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2011年1月 6日 (木)

ミハイル・ホドルコフスキーの本当の罪

F. William Engdahl

2011年1月5日

元石油オリガルヒ(新興財閥)ミハイル・ホドルコフスキーに対するロシアの裁判の最終判決は、アメリカのオバマ政権や世界中の政府から、ロシアの司法は専制的で、劣っているとレッテル貼りする劇的な抗議声明を引きだした。しかしホドルコフスキーの記事から巧みに割愛されているのは、プーチンがロシア最大の巨大民間石油会社ユコスの元社長を逮捕し、投獄した本当の理由だ。ホドルコフスキーの本当の罪は、エリツィンの無法時代に、スズメの涙の金額を支払って、ロシアの資産を盗んだことではないのだ。

ミハイル・ホドルコフスキーの本当の罪は、彼が、機能している国家としてのロシアに残されたものを、分解・破壊しようという西欧による諜報作戦の重要部分であったことなのだ。事実がわかって見れば、彼に対して下された裁きは、国家反逆罪判決を受けた連中に対するアメリカ、あるいはイギリスの標準的な扱いと比べれば穏やかなものだ。グアンタナモにあるオバマの拷問監獄など、ワシントンの二重基準の一例に過ぎない。

Wikipediaの公正で、まずいところは削除した表現によれば、“ユコス石油会社はロシアの石油企業で、2003年まで、ロシア人のオリガルヒ、ミハイル・ホドルコフスキーによって支配されていた…ホドルコフスキーは有罪判決を受け、刑務所に入れられた…2000-2003年、ユコスは、最大かつ最も成功したロシア企業の一つだった。2003年、税金の再評価後、ロシア政府は、ユコスに、270億ドルにものぼる、一連の税支払いを要求した。同時に、ユコスの資産は政府によって凍結され、同社はこれらの要求された税金を支払うことができなかった。2006年8月1日、ロシアの裁判所はユコスの破産を宣言した。ユコスの大半の資産は、安い価格で、ロシア政府が所有する石油会社に売られた。欧州議会は、ユコスと同社所有者に対するロシアのキャンペーンを、政治的な理由ででっちあげたものであり、人権侵害だとして非難した。”1

ところが、少し掘り下げてみると、全く違う話が見えてくる。2003年10月、シベリアで自家用飛行機から降りたところを、ホドルコフスキーは逮捕された。Wikipediaが正しく記述している通り、彼は租税犯のかどで逮捕された。記事に書かれていないのは、無法なエリツィン時代、国有財産を詐欺的に入手し、彼が弱冠40歳にして約150億ドルの資産をもつ、ロシアで最も裕福な人物に成り上がったことだ。彼自身の銀行が行ったオークションで、ホドルコフスキーはユコスに3億900万ドル支払った。2003年、同じ会社が4500億ドルの価値があると評価されたが、それもホドルコフスキーの天才的経営手腕によるものではない。

1998年、ホドルコフスキーは、彼自身の銀行とニューヨーク銀行が、100億ドルの資金洗浄を援助したかどで告訴されていたアメリカの裁判で無罪になった。彼には、アメリカに有力な友人がいるように見えた。数ヶ月後に、モナコの自分のアパートで、当時のニューヨーク銀行頭取エドモンド・サフラは、麻薬売り上げ金ロンダリング話で彼が騙した“ロシア・マフィア”とされるもののメンバーによって殺害されたという。2

しかし、それ以上の事実がある。ホドルコフスキーは、西欧と、目ざましいつながりを色々と作り上げた。事実上、ロシア国民から盗んだ数十億ドルによって、彼は何人か有力な友人を得たのだ。彼は、アメリカの億万長者、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティーに習って、オープン・ロシア財団という名の財団を設立した。彼はその理事会に、二人の有力な欧米人を招聘した。ヘンリー・キッシンジャーと、ヤコブ・ロード・ロスチャイルドだ。そして、彼はワシントンでも最も有力ないくつかの集団とつながりを作り始め、秘密主義的な非公開投資会社、カーライル・グループの諮問委員会に任命され、ジョージ・H.W.ブッシュや、ジェームズ・ベーカーIIIといった諮問委員仲間と共に理事会に出席していた。3

しかしながら、ホドルコフスキーがロシア監獄入りとなった本当の罪は、アメリカに支援された、2004年に予定されていたロシア国会選挙で、ロシア大統領の座を手に入れるクーデターを実現する計画にかかわっていたという事実なのだ。ホドルコフスキーは、来る国会選挙で、地中の石油とその輸送パイプラインの所有権に関するロシアの法律を変更するのに十分な議席を買収するのに、彼の莫大な富を使おうとしていたのだ。更に彼は、直接プーチンに挑戦し、ロシア大統領になろうとしたのだ。プーチンが、裕福な、いわゆるロシア人オリガルヒから暗黙の支持を獲得した巧みな駆け引きの一部として、プーチンは、彼等が株をロシアに送還し、また、その財産を使って、ロシア国内政治に介入することはしない限りは、その富を保持することが許されるという合意を引きだした。大半のオリガルヒは合意し、当時は、ホドルコフスキーも合意した。彼等は確固としたロシア人実業家であり続けている。ホドルコフスキーはそうではなかった。

