オバマ大統領の都合上による期限のおかげで、怪しくなったTPP
ジェーン・ケルシー:
2015年2月6日 金曜 午後3:20
ニュージーランド・ヘラルド
連携協定交渉を巡る秘密性は、基本的な民主的価値観に対する攻撃と見なされている。
任期中に何とかTPP協定を締結させようとしているアメリカのバラク・オバマ大統領。写真 / AP
異論の多い環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は時間切れになりつつある。先週、ニューヨークでの交渉官達は、担当相達が、3月に決定する為の未解決課題のリストをまとめあげるよう、極めて強力な圧力を受けていた。
アメリカ合州国には、深刻な最終期限があるのだ。TPPを、バラク・オバマ大統領の業績の一部とするには、今後三カ月間の内にまとまる必要がある。国際貿易委員会による文章と費用対効果の分析は、8月頃迄に議会に提出されなければならない。この機会を逃してしまえば、オバマ大統領は、自分の後継者が協定に対する称賛を得ると分かれば、政治的資源を、これを押し通す為に費やす興味を失う可能性が高い。
参加諸国がこれを実現できるか否かは、政治的な問題だ。技術的作業はほぼ終わっている。政治的大詰めにとっての、一つの主要な障害は、最近の二つの進展で明らかになった、中核的な民主的原理に関する主張だ。
第一に、政治家達は、いまだに、これほどの規模の協定を、秘密にしたまま、署名してすませられると思い込んでいるように見える。ニュージーランドのグローサ貿易大臣ーと同僚連中は、公的、民主的な精査の下で、このような協定を交渉することは不可能だと主張している。
一方、欧州委員会は、これに類似するアメリカとの環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)交渉で提出した一連の法律文書を公開した。1月早々、欧州委員会は、交渉がまとまった際には、署名と批准よりずっと前に、全文を公表すると発表した。
欧州委員会は、欧州連合のオンブズマン、エミリー・オライリーの、TTIPを巡る秘密性に関する調査への手厳しい批判に応えたのだ。TTIPには、国民生活に対する潜在的に重大な影響があるので、主要文書は公開されなければならないと、彼女は主張したのだ。こうした文書の公開に対するアメリカの抵抗は、内容をヨーロッパの各国国民に対して隠しておく理由として不十分なのだ。同じ理由付けは、TPPにもあてはまる。
圧力は高まりつつある。エリザベス・ウォーレン上院議員は、ウオール街の再規制に影響する可能性がある草稿文書の公表を要求しており、バーニー・サンダース上院議員は、適切な分析と助言を可能にする、公開を要求する法案を提出すると威嚇している。
一週間前、日本の弁護士達が、国会の最高の立法権限を侵害し、権力の分立を脅かし、人権を侵害するものとして、TPP交渉差止・違憲訴訟の会を立ち上げた。
3月中旬の閣僚会談での最終的な決断前に、各章の草稿公表という要求が再度起きる可能性と、いくつかの国々での、署名される前に論議することを可能にすべく文章の公開を強いる法的な動きがありそうなことだ。
もう一つの問題は、恐喝も同然の、アメリカの承認過程だ。
日本が反抗的だなどと言う言辞はどうでも良い。アメリカとて同様に保護主義なのだ。両者は、いちかばちかの勝負をしているのだ。オバマ大統領の協定を早くまとめたいという姿勢が日本を有利にしている。しかし日本も、アメリカ議会が他のTPP参加国政府に、一方的に、自らの意思を押しつけようとしているのを知っている。最終合意は、議会が満足する迄、決して最終のものとならないのだ。
下院の票数を計算すれば、オバマ大統領が、少なくとも、他の参加諸国に、協定をちゃらにはしないと保証した際に議会が最終合意をばらばらにする力を限定するファースト・トラック交渉権限を得られる可能性はまずない。
日本に差し迫っている最大の脅威は、日本が義務を満たしているかアメリカが承認するという条件だ。
アメリカの輸出を競争できないようにしてしまうと、彼らが主張する通貨操作を罰するのに、TPPを利用しようという熱意が、議会で高まっていることだ。こうした規則は、壊滅的経済制裁と伴に、アベノミクスの貨幣政策の矢に終止符を打つことになる一連の難題を解き放ちかねない。
交渉で、この問題はまだ持ち出されていない。日本は、大詰めの承認時に、アメリカがこの通貨というカードを切ってくる可能性が高いことを知っている。
承認に関する最近の話で、ニュージーランドも日本同様に神経質になるはずだ。オーストラリアは、2004年に、アメリカとの自由貿易協定を実施する法律を成立させた。アメリカは、それでは十分ではないと言い、協定で要求された以上に著作権法を厳しくする更なる法律を要求した。そうしなければ、アメリカは協定を発効させようとしなかったのだ。
