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2021年2月 5日 (金)

バイデンの対ロシア政策の背後にある破壊計画

2021年1月29日
F. William Engdahl
New Eastern Outlook

 バイデン新政権は、初日から、ウラジーミル・プーチンのロシア連邦に対し、敵対的で、攻撃的な政策を採用することを明らかにした。この姿勢の背後にある政策は、プーチンのロシアが欧米に対して行うか、あるいは行わないかもしれない、どんな悪事も全く無関係だ。プーチンが親米反体制派分子アレクセイ・ナワリヌイを極端に致命的なノビチョク神経ガスで毒殺しようとしたという、ばかばかしい主張とも無関係だ。それはグローバリスト権力者の遥かに深い狙いに関係がある。その狙いは今まさに推進されているのだ。

 ジョー・バイデンの閣僚選択が多くを明らかにしている。彼の主要外交政策担当者指名は、トニー・ブリンケンが国務長官で、ビクトリア・ヌーランドが政治担当国務次官だ。ビル・バーンズがCIA長官、ジェイク・サリバンが国家安全保障担当大統領補佐官アヴリール・ヘインズが国家情報長官で、全員がオバマ-バイデン政権高官で、全員緊密に協力していたのだ。全員、中国ではなく、ロシアを、アメリカ世界覇権に対する安全保障上の主要脅威と見なしている。

 候補者として、ジョー・バイデンはしばしばこれを述べていた。彼の主要外交政策担当者の選択が、バイデン自身が、どれほど、そうであるかにかかわらず、バイデン政権の焦点が、中国脅威論からプーチンのロシアに移行していることを強調している。バイデンのCIA長官ビル・バーンズは元モスクワ大使で、2014年、ウクライナでのオバマCIAクーデターの際は国務副長官だった。注目すべきことに、2014年11月にバーンズが国務省を去った際は、現国務長官トニー・ブリンケンが後任だった。ブリンケンが、ロシアのクリミア併合に対するアメリカ国務省の対応を定式化したと報じられている。

ヌーランドが鍵だ

 2016年のアメリカ選挙干渉から、最近のソーラーウィンズ社のアメリカ政府コンピュータ・ハッキングまで、証明されているか否かにかかわらず、近年ロシアに対して行われた他のあらゆる主張全て、プーチンのロシアのせいにする点で、バイデンが任命した連中全員はっきり一致している。

 だが、バイデン新政権とアメリカ諜報機関がプーチンとロシアに対して何をたくらんでいるのかを判断する上で、最良の兆候は、2013年-14年に、ウクライナでのアメリカ・クーデターで、当時のジョー・バイデン副大統領と一緒に政治工作を行ったビクトリア・ヌーランドその人に与えられようとしている重要な役割だ。彼女は、2013年-14年マイダン広場抗議行動の際、ウクライナ新政権のためのEUの選択対象に関し、キエフ駐在大使と話す、アメリカ大使ジェフリー・パイアットへの電話で「くそくらえ、EU」発言を不名誉にも盗聴された。夫のロバート・ケイガンは悪名高いワシントン・ネオコンだ。

 2016年、トランプ当選で政府を辞するや否や、ヌーランドは、全米民主主義基金(NED)の傘下団体、民主党国際研究所所長でもある前国務長官マデレーン・オルブライト率いるオルブライト・ストーンブリッジ・グループの首席カウンセラーになった。ヌーランドは、NED役員会に入り、2016年の後、NEDの政権交代工作と密接に連絡を維持していた。彼女はロシア語に流ちょうなロシア専門家で政権打倒の専門家だ。

 2013年、親米・反ロシア-ウクライナクーデターで、権力の座にアルセニー・ヤツェニュークを据えるため、ユーラシアとヨーロッパ担当のオバマ国務次官補として、ヌーランドは、ジョー・バイデン副大統領と緊密に協力した。ロシアのユーラシア経済連合に加入すると彼が決定した後、彼を強制的に追放するため、選挙で選ばれたウクライナのヴィクトル・ヤヌコーヴィッチ大統領政権に対し、彼女は何カ月も抗議行動を推進した。2014年2月のキエフ・クーデター直後のインタビューで民間諜報企業ストラトフォー創設者ジョージ・フリードマンは「(アメリカ)史上最も露骨なクーデター」と呼んだ。

新たな構想

 2020年8月、ニューヨーク外交問題評議会(CFR)雑誌Foreign Affairs論文で、ヌーランドは、今後数カ月、ロシアを傷つけるための最もあり得るアメリカ戦略は何かを概説している。彼女は「アメリカ-ロシア関係の状態に、諦めが始まっており、アメリカはゲームを変える自身の能力に自信を失っている」と不満を言っている。言い換えれば、彼女はプーチンとの「ゲームを変える」ことに関心があるのだ。過去12年間「ロシアは軍縮協定に違反し、新しい不安定化武器を配備し、ジョージアの主権を脅し、クリミアとドンバスの多くを掌握し、リビアとシリアとベネズエラで専制君主を支持し、外国銀行や、電力網や、政府のシステムに対してサイバー兵器を使い、外国の民主選挙に干渉し、ヨーロッパ領で、敵たちを暗殺した」と彼女は告発している。

