■ ジャッジ基準を示す大会であるゼロックス毎年恒例のゼロックス・スーパーカップは3対2で鹿島が競り勝った。ACLなどを見据えてDF槙野やMF柏木やMF興梠など主力数名がベンチスタートあるいはベンチ外となった浦和に対して鹿島は「現時点でのベストメンバー」がピッチに登場した。ゼロックスに対する考え方の違いは考慮する必要があるが内容的には鹿島が相当に上回った。特に後半24分にMFレオ・シルバが退くまでは鹿島が押し込む時間帯が長かった。
スコアこそ僅差だったが「鹿島の完勝」と言っても差し支えない試合だったがゼロックスは「今シーズンのJリーグのジャッジ基準」を示すステージと言われている。審判団が重要視するポイントを分かりやすく示すために普段の試合とは違って(意図的に)極端なジャッジを行うのがスタンダード。この試合を任されたのは木村博之主審だったが経験豊富なレフェリーあるいは評価の高いレフェリーが選出されることになる。
レフェリーにとってゼロックスというのは極めて名誉なステージと言える。過去を振り返って見ると「空中戦の時に腕を使ったプレーを厳しく取り締まる。」、「スローインのときのファールスローを厳格に取り締まる。」などゼロックスで明確な基準が示されたケースがいくつかあるが、今シーズンに関しては極端な傾向は見られなかった。レフェリングに関しては昨シーズンと比べて大きな違いは無いと考えられる。
■ 話題になった前半29分のCKか?否か?の場面敢えて言うと「2枚目のイエローカードが出てもおかしくはない場面でカードが出なかったこと。」が目に付いたが昨今のJリーグはなかなか2枚目のイエローカードは出ないので違和感はない。後半27分の浦和のMF興梠が獲得したPKに関してはリプレーを見ると「接触プレーが無かった。」とは言いにくい。あれほどのスピードでエリア内に入ってきた後、何かしらの接触があるとレフェリーとしてはPKを宣告したくなる。
PKに関しては「どちらかというと妥当な判定だったのでは?」と考える人が多いのではないかと思うが、両チームの選手が集まってちょっとした騒動に発展した前半29分の「CKなのか?ゴールキックなのか?」の判定に関してはミスジャッジだったと思う。鹿島が波状攻撃を見せて最後はフリーのMF小笠原が真正面からコース隅にシュートを放ったがGK西川が懸命に手を伸ばして何とか外にはじき出したシーンである。
リプレーを見るとGK西川の手に当たってコースや軌道が変わっているように見える。「(ゴールキックではなくて)鹿島側にCKが与えられるのが妥当」と言えた。その後、何度かリプレーが流れたので推測になるがゴールキックという判定が下された後、GK西川は素早くリスタートをして浦和のカウンターのチャンスになりかけたのではないか?と考える。副審に詰め寄ったときのしぐさを見るとその可能性が高い。
■ 過剰なアピールや演技は観ていて不快逆に鹿島のFW金崎などは「手に当たっただろう。」という感じで苦笑いしながらGK西川に詰め寄ったが自分の手に当たったのか?否か?はGK西川が一番よく分かっているはず。少しでも微妙な要素があって審判団がやや判断に迷う時は自分たちにとって有利なジャッジが下されるようにアピールや演技をすることが大事な要素になるときもあるが、過剰なアピールや演技というのは観ていて気持ちのいいものではない。
海外リーグの試合と比べるとJリーグはかなりマシだと思うが、「明らかに審判団の下した判断が正しい。」と思われるケースでも激高して審判団に詰め寄る選手はいる。より具体的に言うと明らかに自分のファールと思われる場面にも関わらず相手のシミュレーションを主張する選手はいるし、明らかに最後に自分の身体(手や足)に当たっているにも関わらずマイボールをアピールする選手は少なくない。
もちろん、1つの判定が勝敗の行方を大きく左右することは珍しくない。「ずる賢さ」と直訳されることが多いマリーシアの一種と言えるが、本当の意味でのマリーシアは日本語で表現すると「したたかさ」が適当。「ずる賢さ」を意味するマリーシアがJリーグに浸透するのはあまりいい話ではない。『そのあたりのこともサッカー選手にとって必要とされる技術の1つである。』と意見する人もいるが賛同はできない。
今回のGK西川の件は悪質というわけではない。「過剰にゴールキックだとアピールした末に得たゴールキック」ではなかったと思うがその後に副審に詰め寄ったところを含めると気持ちのいいシーンではなかった。特に前半は何度も驚異的なセーブを見せて失点を防ぐなど好プレーを見せていただけに味噌がつくシーンになってしまった。日本を代表する選手であることを考えるとちょっと残念に感じるところである。
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