米国防長官、新たな地位協定を成立させるべくイラク訪問
wsws.org
James Cogan
2011年7月14日
オバマ政権で、最近就任したレオン・パネッタ国防長官は、月曜日、予告なしでイラクに飛び、アメリカ軍によるイラク占領継続を認める正式な条約をまとめるよう、イラク政府に圧力をかけた。
元CIA長官のパネッタは、ヌリ・アル-マリキ首相、ジャラル・タレバニ大統領、クルド自治区のマスード・バルザニ大統領と会談した。論じられた主題は、ブッシュ政権とマリキ政権間で、2008年末に調印した、駐留米軍の地位に関する協定(SOFA)が12月31日に満了する件だ。
SOFA満了5ヶ月前にもかかわらず、アメリカ軍のイラク駐留を合法化する新条約は結ばれていない。
先週木曜日、米統合参謀本部議長、マイケル・マレン海軍大将は、ワシントンで、ジャーナリストに、新たな条約をまとめる交渉が進んでいると自信満々で語った。土曜日、イラク議会指導者の会議後、タラバニは、二週間以内に、米軍駐留を2012年に延長する同意に達するだろうと発表した。しかしながら、マリキのマスコミ対策顧問は、即座にこれを軽んじる発言をした。会議は“党派的、宗派的立場”に偏っており、近い将来に、共通の立場に至る可能性は少ないと彼は不満をいった。
月曜日、イラク指導者達との会談後、パネッタ国防長官は、こう着状態を巡って、マリキ等に明らかに伝えたであろうフラストレーションを公然と発散した。バグダッドでの米兵の集会で彼は言った。“連中は我々の駐留を望んでいるだろうか? 連中は我々の駐留を望んでいないのだろうか? かまわん、決定しろ!”
オバマ政権には、今年末にアメリカ軍を撤退させる意図など皆無だ。8年以上にわたる軍事作戦と、戦争関連としての3兆ドルもの支出をしたワシントンは、2003年の違法な侵略の背後にあった目的を断固、実現するつもりなのだ。イラクの膨大なエネルギー資源を巡る支配と、中東の中心での、従順な傀儡国家の樹立だ。
約46,000人のアメリカ軍要員が、戦略上重要な北部のバラド空軍基地、南部のアリ、またはタリル空軍基地を含めイラク中の53の基地に駐留している。アメリカの飛行機は、西部のアンバル州にあるアル・アサド空軍基地の使用も継続している.
アメリカの当面の目標は、これら基地の長期的使用の確保と、10,000人から、30,000人の兵士による守備隊の維持だ。軍事力が、バグダッド中央の“グリーン・ゾーンを占拠する”アメリカ大使館の政治活動を補完するのだ。バチカンよりも広く、大使館には専用発電所があり、約5,500人の職員、海兵隊員、エリート特殊部隊、諜報機関工作員がいる。50機もの飛行機とヘリコプターが、厳重に防備された壁の内側に駐機している。
ジェームズ・ジェフリー米大使は、今月始め、2012年の大使館活動を維持するため、議会に62億ドル要求した。それに続けて、エネルギー埋蔵量を浮き彫りにして、アメリカにとってのイラクの重要性を強調した。ジャーナリストに、イラクは、劇的に石油生産を増大させるための“滑走路への進入路”に入った状態だと語った。彼は言った。“世界のどこのパイプラインにも、更に数百万バレルの [石油]の供給源はない。 ”
更にジェフリー大使は語った。“アゼリーのガスは充分ではなく、トルクメニスタンのガスは、遠い先のこと”なので、イラクは“ヨーロッパが、エネルギー源を多様化する上で、唯一の充分なガス供給源だ”。ジェフリー大使の発言は、西欧が益々ロシアの天然ガスに依存するようになりつつあることに対するアメリカの懸念を強調している。対リビア戦争も、同様な地政学的な配慮によって、推進されている。
今週、ヨーロッパの巨大多国籍企業ロイヤル・ダッチ・シェルは、南部イラクでのガス生産プロジェクト・ジョイント・ベンチャーに対する125億ドルの投資を発表した。
イラク・エリートのあらゆる部分が、こうした略奪的権益に、進んで仕えることは証明済みだ。 様々な形で、連中全員、石油産業から得られる寄生虫的生活と引き換えに、アメリカ侵略に順応しているのだ。イラクは、世界の中で、最も腐敗した4ヶ国の一つとされている。何十億ドルもの石油収入が毎年略奪され、失業と不完全雇用は、50パーセントにものぼり、貧困はこの国固有のものとなっている。
彼のダーワ党、クルド愛国同盟、ムクタダ・アル-サドルが率いる、シーア派原理主義のサドル運動の不安定な連立によるマリキ政権は、やはり新たな条約締結には神経質で、出来るだけ引き延ばしを計っている。
イラクのエリートは、大多数のイラク人がアメリカ軍駐留の継続に強く反対していることを痛感している。アメリカ占領は、イラクのインフラの大半を破壊し、イラク国民を分割し、支配するため、部族間、宗派間の対立を醸成した。100万人以上のイラク人が命を失い、数百万人以上の人々が負傷したり、心理的に痛手を負ったりしている。侵略後に起きた大規模な抵抗運動は、文字通り血の海で溺れさせられた。
