連中を、我々はクーデターする。」は、アメリカの半球における権益を支持する忠実な市民としての発言だったかもしれないが、明らかに彼は、この紛争には彼自身の重大な金銭的利害関係を持っていた。

 実際、イーロン・マスクという名の個人と、ボリビア国家間の争いは、彼らの現地チームが負けていた際、気高いアメリカ外交がボスニアで強く要求していた「公平な条件」からはほど遠かった。マスクの680億ドルの個人資産は、2019年、405.8億ドルのボリビアGNPと、著しい対照を呈している。率直に言って、アメリカの寡頭制支配者は、ボリビアを買い、多数の変化を繰り延べられたはずだ。だが、もし遥かに安くクーデターを組織し、手の者を権力の座につけ、次に、リチウムを含め、国を自分ものにできるなら、国を買うだろうか? そのほうが、ずっと合理的な事業計画だ。

 モラレス大統領の「ボリビアの膨大な埋蔵量は、国にとって、思いがけない大たなぼたで、富を生み出し、貧窮した住民に繁栄を広めるのを可能にする」という生意気な夢物語は影響力を持った一部のサークルにとって、明らかに、初めから見込みのないもので、去年のファシスト・クーデターが、少なくとも一時的にそれを終わらせたのだ。

 膨大な金銭上の興味を持った非常に大金持ちの男が、国際連合加盟国の合法政府を打倒するため、彼の資源を投入し、罰せられずに、やり通し、回顧して、自分の業績を得意げに話さえしている本物の可能性は衝撃的だ。マスクの告白的発言に対する軽薄さは、国際法制度の腐敗を完全に反映している。あるいは、いっそう正確には、それは、我々が、ここで引き合いに出しているボリビアのように、途方もない権力がある個人と比較的弱い国家間や、国家間や、個人間、あらゆるレベルで、社会病質的な、捕食性の行動を制限する、基本的標準を体現する、イワン・イリインが「法意識」と呼んだものが、完全に消滅したことを示している。

 だが、ボリビアは決してまれな例ではない。政府要員に代わって、民間要員による外交政策遂行の意図的代用は、少なくとも、1995年8月の、クロアチアの嵐作戦にさかのぼる。それは、表向きは、ワシントンに本拠がある、窮地にあるNATO同盟諸国に、(戦闘教義上の助言や、シナリオ策定や、アメリカ政府人工衛星諜報情報を含め)彼らの経験と専門知識を供与する退職将校の民間団体MPRI(ミリタリー・プロフェッショナル・リソーシズ・インコーポレイテド)により背後から管理されていた。1995年、MPRIは、国防総省とホワイトハウスの、まことしやかな否認を得て、クロアチア軍事攻撃を画策し、何千人ものセルビア民間人犠牲者をもたらし、国連が保護していたクライナ地域から、250,000人のセルビア住民を追放した。

 同じ原則が機能している最近の具体例には、2020年5月、ベネズエラで、物理的に、指導部を捕縛し、自称「大統領」フアン・グアイドの周囲に群がる従順な操り人形に置き換えことを目指して、民間業者と契約して実行された侵略がある。

 国際関係分野で、我々は、ある傾向、あるいは現在のコロナ流行の語彙から単語を借用すれば「新しい日常」を見ているのだろうか? どうやら、そのようだ。この新たな免除の先駆者は、より多くの富を蓄財するなど、彼らの階級のお仲間には、おそらく許される活動を遥かに越える破壊的な政治的下心を持った裕福なオリガルヒだ。ここですぐ思いつくのは、ソロス(カラー革命)とゲイツ(世界への危険なワクチン押しつけと人口削減)だ。今ボリビア・クーデターへの関与承認は、我々が将来、その善行を経験し、恐れなくてはならない、もう一人の「博愛主義者」イーロン・マスクの暴露なのだろうか?

 Stephen Karganovicは、スレブレニツァ歴史プロジェクト理事長

 個々の寄稿者の意見は、必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2020/08/02/the-privatization-of-global-chaos/

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