 彼女は「特定のロシア銀行や企業やプーチン後援者に対して繰り返すアメリカ経済制裁はロシアの政策をほとんど変えておらず、アメリカと連合国の制裁は、当初こそつらいが抜け穴が増え乱用で無力になり、もはやクレムリンへの圧力にならない」と主張する。

 だが現在、プーチンのロシアは、これまで20年、決してなかったほど脆弱だとヌーランドは示唆している。「ロシア大統領を心配させているはずの一つのこと。ロシア国内の雰囲気。海外でプーチンが権力を振るっているにもかかわらず、20年、ロシア近代化に投資し損ねていることが彼にとって悪い結果になっている。2019年、ロシアのGDP成長は沈滞した1.3パーセントだった。今年のコロナウイルス流行と石油価格暴落が、ロシアの道路、鉄道、学校や病院をぼろぼろにして、かなりの景気後退をもたらした。約束されたインフラ出費が決して行われないため、国民は落ち着かなくなり、税金も退職年齢も上がっている。汚職は見境がないまま、ロシア人の購買力は縮小し続けている。」

 CFR論文で、ヌーランドは「一見もっともらしい否定論拠を維持しながら、ロシア内で、ワシントンと同盟国が同じ手段で、FacebookやYouTubeや他のデジタルプラットホームを利用して、プーチンに報復しない手はない」と主張している。ロシア人は広範にインターネットを使っており、ネットは、ほとんどオープンなので「プーチンの最善の努力にもかかわらず、今日のロシアは、より浸透しやすい。若いロシア人は国家が資金援助するテレビや印刷媒体より、インターネットで情報やニュースを得る可能性が遥かに高い。ワシントンは、より多くの彼らに近づく努力をするべきだ。ロシアのソーシャル・ネットワーク、OdnoklassnikiやVKontakteで。FacebookやTelegramやYouTubeで。出現しつつある多くの新しいロシア語デジタルプラットホームで」。

ナワリヌイ

 ヌーランドがForeign Affairsの7月-8月号論文を投稿した頃、プーチンの永続的な敵、アレクセイ・ナワリヌイは、表向き、極めて猛毒な神経ガス、ノビチョクで彼を殺すプーチン諜報機関による企みと主張するものから回復して、ベルリンにいた。2010年のエール大学フェローとして、アメリカで教育を受け、10年以上、強い支持を得ようとしている反体制派のナワリヌイは、1990年代に、創設者が「かつてはCIAがしていたことを、民間で」行うと描写した、ヌーランドの全米民主主義基金から金を受け取っていることが文書記録として残っている。ナショナル・パブリック・ラジオによれば、2018年、ナワリヌイには、アメリカで600万人以上のyoutube購読者と、200万人以上のTwitterフォロワーがいた。何人がアメリカ諜報機関に雇われたボットかは不明だ。ベルリンに亡命して5カ月後の今、ナワリヌイは、過去の告訴のため、投獄の可能性に直面していることを知りながら、大胆な帰国をした。それは明らかに彼の欧米スポンサーによる計算だった。

 アメリカ政府の政権転覆カラー革命NGOであるNEDが、1月25日に発表した記事は、ソーシャル・メディアがもたらすプーチン不安定化というヌーランドの呼びかけに共鳴している。バイデン就任式典のわずか三日前、モスクワでのナワリヌイ逮捕について書いて、NEDは「デジタル時代のゲリラ政治戦争モデルを作ることで、ナワリヌイは、ロシア政府の想像力と能力の全くの欠如を暴露した」と述べている。彼らはこう付け加えている「プーチンは八方ふさがり状態にある。プーチンがナワリヌイを殺害すれば、この問題に更に多くの注目を引きつけ、不穏状態を悪化させかねない。プーチンがナワリヌイを生かせておけば、彼が刑務所にいるか否かにかかわらず、ナワリヌイは抵抗の中心のままで、ナワリヌイは中毒未遂以来、それぞれの機会で、プーチンを出し抜いている。これはプーチンにとって、いささか屈辱的だ。」

 8月、ロシア極東での毒殺未遂とされているものの後、ナワリヌイは治療のため、ベルリンに飛行するのをロシア政府に許されたのだが、もしプーチンとロシア諜報機関が本当に彼を殺したいと望んでいたなら、これは奇妙な行動だ。亡命中の五カ月間に起きたことが、ナワリヌイの帰国は、明らかに匿名の欧米諜報機関の政権転覆専門家に準備されたことを示唆している。亡命中、ナワリヌイが直接CIA専門家から家庭教師を受けていたことを示す諜報情報を、クレムリンは主張している。

 1月17日、モスクワでのナワリヌイ逮捕時に、彼の反汚職NGOは、ドローンを使用して映画撮影したと主張する、プーチンの所有だとされる黒海の巨大宮殿の、しゃれたyoutubeドキュメンタリーをナワリヌイ・チャンネルで発表したが、なかなかの成果だ。ビデオで、汚職に抗議するため、10億ドルとされる「プーチン宮殿」に向かって行進するよう、ナワリヌイは、ロシア人に呼びかけた。

