アメリカの双頭一党制度
ケイトリン・ジョンストン
2019年12月14日
私がアメリカ政治について書き始めて以来、繰り返し何度も思い出す場面がジョン・スタインベックの『真珠』にある。スタインベックの名声と、欧米の、いわゆる民主主義で目にするエセ二大政党制の完ぺきな描写からして、私はこの場面が、いまだ政治ミームになっていないのは驚くべきことだと思う。
『真珠』は、カキの中で、題名にもなっている巨大な真珠を見つけ、それを町の真珠買い取り業者に売りに行く貧しい漁師キーノについての短い小説だ。彼は知らないが、買い取り業者には複数の事務所があって、お互い競争するふりをしているが、実際は全て同じ所有者のもとで働いているのだ。
「キーノは世界的な真珠を発見した」とスタインベックは書いている。「町の小さな事務所には、漁師から真珠を買う男たちが座っていた。連中は真珠がくるのを座して待ち、漁師が許容できる最安値に達するまで、カラカラ笑い、戦い、叫び、脅すのだ。」
「買い取りが終わると、業者はぽつり座って、そわそわ真珠を指で弄び、真珠を所有できたならいいのにと思うのだった。なぜなら実際は、多数の買い取り業者などいなかったから。業者は、たった一人で、競争している見せ掛けを作るため、これら代理人連中を別々の事務所に配置していたのだ。」
キーノがこの上なく貴重な真珠を業者に持って行くと、連中は、ばかげたほど安い価格で彼をだますべく、それに価値がないと思わせようとして、協力して芝居を打つのだ。
机の向こうの男が言った。「この真珠に値をつけた。持ち主は、それを公正とは考えない。これを調べた上で、言い値をお聞ききしたい。ところで」「私からは、いくらだとは言ってませんよ」と彼はキーノに言った。
無関心風の細身で筋肉質の最初のディーラーは初めて真珠を見るように思われた。彼は真珠に取り掛かり、親指と人差し指の間で素早く転がし、軽蔑するように投げて皿に戻した。
「私を議論に巻き込むなよ」と彼が皮肉そうに言った。「私は値を付けない。私は欲しくない。これは真珠じゃない。とんでもないものだ。」彼の口がゆがんだ。
今度は二人目のディーラー、内気そうな柔らかい声の小男が真珠に取り掛かり慎重に吟味した。彼はポケットからレンズを取り出し、拡大して真珠を点検した。それから彼は静かに笑った。
「良い真珠は練り物で作られている」と彼は言った。「私は、そういうものを知っている。柔らかくて、チョークのようで、色を失い、数カ月で駄目になる。ご覧なさい」彼はキーノにレンズを渡し、使い方を教え、一度も真珠の表面が拡大されるのを見たことがなかったキーノは、妙な様子の表面に衝撃を受けた。
三人目のディーラーは、キーノの手から真珠をとった。「私の顧客の一人は、こういうものが好きだ」と彼は言った。「500ペソだそう。多分私は600で顧客に売れる。」
キーノは素早く手を伸ばし、彼の手から真珠をひったくった。彼は鹿革でそれを包み、シャツの中に突っ込んだ。机の向こうの男が言った「私はばかだとわかっているが、最初の申し出は有効だ。1000だそう。あなたは何をしているんだ?」と彼は、見えないところに真珠に押しこむキーノに尋ねた。
「私はだまされている」とキーノが激しく叫んだ。「真珠はここでは売らない。首都にだって行くつもりだ。」
そこで、ディーラー連中は、素早くお互いちらりと見た。彼らは、やりすぎたのが分かっていた。彼らは失敗のせいで懲罰されると知っていて、机の向こうの男は即座に「1500出してもいい。」と言った。
これこそ、まさに、アメリカや他の場所で、双頭一党制度の機能の仕方なのだ。一つの帝国主義の少数独裁階級が所有する一つの党は、スタインベックの真珠買い取り業者と全く同様「多少、競争していると見せ掛ける」ため、二つの別の事務所に置かれている。スタインベックの真珠買い取り業者と全く同様、可能な限りの最安価格を受け入れるよう人々をだますため協力しており、彼らの場合、帝国主義の少数独裁政治の現状から、事実上いかなる変化もしないことを受け入れさせるのだ。
誰が大統領であろうと、この泥棒政治の力学が働いている。例えば、双頭一党制度が、アメリカ人に、彼らの真珠を、バラク・オバマに売るよう説得した際、連中の支払いは、欺瞞的な「手の届く医療保険法」というレッテルを貼った、大企業による医療詐欺と、環境危機という酷い胸部創傷に対する一時的応急処置と、ブッシュの最も下劣な全ての対外、国内政策の継続と拡大だった。
