■ ピッチ外の勝負でもツエーゲン金沢が圧勝か?2016年シーズンのJ2・J3入替戦はJ2で21位になって入替戦に回ったツエーゲン金沢が2連勝。J3で2位になって入替戦に進んだ栃木SCを圧倒して何とか「J2残留」を果たした。言うまでもなく、J2⇔J3に関しては注目度を含めた環境面においてJ1⇔J2の差とは比べ物にならないほど大きな差がある。金沢も栃木SCも決して体力のあるクラブではないので「生きるか死ぬかの大勝負」になったが生き残ったのは金沢だった。
入替戦の初戦は1対0で金沢が勝利して、2戦目も2対0で金沢が勝利した。ピッチ上の戦いに関しては『誰がどう考えても金沢の圧勝だった。』と言えるが、ピッチ上の戦いのみならず、ピッチ外の戦いにおいても金沢が相手の栃木SCを大きく上回ったように感じる。単純にホーム戦の観客動員数を比較すると栃木SCのホーム戦(=1戦目)が5,369人だったのに対して金沢のホーム戦(=2戦目)では7,130人の観衆が集まった。
しかも、金沢のホーム戦が行われたのは隣県にある富山県総合運動公園陸上競技場だった。富山開催になったことは金沢にとって大きなマイナスになるかに思えたが、多くの金沢サポーターが富山まで足を運んでイレブンに声援を送った。正直なところ、「ガラガラのスタンドになるのでは?」と思っていたのでこれほど赤く染まるとは予想外だった。スタンドの光景を見て金沢の選手たちは相当に勇気付けられただろう。
もちろん、いくつかの条件の違いは考慮する必要がある。例えば入替戦の初戦が行われた11月27日(日)あたりの関東地方は非常に寒かった。当日も雨が降ったので「寒さ」と「雨」が客足を鈍らせたのは確かだと思う。また、入替戦の出場が決まってから(ホーム開催までに)1週間の準備期間しかなかった栃木SCに対して金沢は2週間の準備期間があった。その差も小さくないが栃木SCはホームの雰囲気を作れなかった。
■ 29節の長野戦(H)の敗戦のショックから立ち直ることが出来ないままで・・・。1年でのJ1復帰が至上命題だった栃木SCにとっては厳しい結果になったが29節の長野戦(H)の後半終了間際にMF夛田に決勝ゴールを決められて0対1で敗れた試合が痛すぎた。大分の結果次第でこの日のうちにJ2復帰が確定する可能性があったので(この試合に関しては)スタンドも盛り上がっていたが悲劇的な敗戦。引き分けでも首位をキープすることができたが敗れたことで最終節を2位で迎えることになった。
結局、長野戦(H)の失点&敗戦のショックから立ち直れないままで入替戦を戦うことになった。自動降格圏である22位でJ2の最終節を迎えたにもかかわらず、最終節で首位の札幌と引き分けたことで21位に浮上して辛うじて入替戦に進むことが出来た金沢に対して、栃木SCはかなりネガティブな気持ちで大勝負を迎えることになった。両チームの微妙な心理が勝敗の行方に大きく関係してくることは決して珍しくない。
29節の栃木SC vs 長野の試合で決勝ゴールを決めたMF夛田(長野)は2011年シーズンは大分でプレーしているので古巣である大分のJ2昇格とJ3優勝をアシストする形になった。その一方でJ2・J3入替戦の2戦目(@富山)で2ゴールを挙げて金沢を救うヒーローになったMF中美(金沢)は中学年代を栃木SCの下部組織で過ごした選手である。いろいろな選手のいろいろな思いが交錯した結果、金沢に勝利の女神がほほ笑んだ。
■ 決戦を楽しむことが出来ていたのは金沢2017年シーズンをJ2で戦うことが出来るのか?J3で戦うことになるのか?は大きな違いがあるが、ちょっとしたことが明暗を分けることになる。入替戦の2戦目を現地(@富山市)で観戦したときに気になったことの1つを挙げると金沢のサポーターは元気があって決戦を楽しんでいる雰囲気だったのに対して、栃木SCのサポーターは(少なくとも金沢のサポーターほどは)楽しんでいる様子は見られなかった。
補足すると前半はメインスタンドの金沢サポーターが多く陣取る席で試合を見守って、後半は席を移動してメインスタンドの栃木サポーターが多く陣取る席で試合を見守った。栃木SC側で試合を観戦するようになったのは前半にPKで失点して0対1でリードされている状況だったのでその違いはかなり大きいとは思うが、味方がいいプレーをしたときに大きな拍手が巻き起きたのは金沢側のみ。違いは歴然としていた。
もちろん、栃木SCの方がJリーグでの経験値ははるかに豊富なので「サポーター歴の平均値」を出してみると栃木SCのサポーターの方がはるかに長くなるのは確実である。「来シーズン、J3で戦うことになったときにクラブがどういうことになるのか?」を良く知っている人の割合も高くなるはず。この舞台を楽しめるくらいの心理状態になるのは難しいということは重々理解しているが、その差は予想以上に大きかった。
■ 来シーズンはサポーターの期待に応えたい。ストレートに言うと大事な入替戦のホーム戦が富山開催になったというのはクラブとしての大きな失態である。芝の問題があって改修工事を行わないといけない状況になるのは仕方がないが、シーズンの大半は下位に沈んでいたチームなので早い段階から入替戦に回る事態になることは十分に予想できたことである。「金沢市内で入替戦が行われていたら観に行ったのに・・・。」という人はたくさんいるはずである。
平均観客動員数はJ2でワースト4位。観客動員数の少なさが問題となるクラブが新規サポーターを獲得できる絶好のチャンスを逃してしまったことは痛すぎる。何とかしようとしても何ともならなかったことに関しては石川県内や金沢市内におけるツエーゲン金沢の(高くない)立ち位置を如実に示しているように思う。富山開催になったことに関しては「(現時点での)クラブ力の低さを露呈した。」と言われても仕方がない。
それでも富山開催が決まった後、関係者全てが死にもの狂いで頑張ったのだろう。普段と同じようなクオリティのスタジアムグルメを提供できた点、クラブとしての出血を覚悟した上でスタジアムまでのシャトルバス代を無料にした判断などは見事だった。すでに柳下監督の就任が確定しているが大きなサポートが必要な試合でこれだけ集まってくれたサポーターの期待に応えるシーズンにしなければいけない。
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