 明らかに、高度なアメリカ人情報戦争専門家やNEDのような団体に支援されているナワリヌイは、プーチンが候補者ではない9月の議会選挙で、統一ロシア党候補者に挑戦するための運動を構築するよう命令されている可能性が高い。彼は彼が「スマート投票(ウームナエ・ガラサヴァーニエ)」戦術と呼ぶNEDの特徴的新戦術まで授けらている。

 ニューヨークの外交問題評議会CFRのロシア専門家で、NED前理事会メンバーのスティーヴン・セスタノヴィッチは、新バイデン・チームのありそうな作戦を示唆した。1月25日、セスタノヴィッチは、CFRブログでこう書いた「プーチン政権は強力なままだが、アレクセイ・ナワリヌイを支持する全国的抗議行動は、それに対する、ここ数年間で最も重大な挑戦だ。反政府派指導者アレクセイ・ナワリヌイは、プーチンがこれまで直面したことのない政治的創造力と戦術的技能を示している。もし抗議行動が続けば、彼らはプーチンの数十年にわたる権力維持の脆弱性を明らかにできるだろう。」これは拘置所からのナワリヌイ釈放を要求していた全ロシア規模抗議行動の二日後のことだ。「モスクワに戻るという彼の大胆な決定と、政権の腐敗を示すとされる広く見られたビデオで、彼は自分が牢獄からでさえ、敵プーチンが面するおそらく最も手ごわい、有能で想像力豊かな政界実力者であることを示している」と彼は書いている。「ナワリヌイ・チームの戦略上の精巧さは、ビデオ公開でも、その前の、去年、彼を毒殺しようとしたロシア連邦保安庁(FSB)要員の暴露によっても明確に示されている。」

 前モスクワ大使をCIA長官に、国務省第三位の地位にビクトリア・ヌーランドを指名するバイデン・チームの明確な決定と、他の諜報機関幹部選択とあいまって、ロシア不安定化が、ワシントンが進めている焦点であることを示している。NEDが大喜びで表現しているように、元駐ロシア・アメリカ大使マイケル・マクフォールによれば「バイデン就任式三日前のナワリヌイ逮捕は、バイデン最初の外交政策危機のあらゆる要素がある。引き継ぎ文書に何があるにせよ、これが今彼らの中心だ。」

 だが理由は、事実か否かにかかわらず、プーチン側近による国内汚職ではない。バイデンはそれには全く無関心だ。そうではなく、軍事的防衛か、伝統的に保守的なロシア文化によるかにかかわらず、国民性を守ろうとする、まさしくプーチン下の独立主権国家ロシアの存在そのものなのだ。1990年、ブッシュ政権中の、アメリカが支援するNEDによるソ連不安定化以来、ロシアをいくつもの部分に切り分け、国家を分解し、膨大な原料資源の残りを略奪するため、それがNATOとNATOの背後の強力な金融権益組織の政策だった。グローバリストのグレート・リセットにはロシアのような独立国家のための余地はないというのが、今新バイデン・チームが、はっきり伝えているメッセージなのだ。

 F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師。プリンストン大学の政治学位を持つ石油と地政学のベストセラー作家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/01/29/the-destructive-plan-behind-the-biden-russia-agenda/

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 森会長発言でオリンピック中止決定では?日本の民度を世界に理解頂けた。そしていかにもの総務省スキャンダル。この親にして。

 記事原文にはヌーランドの写真がある。どこかで見た気がして考えた。東大寺南大門金剛力士像。運慶に失礼だが、ケーガンとの組み合わせ、まるで阿吽の像。品格皆無ながら、侵略帝国主義の守護神としては適役。

 昨日の国会質問、玄葉衆議院議員の中国包囲網クアッド推進進言に驚いた。驚く小生が無知なのだが。Wikipediaを見ると松下政経塾出身。最初の所属政党は自民党。政策を見ると、隠れ自民党の典型。納得。こういう人物が幹部のヌエ立憲民主党、支持率があがったら不思議。彼らはアメリカ二大政党コピーでしかない。クアッドに関するロシアの視点は翻訳記事『オーストラリア首相の日本訪問』で想像できる。もちろん、この記事、宗主国大本営広報機関のGoogleでもYahooでも、しっかり隠蔽されている。かろうじて、まともな検索エンジンDuckDuckgoなら表示される。

 大本営広報部、どの局の、どの呆導番組にも、ご意見を聞きたい知識人は決して登場しない。息のかかった御用タレントばかり。孫崎享氏や前川氏のような方々は決して登場させない。報道ステーションに登場する女性の言動が釈然としなかったが、Wikipediaを見て納得。公益財団法人笹川平和財団の日米豪印(クワッド)による「インド洋地域の安全保障」政策提言プロジェクトメンバー。日本人を、親米、反中国に洗脳する布陣の典型。長年のマスコミ呆導絨毯爆撃で日本人は洗脳され続けている。その結果の小選挙区制による結果が今の状況。そもそも腐敗マスコミは小選挙区制を推進した。だから決して小選挙区について真摯な論評をしない。罪人は罪を認めない。マスコミは支配の道具。

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