生活水準や民主的な権利を巡る騒動が、拡大する兆しも見られる。一部、チュニジア、エジプト、イエメン、バーレーンやシリアで起きている大衆蜂起に鼓舞されているのが確実な、階級・社会紛争が現れ始めている。
2月の、クルド北部での民主的権利を要求する抗議デモは、専制的なクルド当局によって鎮圧された。南部油田の労働者は、5月に、相当な賃上げを獲得するまで、ストライキをすると脅していた。失業中の若者は、バスラとバグダッドで、抗議デモをした。
発言の中で、パネッタ国防長官もマレン海軍大将も、イランが、シーア派を基盤とする民兵にミサイルや他の武器を供給している、という昔からの非難を蘇生させるのに、米軍に対する攻撃急増を利用した。パネッタ国防長官がマリキとの会談の為に到着した頃、三発のミサイルがグリーン・ゾーンの中に撃ち込まれた。パネッタ国防長官は主張した。“イランと、彼らがイラクの過激派に提供している武器について、我々は非常に懸念している。我々は拱手傍観したまま、これが続くのを認めるわけにはゆかない... これは、正面から取り上げるべき問題だ。”
またもや、きっぱりと否定された、このテヘランに対する非難は、ワシントンとイラクの体制派の中で作り出される議論の主題として注ぎこまれている。イラクを支配しようというイランの企てなるものに対する抑止力として機能すべく、アメリカ軍は駐留を継続すべきなのだ。ミューレンは記者会見で、もしアメリカが撤退すれば、イラク治安部隊は“明白な能力ギャップ”に直面することになり、バグダッドは長年、米空軍と諜報組織の“助力が必要になる”。
パネッタ国防長官のマリキとの会談から24時間内の月曜日、ウオール・ストリート・ジャーナルは、イラク政府が、アメリカのF-16戦闘機を購入しないという年頭の決定を覆したと報じている。イラクは、18から36機の戦闘機を購入する方向で動いている、数十億ドルの商談は、“アメリカ軍撤退後、イランの影響力に反撃し、バグダッドとの長期的な絆を強化する”だろうと同紙は言う。商談には“部品、予備部品、訓練や、関連兵器”が含まれ、アメリカ軍駐留の継続が必要となる。
ウオール・ストリート・ジャーナルの論説は、水曜日、イラクに対する“イラン’の狙い”を封じる為、新たな地位協定の問題を、オバマ政権とマリキ政権が速やかに解決すによう要求した。
論説記事はこう主張している。“アメリカの継続的な軍事駐留は、安全保障のギャップを埋め、イラクと地域において、安定化への影響力となる。アメリカは、韓国と日本に、現地における戦争終了後、60年軍隊を駐留させており、イラクでの同様な駐留は有益だろう... イラクとの長期的な安全保障関係が、過去10年間に生み出された犠牲も、無駄にはならないことを保障するのに最適だ。”
ジャーナル紙の論説は、アメリカ支配層エリートの狙いを要約している。彼らは、イラクを、今後何十年も、事実上のアメリカ植民地にしておくつもりなのだ。
記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2011/jul2011/iraq-j14.shtml
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こういう国と、今回の地震・原発災害に対して、「トモダチ基金」とやらを作って、同盟を深化させるというニュースが報道されているので、眉に唾をつけて、聞いている。政府間であっても、あやしいが、まして、民間資金となれば、儲けほうだい。オトモダチの援助、決して被災者のためにならないことは、地震後のハイチを見ればわかるだろう。宗主国・属国同盟は、深化させるべきではなく、終了させるべきだろう。もしも独立国であるならば。
結論部分、そのまま、この国にあてはまるだろう。放射能に、オトモダチは全く役にたたない。厳しい予算から、寄生虫のように膨大な金を吸い上げるだけ。そもそも、オトモダチが大量殺人破壊兵器を編み出し、それを流用した装置を、買わせていただいたシステムが脆弱で、放射能垂れ流しになっているのだ。庶民には、なんのメリットもなかったが、子々孫々、放射能にはつきあわされる。さらにTTPも押しつけてくださるだろう。属国傀儡政治家、企業家は、どこでも、いつでも、自国民の苦しみを、自らの権益増大に活用する。
アメリカと日本のマスコミ論説は、アメリカ支配層エリートの狙いを要約している。彼らは、日本を、更に今後何十年も、事実上のアメリカ植民地にしておくつもりなのだ。
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