■ ラウンド16の相手はベルギー1勝1敗1分けで勝ち点「4」を獲得してGL突破を果たした西野JAPANは決勝Tの1回戦でベルギーと対戦した。ベルギーのFIFAランキングは3位。1位のドイツ、2位のブラジルに次いで3番目となる。GLは3連勝。3戦目はイングランドと対戦したがMFヤヌザイが決勝ゴールを決めて1対0で勝利した。日本とベルギーがW杯の舞台で対戦するのは2002年の日韓W杯のGLの初戦以来。このときは2対2のドローだった。
日本は「4-2-3-1」。GK川島(メス)。DF酒井宏(マルセイユ)、DF吉田(サウサンプトン)、DF昌子(鹿島)、DF長友(ガラタサライ)。MF長谷部(フランクフルト)、MF柴崎岳(ヘタフェ)、MF原口(デュッセルドルフ)、MF香川(ドルトムント)、MF乾(エイバル)。FW大迫(ケルン)。3戦目のポーランド戦はメンバーを大きく入れ替えて戦って0対1で敗れたが初戦のコロンビア戦ならびに2戦目のセネガル戦のメンバーに戻してきた。
ベンチスタートになったのはGK東口(G大阪)、GK中村航(柏)、DF酒井高(ハンブルガーSV)、DF槙野(浦和)、DF植田直(鹿島)、DF遠藤航(浦和)、MF山口蛍(C大阪)、MF大島僚(川崎F)、MF本田圭(パチューカ)、MF宇佐美(デュッセルドルフ)、FW岡崎慎(レスター)、FW武藤嘉(マインツ)の12名。3戦目のポーランド戦ではDF酒井高、DF槙野、MF山口蛍、MF宇佐美、FW岡崎慎、FW武藤嘉がスタメンでプレーした。
■ まさかの大逆転負け・・・。試合の序盤はほぼ互角の攻防が繰り広げられたが前半15分あたりを過ぎるとベルギーがボールを保持して攻め込む機会が多くなる。日本は守る時間が長くなって厳しい展開になったが何とか0対0で折り返した。迎えた後半3分にMF乾のボール奪取からカウンター。MF柴崎岳の絶妙なスルーパスを受けたMF原口がキーパーと1対1に近い決定機を迎えると落ち着いて決めて劣勢だった日本が先制に成功する。
さらに後半7分にはMF香川のパスを受けたMF乾がやや距離のある所から放ったシュートが決まって大きな追加点を奪った。MF乾は今大会2ゴール目となった。初のベスト8に大きく前進した日本だったが後半25分にベルギーのCBのDFフェルトンゲンがヘディングで中央に折り返そうとした(と思われる)ボールがそのまま決まって1点差となる。滞空時間のあるボールだったのでGK川島に処理してほしいシーンだった。
さらに直後の後半29分にはMFエデン・アザールのクロスから途中出場した194センチのMFフェライニが豪快なヘディングシュートを決めてベルギーが2対2の同点に追いついた。さらに後半49分には日本のCKの場面でGKクルトワのキャッチからカウンター。最後はMFシャドリが決めて3対2とベルギーが逆転に成功する。死闘を制したベルギーがベスト8入り。準々決勝で優勝候補のブラジルと対戦することになった。
■ 「W杯は負け方が大事である。」一時は2対0とリードを奪ったのでベスト8入りを期待したがW杯ならびにベルギーは甘くなかった。後半の半ば以降に3連続失点して逆転負け。初のベスト8入りを逃したが日本の選手はよく戦った。MFエデン・アザールのシュートがポストに当たったり、FWルカクの決定的なシュートが枠を外れたり、サッカーの神様は日本に味方してくれているかに思えたが、ベルギーが底力を発揮して試合をひっくり返した。
もちろん、悔やまれるシーンはいくつかある。1失点のGK川島の対応はもちろんのこと、その直前でのMF乾の不十分なクリアやDFフェルトンゲンに対応していたDF酒井宏のちょっとした寄せの甘さなども悔やまれるところであるが、W杯の決勝Tという世界中が注目する場所で日本代表がこれだけの試合を披露できたことは本当に喜ばしい話である。結果にはつながらなかったが大きなインパクトを残すことが出来た。
言うまでもなく、W杯の優勝国以外はどこかの段階で敗退する。人気のサッカーライターの杉山茂樹さんは「W杯は負け方が大事である。」と常々コメントしているが、今回の日本代表の負け方はポイントが高い。勝利が大きく近づいた後の大逆転負けというのは極めて悔しい負け方になるがそれでも今回のベルギー戦は「すがすがしい負け方だった。」と言える。いつもの負けゲームと比べると不快感ははるかに小さい。
■ 大型キーパーを育てないと決勝Tでは勝てない。ベルギーと比較して日本の方が優っていた部分はたくさんある。W杯の決勝Tという最高の舞台で真剣勝負をしたからこそ分かったことはたくさんあるが、「ベルギーとの差」を感じる部分もたくさんあった。一番、大きな差を感じたのはキーパーである。結局、日本の3失点目はGKクルトワのキャッチからスタートしているがサイズがあってハイボールの処理が安定しているキーパーがいるとチームは落ち着く。
先のとおり、1失点目の対応はあまり良くなかったのでGK川島を批判する声はたくさん出てくると思うが、現在の日本サッカー界において彼がトップキーパーの1人であることは間違いない。GK川島だけをことさらクローズアップして彼を批判するのは健全な方法とは言えない。「GK川島とGKクルトワの差」と表現するのは適当ではない。「日本人キーパーとGKクルトワの差」という視点で話を進めないといけない。
ハリルホジッチ前監督は「現代サッカーのキーパーは190センチないとダメ」という話をしたが、やはり、大型キーパーをしっかりと育成していかないとW杯の決勝Tを勝ち上がるのは難しそうだ。199センチのGKクルトワであれば難なくキャッチできたと思われるボールを185センチのGK川島はパンチングで逃れようとする。幸いにして日本サッカー界も若い世代には大型キーパーが多い。彼らの台頭を期待したい。
■ 日本代表の選手たちを誇りに思う。「このまま延長戦に突入するのだろう。」という時間帯での失点だったのでMFシャドリのゴールが決まった瞬間は茫然としてしまったが今大会の西野JAPANの選手たちは「今の自分たちがやれることは全てやった。」と言えるので胸を張って日本に帰ってきてほしい。ロシアに旅立つときに見送りに来た人はごく少数だったが日本代表の選手たちがロシアから戻ってくるときは大勢の人が成田まで出迎えに行くだろう。
GL突破という結果も嬉しいことであるが、個人的に一番嬉しいのは4年前のブラジルW杯のときに大きな挫折を味わってそのときのことをずっと引きずったままでサッカー人生を歩んできた選手たちの苦労が報われた点である。「W杯の借りはW杯の舞台でしか返せない。」と言われるが、DF長友やMF香川やDF吉田などが4年前に味わった屈辱をバネにW杯の舞台で輝いてくれたことは何よりも嬉しいことである。
「どういう結果になろうとも、悔いの残る戦いだけはしてほしくない。」と思っていたので、試合後の選手たちが逆転負けの悔しさを抱えつつ、どことなく晴れやかだったのは非常にうれしく感じた。そして、ほっとした。ブラジルW杯で惨敗したことで日本サッカー界の時計は一時的に止まっていたが、再び、動き出した。前評判を覆して立派なサッカーを大舞台で披露してくれた日本代表の選手たちを誇りに思う。
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