NAFTAを再交渉し拡張する為にTPPを利用
2012年6月25日、月曜日
Dana Gabriel
既にアジア太平洋地域における通商と経済的な繋がりを深化させる交渉に参加している他の国々と共に、カナダとメキシコも加わる様、アメリカから招かれた。このような交渉は、規模においても、範囲においても、NAFTAをしのぐものだ。秘密主義的性格を批判されてきた、アメリカが率いる交渉は、加盟諸国との既存の通商協定の様々な点を更新するのに利用されかねない。これは、公式に再開すること無しに、裏口からNAFTA再交渉を開始する絶好の機会となろう。
2011年11月に参加通商交渉への関心を表明した後、NAFTA加盟諸国は、アメリカが後押しし、オーストリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポールとベトナムも加わっている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加するよう招かれた。アメリカ通商代表ロン・カークは、TPP集団へのメキシコとカナダ両国の参加を歓迎した。彼はこう述べた。“メキシコは、アメリカ合州国に対し、北米自由貿易協定(NAFTA)では対象ではない課題も含む高度な水準の協定を締結する用意があることを保証した”。彼は更につけ加えた。“カナダをTPP交渉参加するよう招くことは、アメリカ合州国にとって、この既にダイナミックな通商関係を生かす、またとない機会だ。TPPによって、最大の貿易相手国との関係を21世紀へと移行するのだ”。アメリカとカナダの共同声明はこう認めている。“TPPは、NAFTAへの参加に積み上げて、より高い水準の協定を締結する好機だ。”
NAFTAや、同じ欠陥のある定型書式に則った他の通商交渉に強く反対し続けている団体、カウンシル・オブ・カナディアンズは、カナダのTPP加盟に強く反対している。この団体の全国議長モード・バーロウは、これは“全て正規の議会の手順を経ること無しに、医薬品政策、著作権政策、環境や保健法規の変更をカナダに強いかねない”と警告している。この団体は“TPP交渉は、アメリカがTPP加盟諸国に対して相当強い要求をしている、多国籍薬品企業が利益を増やせるようにする為、極めて重要な薬の入手を損なってしまう知的財産権を含め、多数の分野で、前もって譲歩することになりかねない”と警告している。“非輸出部門の農民に公正な賃金と安定価格を保証するサプライチェーン・マネジメントは、カナダが交渉の場で犠牲にすることができない程貴重なものだ”と彼等は強調している。それは国産品購入プログラムとしても、カナダの食料安全保障と食の主権としても重要だと指摘する人々もいる。カウンシル・オブ・カナディアンズは“TPPというのは概して、NAFTAの再交渉だが、アメリカのオバマ大統領が決めた条件での交渉なのだ”と主張している。
カナダ大企業を代理して対政府ロビー活動する団体カナダ経営者評議会CCCEが、カナダがTPP交渉に参加するよう招かれたという発表を歓迎したのは驚くべきことではない。会頭兼CEOのジョン・マンリーはこう述べている。“TPPに加入することで、連邦政府は、アジア太平洋地域で、カナダの長期的な戦略的利益の確保に向かって、歴史的跳躍をした。”全米商工会議所も、カナダとメキシコのTPP加盟を称賛した。全米商工会議所会頭兼CEOのトーマス・ドナヒューはこう主張している。“共にTPP交渉をするというのは、北米にとって素晴らしい戦略的決断だ” 1月、アメリカ評議会COAは“潜在的に極めて重要なものとなる可能性がある太平洋地域の国々との通商協定に、我々のNAFTAパートナー無しに入ることは、アメリカ合衆国にとってほとんど意味がない”と述べた。彼等はTPPを“北米内の我々の二国間、三国間通商関係を、21世紀の自由貿易協定の高い水準のものに更新するのを支援する有望な手段”と見なしている。
「TPP交渉への招待は、NAFTA 2.0へ至る道か?」と題する論文中で、カナダの主要な国際通商戦略専門家の一人ピーター・クラークはこう結論している。“上首尾のTPPというものは、実質的に、そうとは見せずにNAFTAを再開し、実際再開されてしまうようにするものだ” 彼は更にこう述べている。“TPPがカナダとメキシコを招待することへの強力な支持者であるNAFTA加盟の三カ国全てのを財界首脳達は、ほぼ20年たって、NAFTAの近代化が必要だということ理解したのだ。原産地規則、サプライチェーン・マネジメントや生産統合等で。”クラークはこう強調した。“カナダ国民は明確に理解しておく必要がある。TPPというのは、NAFTA 2.0交渉であり、加米通商関係に重大な影響を及ぼす可能性がある。”また両国は「ビヨンド・ザ・ボーダー(国境を越えた)」国境保障構想と、NAFTA以来、米加協力上で最も重要な一歩前進と言われている国際競争力強化アクションプランを実施している。ハドソン研究所のクリストファー・サンズは“TPP交渉計画は、カナダとアメリカ合州国が追求している二国間目標と同じものであると同時に、更に野心的な多国間のものである”と見ている。