更に、逮捕された当時、ホドルコフスキーは、カーライルの友人で、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領の父親である、ジョージH.W. ブッシュ経由で、ユコスの40%を、コンディ・ライスが前に勤めていた企業、シェブロン、あるいはエクソン・モービルに譲渡するという交渉の最中だった。これは、ロシアに残された資産、石油とそれを国有のパイプライン経由で西欧に輸出し、ドルを得るという、破綻したロシア経済の再建に石油を利用しようとするプーチンにとって大打撃となるはずの方策だった。続いて起きたロシア国家によるユコス告訴の中で、ホドルコフスキーは、彼のオープン・ロシア財団経由で、ロシア文化を支援するだけでなく、ロンドンのロード・ロスチャイルドと、こっそり契約をしていたことも明らかになった。4  彼が万が一逮捕された際には(プーチンに対するクーデターを起こそうという非常にリスクの高いゲームをしていることを、ホドルコフスキーは確実に理解していた)彼のユコス株の40%がロード・ロスチャイルドの手に渡るというものだ。5

ホドルコフスキーの人権侵害に対する、ヒラリー・クリントンとバラク・オバマのそら涙は、認められてはいない、遥かに深い狙いを隠している。ワシントンはペンタゴンのFull Spectrum Dominance戦略、つまり地球全体の支配に、対抗する十分な軍事攻撃力を有する地球上に残された唯一の大国を完璧に破壊するという目標を達成するため、このロシア人を利用しようとしたのだ。その観点から見れば、うんざりする様な甘い言葉“人権”も、全く違った意味合いを帯びよう。

F. William Engdahlは、『Full Spectrum Dominance: Totalitarian Democracy in the New World Order』の著者

1 Wikipedia、Yukos、http://en.wikipedia.org/wiki/yucosでアクセス可能。

2 David Kohn、Murder In Monaco: An American On Trial Is Ted Maher Guilty Of Arson?、2003年2月4日、http://www.cbsnews.com/stories/2003/07/08/48hours/main562214.shtmlでアクセス可能。

3 Dateline D.C.、Soros and Khodorkovsky、TribLiveNews、2003年11月16日、http://www.pittsburghlive.com/x/pittsburghtrib/s_165315.html#でアクセス可能。

4 AFP、Arrested oil tycoon passed shares to banker、2003年11月2日、The Washington Times、http://www.washingtontimes.com/news/2003/nov/2/20031102-111400-3720r/?page=2でアクセス可能。

5 F. William Engdahl、Full Spectrum Dominance: Totalitarian Democracy in the New World Order、edition.engdahl、2009年、58-60ページ。

http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=22638

記事原文のurl:www.voltairenet.org/article168007.html#article168007

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同様趣旨の英語記事に、Mike Whitneyによるものがある。

Justice Has Prevailed. Khodorkovsky's trip to the slammer: "Booyah, Putin"

この記事、様々なwebで読めるが、多数の読者コメントも読めるInformation Clearing House記事のリンクを貼っておく。

国民、国家に、多大な損害を与えた犯罪者が、その罪を問われるのは当然のことだろう。日本の記事、当然、宗主国のマスコミ記事と同じ調子のものしか見あたらない。

宗主国の走狗として郵政破壊を推進した連中、ロシアだったら監獄にいるだろうか?

基地属国・傭兵体制を推進する二大政党政治家(豪腕政治家もその一人だろうと想像している)と、そこからの分離組、ロシアだったら監獄に入れられるだろうか?

ロシアのような司法があると、国会、ほとんどカラになってしまうのだろうか?

追記:2011/1/7に、トラックバック頂いた豪腕政治家のビデオ、リンクを公開したので、おことわりしておく。

二大政党化を推進する小選挙区制度と、国民に塗炭の苦しみを味あわせる政治家達を税金で支援する理不尽な制度、政党助成金を導入した豪腕政治家には、小生全く期待していない。既にそれだけで大罪だろう。彼についての記事、読む気力がおこらない。姦+戦国対豪腕対決なる話題、某通信社代表をめぐる女性タレント同士の鞘当てと同じレベルにしか思われない。

訪米中の政経塾害有外務大臣や、わけのわからない年頭所感を述べる首相同様、ホドルコフスキーの類の「豪腕」人物ではないかと想像している。関連する同類項の記事として、リンクを公開させて頂くものであって、リンク先の内容を支持するという趣旨は全くないので、念の為。

現在の袋小路政治状況をもたらした政治家を褒めたたえる精神構造から、自立した日本が実現することは永遠にあるまい。そういう国なのだろう。

幸か不幸か、子供は親を選べない。(これは決して、不幸だったとは思っていない。心から、有り難いことだと思っている)そして、幸か不幸か、国民は、自治体や国を選べない。(これは心から、大いに不幸だと思っている。)

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