オーストラリア議会特別委員会は検討の為に24時間与えられ、提案を聞き、新法案に関して報告をするのだ。
議会図書館の法律ダイジェストは、"議会は、この法案に先行した過程を、懸念を持って注目しており、"アメリカとオーストラリアの閣僚間の通信は"事実上、オーストラリアにとって、新たな義務を作り出したと述べた"と示唆している。
基本的な民主的価値観や過程に対するこうした攻撃に、対処するのか、対処するのであれば、どのように対処するのかが、医薬品価格や、外国投資家が政府を訴える権力、プライバシーや、きちんとした暮らし等に対する重大な懸念が、TPPの政治的大詰めとして、極めて重要であることが明らかになるだろう。
ジェーン・ケルシー氏は、オークランド大学法学教授。
記事原文url:http://www.nzherald.co.nz/nz/news/article.cfm?c_id=1&objectid=11397305
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昨日は、宗主国による理不尽な戦争犯罪で10万人以上がなくなった日から、70周年。
今日は、宗主国から、この地震の巣の国に、まんまと押しつけられた理不尽な核発電システムのおかげで、未曾有の大惨事がおきた日から、4周年。
大本営広報部の見出しは、東日本大震災4年。東日本大震災・東京電力福島第一原発大災害4年と言わないのはなぜなのだろう。長過ぎて発音しずらいからだろうか。
22万人の方が避難生活を強いられているという。うち、12万人は、東京電力福島第一原発大災害によるもの。単純に人数からしても、東京電力福島第一原発大災害が先になって自然だろう。不思議な国、不思議な大本営広報部。
大本営広報部の皆様は、中学生殺人や、洲本殺人は延々報じてくださるが、至極普通の、平和で安全な生活を求めて、辺野古基地反対の行動しておられる方々に対する海猿の皆様の大胆な弾圧行動は全く報じない。
どちらが、より深刻で、重大かという総合的な視野、この国で楽しく生きる為には、決してあってはならない。
そういう大本営広報だけ読んでいれば、頭は豆腐以下になるだろう。毎回書いているが、幼なじみと、決して酒を飲まないのは、話しても時間の無駄だから。幸か不幸か、幼なじみ諸氏、決して小生のブログを読む気遣い皆無ゆえ、毎回安心して、けなしているが、客観的に見れば、小生こそ、事実上、村八分されている状態だろう。
文中にある、TPP交渉差止・違憲訴訟の会立ち上げの会合で、講演された内容のエッセンス。会合に参加された方には、既知の情報のみ。既知ではない方が万一おられたら、是非、TPP交渉差止・違憲訴訟の会にご参加いただきたいと思う。記事を読んでいるだけでは、世界は永久に変わらないだろう。
通貨操作問題については、下記の内田聖子氏の詳細な記事をお読み願いたい。
米国議会で議論噴出のTPPと「為替操作禁止条項」 ―なぜ日本のマスメディアでは報じられないのか
協定で、散々、ありとあらゆる項目で降参しても、まだまだたりない、というのが宗主国のいつもの手口という部分については、TPP交渉差止・違憲訴訟の会で活躍しておられるご本人が、街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋で、詳細に書いておられる。
岩波の『世界』4月号には、大本営広報部が明るく描き出す話題と違う現実が見えてくる。
- 東日本大震災・東電福島第一原発事故──隘路に入った復興からの第三の道
山下祐介 (首都大学東京)
- 一塁ベースを踏まなかった原子力規制委員会──川内原発審査における初歩的で重大な誤り 石橋克彦 (神戸大学名誉教授)
- 最終合意間近か?ゾンビ化するTPPの脅威 首藤信彦 (元衆議院議員)
- 官邸の妄執 農協「改革」 政治と市場の暴走を阻む“協同”が解体される
田代洋一 (大妻女子大学)
大本営広報部のお笑い番組や洗脳「ニュース」とは全く違う悲惨な地獄が、ぱっくり口をあけて、我々を待っている。
鳩山氏、世界をまたに、大活躍。素人は、気軽にクリミアに飛んでゆけるわけではない。そこで、オーランド・ファイジズ著『クリミア戦争 上・下』を読んでいる。
欧米がロシアを悪魔化しているところは、ロシアを悪魔化する偽文書が広まるところは、そっくりそのまま。
紛争の背後に、建前だろうが、歪んだ宗教的選民意識があるのも、そっくり。
安い本ではないが、ロシアと欧米の軋轢の歴史を知るには必読書だろう、と素人は思う。
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