5月にTPPの第12回目の交渉が行われ、次回交渉は、カリフォルニア州、サンディエゴで、7月2日-10日に開催される予定だ。これまでのところ、透明性は実に欠如しているが、明らかなことは、TPPが他の通商協定の先を狙っていることだ。パブリック・シチズンによって漏洩された文章によれば、NAFTAにあった大企業に更なる権力を与え、加盟諸国の主権を一層脅かす投資家の特権を、更に拡張するようになっている。一方アメリカは、増大しつつある中国の影響力に対抗する手段として、TPP交渉の陣頭指揮状態にある。他の国々にも加入する門戸は解放されており、それが、この協定が、アジア太平洋での、より大きな自由貿易圏へのの足掛かり、国際的な大企業によるグローバル化策の重要な一環と見なされている理由だ。
NAFTAや現在のTPP等の通商協定は、多国籍企業の新たな一連の権利を、こっそりと通し、国家を条約の蜘蛛の巣の中に閉じ込め、各国の法律を更にやっつけるのに利用されているのだ。こうした協定、大抵は繁栄の約束を果たし損ねがちで、経済的奴隷状態への道を加速するのに役立つに過ぎない。グローバリゼーションとは自給自足と主権を犠牲にした外国への従属を意味し、それは確実に世界政府への道筋だ。
Dana Gabrielによる関連記事(全て英語)
Canada and Mexico to Join U.S. in NAFTA of the Pacific
Building Blocks Towards an Asia-Pacific Union
NAFTA Partners Take Steps to Boost Trilateral Relationship
U.S. Economic、Political and Military Expansion in Asia-Pacific
Dana Gabrielは活動家、独立研究者。貿易、グローバリゼーション、主権、安全保障等について書いている。連絡先: [email protected]. 彼のブログはBe Your Own Leader
リンクは原文通りゆえ、リンク先は全て英語原文。
記事原文のurl:beyourownleader.blogspot.ca/2012/06/using-tpp-to-renegotiate-and-expand.html
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テレビは、もっぱら震災二周年関連番組。
NAFTAのカナダ、メキシコ、TPP参加にあたって、屈辱的密約を結ばされていたことを東京新聞が暴露した。屈辱的なNAFTAから、更に屈辱的なTPPに昇格。
NAFTA改訂と同じ効果。強大な国家の隣人は大変だろう。引っ越し不可能。遥か対岸で、ずっと属国のまま、環太平洋と訳される、太平洋横断植民地条約に入る国もある。
国会質問を見る度に、根拠なく、TPP加盟をあおる「やつらの党」に、一体誰が投票しているのだろうと不思議に思う。「宗主国にとっての非関税障壁」が取り除かれた後の殺伐たる社会にどう責任をとるつもりなのだろう。
「国家を条約の蜘蛛の巣の中に閉じ込め」という表現、大本営広報による洗脳から抜け出る為の必読書本当は憲法より大事な「日米地位協定入門」を思い出す。
様々な密約で、この属国政府、蜘蛛の巣の中に閉じ込められている様を詳細に解説してくれている。TPPの危険性についても明確に書かれている。
記事の日付は、2012年6月25日、かなり前。ここでも、あのパブリック・シチズンによる漏洩文書への言及がある。パブリック・シチズンのワラックさん、「天木直人のブログ」で最近ビデオが紹介された方。以前から、TPP問題に取り組んでおられ、何度か来日、講演もされている。
「TPPに反対する人々の運動」に、文中で触れられている漏洩文書の「パブリック・シチズンによる分析」の翻訳文章がある。
TPP投資条項に関するリーク文書を米国パブリックシチズンが分析!(その1)
以下は、これまで翻訳した記事の例。
- TPPは貿易協定の衣を着た企業による世界支配の道具 デモクラシー・ナウ!書き起こし (今月始め、「天木直人のブログ」で映像が紹介された番組)
- 一般教書、TPP、TAFTA -- WTF?ワラックさんによる最新記事翻訳
- TPPは日本国憲法違反 第44回 TPPを慎重に考える会 勉強会 ISD条項問題の深刻さがわかります。
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