そこで、キーノは腹を立て、二度とだまされないと強く決意し、共和党に真珠を売った。今度は、彼への支払いは、金持ちの減税や、壁に関する饒舌や、オバマの最も下劣な全ての海外、国内政策の継続と拡大で構成されていた。
最高行政機関であれ議会であれ、このパターンは何度も何度も繰り返され続けているが、人は決して教訓を学ばない。実際は、彼らは、同じボクサーの左握りこぶしと右握りこぶしのようなものなのに、人々は二大政党が競合していると考えるよう洗脳されている。正統派のボクサーは、左ジャブと、右のクロスを併用して、ワンツーパンチの組み合わせで、同じ狙いの達成、つまり対戦相手がアリーナの天上灯をじっと見上げ、人生の決断を再考する状態にするために使うのだ。しかも、この場合、ボクサーの対戦相手は読者だ。
2000年のアル・ゴアに対するジョージ・W・ブッシュのエセ勝利の責任は彼にあると、いまだに誤って中傷されているラルフ・ネーダーが、アメリカに必要なのは良い第三党だと父親に言った逸話を時折語ることがある。
「私は次善の策で我慢する」と父親は答えた。
これこそ我々全員が持つべき明快な洞察だ。我々は両手の人形劇に騙されて、見ているものが別個の二つの競合組織だと間違える必要はない。我々は常に裏で糸を引く人形師を見て、気付いている必要がある。
「競争のうわべ」は無視し、真珠買い取り業者が実際何をしているか気をつけよう。
連中の言葉は無視しよう。
連中が決して成果をあげないと知っている弾劾策や、連中が全くばかげたことだと知っているロシア陰謀に関する芝居プロレス戦は無視しよう。
そうではなく、連中の実際の行動を見よう。
錯覚にだまされてはいけない。
両手人形劇の芝居に、はまっていはいけない。
だまされてはいけない、キーノ。
自分の真珠を売ってはいけない。
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同様な主題の翻訳記事には、下記がある。
2014年の翻訳記事 ロン・ポール: アメリカの選挙は1党独占制
2007年の翻訳記事 アメリカ:一党独裁国家
ちなみに何度読んでも感心する下記記事翻訳、Yahoo検索で、しっかり隠蔽されているのを確認した。Yahoo検索で、同記事をコピーしている、いくつかのサイトは表示されるが、当ブログのこの記事、表示されない。立派な隠蔽エンジン。国営放送局、Yahooと幇間民放と提携番組を放送するという。類は友を呼ぶ。
2007年8月 簡単な10のステップで実現できるファシスト・アメリカ(日本?)
最高の隠蔽エンジンということでは、「アメリカ・シェール・エネルギーに関するロシアの指摘は正しいのか?」も同様。題名で、検索すると、同記事をコピーしている、いくつかのサイトは表示されるが、当ブログのこの記事は、表示されない。今の、ロシア、サウジアラビア、アメリカの石油価格戦争理解のヒントになる情報は隠すのだろうか?
この記事内容と似たようなことが、起きているのでは?野党のように見えて、いざとなると与党のようになることが。
五十嵐仁の転成仁語 3月10日(火)
一部、引用させていただこう。「殺人犯にピストル」は至言。
そして今度は、ドサクサに紛れて「緊急事態宣言」を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正を行おうとしています。「特効薬」の代わりに「毒薬」を調合する愚策で、「殺人犯にピストル」を持たせるようなものだと言わなければなりません。
植草一秀の『知られざる真実』
さすがに、党内にも、異論というより、正論はあるようだ。インタビューを拝聴しよう。
日刊IWJガイド「『緊急事態宣言』含む特措法改正案13日成立か!/午後6時から反対する研究者記者会見再配信! 13日山尾しおり議員に岩上安身緊急インタビュー!」2020.3.12日号~No.2737号
そして、そもそも。
LITERA
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